新しいビットマップ_イメージ_-_コピー

借りてた漫画、返す。
それが桑野の連絡だった。
ただし六年振りのこと。

世の中は三連休らしく、
そのおこぼれに与ろうと金曜日に兵糧を買い込んだ。
チップスターにアルファベットチョコに揚げせんべい。
甘い幸せを口にすると塩気の鋭さが欲しくなる。

連休を行楽に費やす方に『外』を任せるとして、
専ら『中』の守りは任せて欲しい。
この三連休は古谷実の漫画を久しぶりに読み返し、
フフっとなりながらお菓子を摘まんで体重を増やす算段だ。
安心して欲しい、仮に古谷先生の漫画を消化し尽してもまだ志村貴子先生のがある。
前門の古谷実、後門の志村貴子。
包囲状況は万全である事この上ない。

桑野にいつ来るのかと聞いたが、
三連休のどこか、としか言いやがらない。
かまわねぇズラ、こちとら家の中で漫画を読みふける以外の予定も無い独り者ゆえ、

「じゃあ近くまで来たら連絡してよ」

とだけ返事をしてやりとりを終えた。
しかし土曜日、桑野からの連絡はない。

少しばかりの予想があったのだ。
幾らなんでも三連休の初日あたりに、

「何曜日の何時に行けるようになったわ」

的な連絡があってもいいんじゃないか、と。
もう俺達も社会で働き始めて随分と経つ。
日時に関する連絡は非常に大切だと思い知ってる筈だが。
そんな不満が脳裏に過ったが、

「まぁ別にいいか、漫画読んでるだけだし」

と思考を切り替えれたのは桑野が小学校からの友達であるせいだろう。

人間って生き物の男って輩達は不思議なもので、
古くから、それこそ子供の頃からの知り合いには随分と甘くなる。
アイツだからまあ良いか。そんな気持ちでトロットロ。
そもそも甘い態度を取れない相手は早々に縁を切っている。
それに、桑野はちょっと違うから。

土曜日の時間がゆっくりと流れ出した。
朝から昼になり、コンビニのおにぎりを喰らいながら漫画を読むが、
桑野からの連絡はまだこない。

昼が夕方になり、夜になってもまだ来ない。
もう流石に来ないだろうと思って漫画を読み続け、
風呂に入ったあとの眠気で布団に入ると土曜日は終わっていた。

日曜日である。
日曜も似たり寄ったりで漫画を読んで夕方になったが、
ちょっと心配になって来た。
桑野は本当に連絡を寄越すのだろうか。
そもそも、来るのだろうか。
いや、まだ日曜日は終わって無いし、まだ後詰には月曜日も控えてある、
その事は重々承知であるのだが。

桑野からのこない連絡をページをめくりながら待っていると昔を思い出した。
社会人になりたての頃、桑野は工場で働いていると言った。
誰かがどこの工場だと聞いたら、パナソニックだという。
へぇ、大手だなとまた別の奴が桑野の肩を叩くと、

「いや、ただのバイトだから」

と変わらない表情で桑野はカルーアミルクを飲み、
それを聞いた同席一同は「それもそうか」と思った。
その時の桑野はオリンピックに出る事が決まっていたのだ。

『かくれんぼ』が初めてオリンピック世界種目に認定された年、
金メダルを取ったのは日本代表だった。
桑野だ。まだ十九歳で、俺と同じ大学に通っていた。

次のオリンピックでも桑野は日本代表になる。
二十三歳になった桑野は正規雇用枠で就職していなかった。

桑野が大学の頃からバイトで入っていたパナソニックの工場が彼を優遇し、
「来たい時に来て働いたらいいよ」とシフトも組まず、
本当に桑野が来た時に彼に仕事を与え、
「もっと入れ」とも、「今日は別に仕事がないよ」とも言わず、
彼に仕事と給料を与え続けた。

