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連作短編小説「あたたかなおうち」

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ひとり暮らしをしている「みみちゃん」が選んだアイテムたちの、とても短くて小さな物語を公開しています。
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#裁縫教室

いちりんざしさん

玄関右横にある洗面台のちょっとしたスペースに私はいる。 私のほかには歯ブラシさん、歯磨き粉さん、綿棒さん、ヘアオイルさん。 しゃこ、しゃこ、しゃこ。 みみちゃんが歯磨きをしながら洗面台にやって来た。 みみちゃんは「歯は臓器」だと言って、いつもお口のなかを丁寧にケアしている。 歯磨き、うがい、歯間ブラシ、またうがい。 みみちゃんの歯はみみちゃんの顔とお口のサイズにちょうどいい大きさで、白くて並びもきれい。 歯磨きタイムを終了して、みみちゃんは洗面台の

なべしきさん

ぼくはみみちゃんが作ったなべしき。 7色のアクリルの、もこもこ布で編んでくれた。 ぼくはなべしきだけど、ふだんは鍋は敷いていない。てつこさんが沸かしたお湯を入れた魔法瓶の底をあたためている。 みみちゃんは縫い物をしたりお料理をしたり、手作業するのが好きみたい。 ずっと以前はお料理教室に通っていたし、最近はときどき裁縫教室に通っている。 裁縫教室はおうちの近くにあって、そこの先生とは気が合うみたいだ。(お料理教室の先生のことは、そんなに好きじゃなかったみたい