晴天に辟易
『憎らしい程の晴天を憎めないまま愛』
曇天を見上げる時、生きている気がした。
はっきりとしない空模様が、なんだか自分の人生そのものみたいに思えて好きだった。
雨が降ると、泣けない僕の代わりに涙を流してくれているみたいで心が落ち着いた。
微睡みの空気を纏う昼下がり、晴れ渡る空を見上げると……急に死にたくなる。
正しくは「死ぬのならこういう日が良いな」と思ってしまう。
街行く人達は縁日を楽しむ様に皆が笑顔で、ベンチに腰掛けた御老人が幸せそうにうたた寝を始めて、水鳥の親子が静かに水面を滑って視界を横切って、空と雲の濃淡の境目がぱっちり二重のあの子の目みたいに綺麗で……
死にたい等と思う事も馬鹿らしいくらい、その瞬間こそが天国なのではないかという優しい時間で流れて、少しだけ大袈裟に声も無く笑っては晴天に辟易する。
それでもその『憎らしい程の晴天を憎めないまま愛』するしかない。
どうしたって嫌いになれる訳も無くて。
そういう時、どうしようもなく泣いてみたくてまた笑う。
明日、曇天になぁれ。
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