「大体一月に十二日も働けば生きていける」

皆が社会人なりたての頃の酒の席でそう言った桑野は二個目も金メダルを取った。

返しに来ると言う件の漫画は丁度その頃に貸した物だ。
桑野が二個目の金メダルを取った祝いで古くからの友人達で集まった際、
桑野が最近なんか面白い漫画はあるかと聞いてきた。
確かコイツは漫画を読まない筈じゃあなかったか?
そう思いながらも当時単行本で買っていたの浅野いにおの漫画を話してやると、
「それ読んでみたい」とか珍しい事を言う桑野。
じゃあそれならば、と思って最初の一巻だけを貸してやったが、
まさか貸して六年も戻ってこないとは思うまいよ。
本棚には桑野に貸した一冊分だけ空間が出来ている。
まるでプロ野球の永久欠番のようだ。

永久欠番が本棚の一間を冷やしている年月、
その間にもう一回桑野はかくれんぼ日本代表になったのだが、
そこで三つ目の金メダルを取った。
流石桑野だ、凄いじゃないか。
きっと日本中の誰もがそう思っただろう。
しかし肝心の桑野には良く無い知らせ届く。

「今回の大会をもってかくれんぼのオリンピック参加は一旦終了とする」

との事だった。
桑野はその事を既に知っていたのだろうか。
三つ目の金メダルを取った際に「おめでとう!」とラインに連絡を送ったが、
うんともすんとも返事が返ってこない。
ただ既読が付いただけで、それ以降はなにも。
大会後に事故って指でも無くして字が打てなくなったかと思ったが、
まぁ記者会見とか催し物で忙しくて返事の暇もないのだろうと勝手に納得していた。
しかし今思えば、桑野の心中は複雑だったのだろう。

三連休の中日、日曜日もいよいよ夜になった。
マンガを両手に抱えながらスマホをチラと横見、
今日も桑野から連絡は来なかった、明日だなこりゃ、と思っていると、
九時を回ってほどほど、畳の上のスマホが震えた。
桑野だった。

「駅着いた」

ラインを見ると、その一行だけ。
文字数にして全四文字。

桑野、お前。
確かに嘘は吐いてないし約束の一つも破ってない。
桑野は漫画を三連休に返しに来ると言ったし、
俺は俺で近くまで来たら連絡してよと言った。

しかしな、桑野、知ってるか?
一日は朝昼晩と三分割されていて、
時間で言うならば二十四等分されている。何故だか判るか?
人間が人間たらしく生きていく為だ。
朝は起きて夜に寝る。
食べ物を食べるリズムも大体決まっているし、
誰かが誰かを訪問しに行く時間だって暗黙の了解みたいな時間帯があるんだよ。
それを判ってるのか?桑野、お前は。
そんな事を思いつつ、

「迎えに行く」

と返事を返して靴に足を突っ込んだ。
一人者だからまぁいいよ、とか、
古くからの友人だから仕方ねぇ、とか、
そういう事を思って返事をした訳じゃない。

桑野だから こう言う事もあるかな

と、そう思ったんだ。

「よぉ」
「おぉ」

生身では六年振りの会話だった。
連絡を貰うのも六年振りだが会話をするのも六年振りだ。

「ありがと、面白かった」

つい三日前に借りたこの本面白かったよ。
まるでそんな所作で鞄から取り出した漫画を桑野が差し出してくる。
おいおい嘘をつけ、その所作、嘘をつけ。俺達は六年振りに会う。

受け取って見ると、本自体は随分綺麗なナリをしている。
本を何度も読むと背表紙の裏、ページが重なっている部分に手垢が乗るものだが、
もしや一回も開いてないのではと思う程に綺麗な状態だったので、
思わず「これ本当に読んだ?」と聞こうとしたところ、

「これ、続きは?」

と喋っていたのは桑野だった。

「あるよ。これ一巻で、次の二巻で終わってるんだ。」
「なんだ、そうなの。もっと続くのかと思った」
「な。俺ももうちょっと続けばと思った。おい、飯は食ったのか?」
「ああ」
「そっか。まぁうち来いよ。
 六年振りに会うのにまさか漫画返して終わりじゃないだろ」
「えっ、そうだと思ってた」
「嘘だろお前」
「だってもう九時だろ」
「判ってんならどうしてこの時間に来たんだよ」

