束の間
仕事の日取りを間違えて
1時間半、家に帰ってきた
昼間に家に居るなんて
いつぶりだかわからない
庭に届いた秋を眺めて
庭の土をこんなにゆっくり踏んだことも
ここ数年なかったなと
息を吸ってみる
常夏が終わったら
世界が終わるような気がしていたこの夏
世界はまだ終わっていないけど
もう終わったようなもので
絶望の雲に包まれている
いい人に出会っても
おいしいものを作っても
きれいな景色を見ても
からだを使って労働しても
僕の人生は苦しいまま
死んだように生きてるよ
と
毎日届くメッセージ
彼が言う死んだようにの主語は
果たして彼なんだろうか
生きづらさを感じてつぶやいたりうめいたりする彼彼女たちと接して
一人の個から発せられるものとは到底思えない
触れているだけで
耳にしたり目にしたりしているだけで
見えない大砲を打たれたように
ものすごい破壊力で
私の細胞を蝕んで殺していく
まともに受けると
もうなにもできないと鬱状態になる
それは、彼らが個々に持っている彼らだけの苦しみではない
地球の、世界の、と言うと急に漠然とするけれど
小さな虫や馬やキリン、犀や像や大木や海山、いのちあるものないものすべての苦しみを、その小さいからだで背負っている
それぐらいの叫びに聞こえる
このままだとお前も俺もほんとに滅びるよ
と
そういわれている気がして
そこにただ立ち尽くしている
ほんとうに束の間の、一瞬の幸せを
彼らと共有するためだけに生きている
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