成長を止めない恐竜
『心は既にブラキオサウルスを超えていた』
肉体は歳を取る毎に衰えるらしい。けれど、心は止まる事の無い成長と共に未だ膨張し続けているのを実感している。
その"心"の中でも、特に際立っているものの一つに【好奇心】がある。
二十歳までの僕は、何かに興味を持つという事の無い人間だった。
義務教育という名の砂漠の一本道の突き当たり、いくつもの選択肢で舗装された岐路の真ん中で……一歩たりとも動かなかった。
正確には、動けなかった。
その術を何一つ知らなかった。
病むフリが上手くなって、悩むフリを続けて生きていた。生きていただけ。
二十歳になって始めての夏、突然それは訪れた。
「知らないから動けないだけだ……。」
そんな簡単で単純で明快な事を、僕は二十歳の夏まで本当に知らずに気が付かずに居た。
それからは我武者羅だった。
興味の有無、選り好み、趣味嗜好、そういった個人の意思ではなく……兎に角、知らない事の全てを知る為に生きて動いて働いた。
日本全国を旅にして、派遣社員としてあらゆる職業を体験して、知れる事を知る為に命を削った。
それでも、当然ながら知らない事が無くなる訳ではない。
けれど、知れる事と知れない事をハッキリと"知る"という事自体がその後の自分の人生を大きく左右した。
そうして膨れ上がった好奇『心は既にブラキオサウルスを超えていた』
1億年分の知識……という訳では無い。
けれど、気持ち的にはとうに恐竜の大きさを抜き更に知る事を求めていた。
それは純粋な知識というモノから、出会った事の無い感情や目に見えないくらい小さな光源の星の名前に未体験の物事など……多岐に渡る好奇心。
あの日の岐路の真ん中で突っ立っていた僕を思う。
『知りたいから、を動機にすれば良いんだよ』
そう伝えてあげたい。
今でも知らない事は怖いし、知ろうとする瞬間は震える事もある。
けれど、それよりも……知る事は、本当に素敵な事で嬉しい事で楽しい事だ。
時には世界の色が変わるくらい大きなきっかけになったりする、それはもう何物にも代え難い事だ。
原動力を生み出す歯車の大きな部品の一つが好奇心。
僕は成長を止めない恐竜で、今日も理由を探している。
いつか寿命みたいな隕石が降り注いで、僕らが絶滅する事になる理由すらも知ってみたいから。
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