そう笑いながら言ってやった。
すると桑野はと言うとちょっと困った様な顔をして、
「いや、まぁ……」と尻切れトンボな返事をしただけ。
そのままお互い口から言葉が出てこないもので、
周りの駅から過ぎ去る人間の足音だけが俺達の横を流れて行った。

「まぁ、こいよ。あ、そう言えば終電は?」
「電車は大丈夫」
「どこから来たのそう言えば」
「ん……ちょっと」
「ちょっと?」
「でも、取りあえず電車は大丈夫だから。」

いいよいいよ、電車が終わろうが線路が夜逃げしようが最悪泊ってけ。
そう言ってやると桑野もホッとしたようで、
「うん」と返事をした後は俺の横に並んで歩き始めた。
駅から家までの距離は歩いて八分。

結婚したのか、彼女はいるの、という会話を皮切りに、
そう言えば家に行っても大丈夫?
そういう事はもっと前の段階で聞けよ。
ごめんごめん。
そんな言葉の応酬をしていたら家に着いた。

「おー、相変わらず漫画一杯あるね」
「こないだの引っ越しでさ」
「うん」
「漫画だけでダンボール九箱だったわ」
「やべえな」

本棚の永久欠番がようやく帰って来た。
六年振りの帰還だが本棚の同族達が賑わう事は無い。彼らは静かなのだ。

「こないだの見たよ、金メダル取ったやつ。リアルタイムでさ。」
「こっちは何時だった?」
「忘れたけど夜中だな。
 凄かったな、カメラが追いつかなくてよぉ、
 ピーって判定音だけ聞こえて一瞬何の音かと思ったけど、
 カメラに映らない所で勝負ついてんのな。
 それで判定員達で話し合ってる絵面が出てたけど、
 結局決勝の相手のスイスとドイツの選手が自分から負けたって言ってて」
「うん」

桑野は静けさを全身から放つと、
それから俺がどれだけ熱っぽく喋ろうがただ短く返事をするだけで、
それも「うん」か「ああ」だけしか言わない。
この話しをするのは嫌なのかな。
そう思ってこちらも話を少し引き下げざるをえなかった。

「ちょっと、近くに公園ある?」

と突然言い出したのは桑野。

「え?」
「公園、ある?」
「あるにはあるけど、行くか?」
「うん、ちょっと密室に居ると身体が疼いてしょうがないんだ」
「え?どういうこと?」
「取り敢えず出よう、後で話す」

靴に足を突っ込むとまだ靴の底に温さが残っていた。
ちょっと田舎なもので歩いて行ける場所に三つも公園がある。
一番近い所だと徒歩二分。部屋を出てすぐ見える。

桑野がブランコという一番音が出る腰かけ場所に座るもので、
俺も付き合って腰を下ろしてみるとひんやりと冷たい。
それもその筈、今は冬だ。室内の方が暖かかろうに、
俺達は今好き好んで外に居る。

「おい桑野さっき言ってたのさ」
「ああ」
「なに、身体が疼くって、かくれんぼしたくなるのか」
「そうだな」
「マジか」
「ちょっとヤバい位にな、したくなる」
「……それってあれか?
 外科医が暫く人間の身体捌いてないと腕が震えだすみたいな?」
「医者になった事がないから判んないけど、
 多分タバコを止めると手が震えだすみたいな感じに近いと思う。
 けどあれだな、俺もお前も煙草吸わないな。」
「そうなんだよ、見てくれこの健康体を」
「厚着した上からじゃ何もわかんねぇな」
「はは。
 で、なに、今お前どこ住んでんの本当」
「家?」
「家って言うか、お前が今日帰る場所だよ。」
「………家は滋賀。」
「滋賀    は?
 帰れんの?もう九時半ぐらいだけど」
「今日は家には帰らない」
「……お前が女だったら嬉しいセリフだけど、
 いや、え?どういう生活してんのお前、今」
「家は本当小さい奴でさ、家賃が一万八千」
「やすっ」
「そこになんか色々置いてる」
「置いてるって……」
「住所が無いと色々困る事もあるからさ」
「そりゃそうだろうけど……え?普段は?」
「あっちこっち飛び回ってる」
「え……それはかくれんぼの大会とかで?」
「いや、隠れる為に」
「……お前追われてんの?」
「いや、身体が勝手に。
 練習も兼ねてるんだけどさ。いや、練習なのかな。
 なんか起きてるとね、他人の目が気になって仕方ないんだ。
 それで色んな所、回り回って。
 秋葉原のドヤ街とか、横浜の中華街、新大久保の韓国人街。
 色んな所に紛れ込んで、そうしたらホッとすんの。」
「いや、お前……え、金とかは」
「一応何とかなってる」
「……何やって稼いでんの?」
「大会に出て優勝したりとか、あとはパナソニックの工場」
「まだあそこやってんの」
「たまにね。」
「えー……大丈夫?」
「なにが?」
「いや、色々と」
「新藤こそ大丈夫?」
「え?」

