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六文銭の代わりにフレンチクルーラー

『天国も無い地獄も無いただの宙に浮く』

友人が死んだ。
普段の僕は"亡くなった"と記するタイプなのだけれど、今回に関しては個人的にどうにも"死んだ"と書かなければ納得もいかずしっくりもこないので、言葉が強くなってしまいますが敢えて"死んだ"と書かせてください。

特別な関係性ではないし、とてもとか物凄くという枕詞が付く程に仲が良かった……という訳では決してない間柄だった。
けれど、確実にお互いがお互いの事を【仲が良い】と思い合っていた事は疑わない。

その友人が、死んだ。

訃報を知らされた時。
どんな思い出の日々や表情等よりも、もう仲が良いと思い"合えない"事が僕はとても悲しいと感じた。

人が死ぬという事は"合えない"という事だ。

話し合えない、笑い合えない、許し合えない、触れ合えない、求め合えない……。

もう、会えないのだ。

生前『天国も無い地獄も無いただの宙に浮く』のが良いと言っていたあなたには、そちら側に渡る為の通行料は不要みたいなので。
僕からは好物だったフレンチクルーラーを六個あげる事にした。
これが死後の世界では多いのか少ないのかは、残念ながら死んだ事の無い僕には見当もつかないので取り敢えず六文銭と同じ数の六個にしておいた。

曇天模様の空が好きだと言っていたあなたのせいかは知らないけれど、あなたが死んでから妙に悪天候の日が増えた様におもう。

フレンチクルーラー、足りなかったら雨でも降らせて伝えて下さい。

嘘だよ、ばーか。

ちゃんと言葉で伝えて下さい。
ちゃんと声を聞かせて下さい。
ちゃんと目を見て話て下さい。

あなたは、それを好きだと言っていたし僕もまたそれが好きだと何度も何度も伝え合っていた筈で。

なんで最後に言葉も声も無く死んだんですか。
ばーか。

合えないのも会えないのも、本当に悲しい。
悲しいよ……ばーか、ばーか。

あなたに、そんな言葉を一度も言った事はありませんが、今の僕には言う資格があるでしょう。

だって、あなたはばかなんだから。

宙に浮いているあなたがフレンチクルーラーを喉に詰まらせて死んだら、転生なんかしちゃってなんとなくまた"合える"んじゃあないかなんて考えている僕も、余程ばかだ。

今日は晴れるって、だからあなたはいない。

曇天模様の日に、またココで……ココロで合いましょう。


ありがとう。

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