桑野がブランコに力を加えてキぃ、キィと音が夜に溶ける。
壁が薄いおうちにはその音が聞こえてるかもしれない。
すいません、うちの金メダリストが。
公園に来たいと言っていたもんで。

「だって月から金まで働いてんでしょ」
「そりゃ社会人ですから」
「俺から見たらそっちの方がたいへんそう」
「いやいやいや、皆やってる事だから」
「そうでしょ?」
「え?」
「新藤の言う社会人の皆はそれが普通なんでしょ。
 俺がいるこっちの世界の奴ら、俺がやりあってる相手はね、
 皆こうなの。こういう俺みたいな生活送ってんの。
 不思議な位に同じような狭い部屋借りてそこに色々置いとくだけで、
 身体は色んな所飛び回って隠れるように回り歩いてんだ。
 それに今度アンダーグラウンドの世界大会があってさ、
 だから試合の時の状態に常に心をシフトさせる。
 皆きっとそれに向けて殺気立ってるんだよね。
 下手したら誰か死ぬんじゃないかって噂が出る位」
「それやばくね?」
「だからアンダーグラウンドでやるの。
 出資の出どころもアレらしくてさ」
「やばいの?」
「まぁ、そうかもね」
「お前、そんな大会に出て大丈夫なのかよ」
「オリンピックも無くなっちゃったし、
 それにもう俺、これでしか生きていけないから。
 各国の凄い奴らが集まるんなら、俺が行かない道理が無いでしょ。
 俺、世界覇者なんだぜ、知ってたか?」
「知ってるよ、お前金メダル三つも取ってるだろ」
「そうだろ」

そうだろ。
その言葉が封をした。
会話の流れがぷっつり切れて気付く。
ああ、そうだ、今は夜だったな。声が昼よりもよく響く。
公園の前のアパートの一室で誰かがカーテンを開けて、閉めた。
顔の判らない人影が無言で「うるせえ」と言ってるようだったが無視。
言いたい事があるならちゃんと言え。
言わずに察するのが日本人の美徳と言われ、
その美徳のせいで社会人の世界では数多くの伝達齟齬が起きている。

「小学校の頃トランプやってたろ」

桑野がそう言ったのはポーカーの事。
確かに昔、二人の友人とよくポーカーを昼休みにやっていた。
桑野はそれに加わる事は無かったが遠巻きからしばしば見つめていたのは覚えている。
桑野が記憶から引っ張り出したのはその時の掛け声だと言う。
俺達がポーカーで上がる際には「トゥルッ」という電子音のような声を上げていたと。

「それ、俺も言いたかったんだ」
「トゥルッをか?」
「そう。トゥルッって言ってカード出してワイワイ言いたかった。
 そう言うのって凄く特別な感じだろ。
 三人しかわからない世界をその言葉だけで作り出してるようで凄く羨ましかった。」
「懐かしいな、本当、今まで忘れてた」
「俺もそう言うのがあるんだ。
 かくれんぼずっとやってきた世界の選手とフィールドで顔合わせるとさ、
 どいつもこいつも変な顔に見えるの。
 お前、人生でかくれんぼしかやってこなかったんだろ?
 だからこんな所に立ってるんだよ、ここはバカ達の集まりだ。
 でもな、俺が一番バカになるからお前達には絶対負けないって。
 国が違うから、しかも皆勉強しないから言葉なんて判らないんだけどさ。
 でもそう思ってるのが目ぇ見りゃ判んの。
 絶対、全員思ってるの。
 俺達だけの世界でさ、
 今の所俺がトップだから、
 やっぱり俺がその集まりに行かない訳にはいかないんだよね。」
「お前、
 随分嬉しそうに話すね」
「ん?   そう」
「そう。
 なぁ、一つ聞いてもいい?」
「どうぞ」
「お前、どうして今回漫画返しに来たの?
 もう借りパクされたものと思ってた。」
「いや、それに関しては本当にごめん。
 返そう返そうと思ってたんだけど忙しくて。」
「自分の事で?」
「ごめんて」
「でもなんだろう、身辺整理みたいだろ、六年借りてた物返しにくるなんて。」
「今度の大会、凄く長くなるから返すなら今しかなかった」
「ながい?」
「今度の世界戦、フィールドに国使うから」
「国?」
「人工衛星で管理するらしい」
「……ねぇあのさ」
「ん?」
「今お前、どれ位凄いの?」
「かくれんぼ?」
「そう」
「ちょっと目閉じて。やるわ」

そう言われて目を閉じると気が付く事がある。
夜は本当に静かな空間だと。
俺達がのるブランコが二つだけキコキコとなって、
バッタが一匹跳ねようものなら砂利を蹴る音すら聞き分けられるほど静か、それが夜。

目を閉じてと言われれば、
その後には目を開けて、と言われるターンがある。それは人生で知った。
桑野がいつ開けろ言うのか、ブランコを漕ぎながら待った。

キコ、キコ、キィ、キィ。
キコ、キィ、キコ、キィ。

目を閉じる事が好奇心を激励し、
好奇心が耳に宿り、
耳が取り込んだ音を脳に持ち帰って導いた結論は、眼を開ける事。

横のブランコの上に桑野の姿はもう見えない。
いつの間に降りたのか、そもそもどうやって居なくなったのか、
音の一つさえも聞こえなかったし空気の流れも一切無かった。
今はただ慣性の法則に従うブランコが一つ、
ゆっくりと往復のふり幅を狭め、
そのリタルダンドが桑野の不在を俺に伝えた。

いや、伝えたのはただの不在だろうか。

かくれんぼだ。

始ったのはかくれんぼだ、俺が言ったんじゃないか。

「桑野  」

言葉は動作に連鎖する。
言動と一繋がりに表される事も多い。

正直、桑野の言ってる事は所々良く判らなかった。
その桑野が全く分からない方法で目の前から姿を消した。

そうか桑野。
お前本当に凄い奴になったんだな。

世界公式かくれんぼのルールでは審判が「もういいかい」と叫び、
それに各選手が三秒以内に一回だけ「もういいよ」と返事をし、
それで試合が始まる。

だが恐ろしくて言えない。

もういいかいと言ったら、
もう二度と桑野に会う事は無い、
桑野に会う事は出来ないと悟って。

ただブランコを漕いだ。
もう時間は十時になる。

桑野が乗っていたブランコはいよいよ止まり、

その上に桑野が戻ってくる事は無かった。

※古谷実:代表作に行け!稲中卓球部、ヒミズ、等
     初期作品はギャグに重きを、
     中期から作品中で人が死にだし、
     現在は魔界の掘り出し物の如き言い回しから人生訓のような作品を出す。

 志村貴子:代表作に青い花、放浪息子、等
     性別と恋愛が縦横無尽に冴え渡る様はまるでジェンダーの辻風。
     超三次元に捩じれた恋愛を主軸にした作品が多い。
     その消え入りそうな線の描写の裏で、
     煮込まれ切った鍋の様な重厚な感情描写が映える。

 浅野いにお:代表作にソラニン、おやすみプンプン等。
     コマ展開に超絶と呼ぶに足る技術を持つ。
     天才。


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