「みんなと一緒、普通がいい」の落とし穴
みなさん、こんにちは。岩尾です。
さて、今日は、小学校などでの難聴児の聞こえのフォローについてのお話をしたいと思います。
小学校で、補聴器をつけた子がいるけど、何もフォローがないという状況をよく聞きます。
これは、家族からの申し出がないんです。
「特にフォローは必要ありません」
学校側はそう言われているというわけです。
中には、「補聴器や難聴のことに触れないでください」というケースもあります。
もし、補聴器や難聴のことでいじめられたというのがあれば、しばらくの間、触れないでくださいと言うのはあるかもしれません。
でも、ずっと触れないでいるということは、つまり、聞こえに関して、何のフォローもないということになります。
フォローを頼んでない人の、いろんな理由を少しずつ聞きますし、聞けない人もいますが、地域の小学校に行った難聴児家族に関して、今年、このことに注目して僕が感じた感覚は、
「特別扱いしてもらう必要はない。みんなと一緒、普通がいい」
というものです。
そして、
「普通にできてるから大丈夫」
「まあ、難聴だから少々わからないこともあるだろうし、それはしょうがないんじゃない。この子はよくやってるよ」
といった感覚があるんじゃないかなということです。
う~ん・・・・
言語化してみると、今時点では、やっぱり言いたいことをうまく表せてないなとは思いますが、このニュアンス、わかりますかね?
一方、
保育園や幼稚園で、先生に聞こえのフォローのお願いをすると、よく言われるのが、
「大丈夫ですよ。○○ちゃん、ちゃんと動いてますよ」
です。
そして、こう言われたら難聴児の家族は必ずこう返します。
「そうなんです。動くのは、周りの子を見て、同じように動くんです。それは周りが見えるので、見て動いてるんです。でも、なぜ今からこれをするのか?ルールはこうだなどの言葉は入ってないことがほとんどです。ここが言葉として頭に入らないと社会性が身に付かないんです。だから、繰り返して言葉で教えてほしいんです。」
小学校に上がると、これを伝えた親が、保育園の時の先生のようになってしまう。
そんな感覚です。
聞こえのフォローがなければ、必ずヌケモレがありますから、それはつまり正しい言葉が入ってないことになります。
そうなると、勉強も身に付かないですし、友達とのやり取りも難しくなることがあるでしょう。
これまで、20代、30代、40代、50代以上の難聴の大人の人と話してきて、わかったこと、推測できることが多くあります。
その中でも、非常に重要なことは、
大人になってからも、聞こえのフォローをお願いしない、躊躇する、申し訳ないと思うという人が結構いるということです。
特に、軽中度の人に多いように思います。
なるほど。
軽中度で、聞こえのヌケモレは少ないように見えるから、家族としては大丈夫だろうと思ってしまい、聞こえのフォローのお願いをしないで、みんなと一緒、普通がいいと思ってしまったのかもしれません。
でも、小さい頃から聞こえのフォローをやってないと、まず、勉強や友達の言葉がわからないので、ここでつまずきます。
そして、本人に聞こえのフォローをお願いするという感覚は身に付きません。
また、自力で、フォローのお願いした方がいいと思うに至っても、効果的なお願いができない事もあります。
フォローの依頼の仕方も、効果的なやり方がありますが、仕事場面で、ただ単純に「聞こえないので筆談してください」と言っただけでは、「全部筆談なんて無理でしょう」と断られるかもしれません。
これがいいとか悪いではなく、現実的には、こういうことも起きているということです。
でも、言い方を変えれば、対応してもらいやすくもできます。
それは、小さい頃からフォローの依頼をしていれば自然と身に付いてきます。
もちろん、かけはしでも、こういうことを学ぶセミナーはあります。
仕事場面で聞こえのフォローがなければ、すれ違ってしまって会話がわからず、仕事にもなじめなかったりします。
こういうことは、本当に多くあるんです。
だからこそ、小学校から、聞こえのフォローをお願いし続ける。
子どもにも、「こんなフォローお願いしたよ」と話す。
子どもの前でフォローを頼む。
こういったことが、非常に重要で、これをやることで、子どもも情報がわかりやすくなるし、自分でフォローのお願いができるようにもなる。
周りの大人も友達も、聞こえのフォローを知れば、大きくなって、その子と別れたとしても、別の場所で難聴の子に会えば、効果的なフォローが自然とできるようになるはずなんです。
このことで、理解が拡がっていくはずなんです。
だけど、今はそれができていない。
一番身近にいる家族が、
あの時、保育園の時、「動いてるから大丈夫じゃないんですよ。言葉を伝えてほしいんですよ」と言った家族が、
小学校になると、「元気に学校行ってるから大丈夫か」となってしまっている、そういう家族が多いと、強く感じます。
やはり、見えづらい障害ですね。
聞こえる者としては、聞こえない世界を完全には理解できません。
家族でさえ、「動いてるから大丈夫」状態になってしまうという事実があるわけです。
だからこそ、想像し続けることが大事だと思います。
難聴児は、みんなと一緒では、一緒に遊べません。一緒に学べません。
だって、聞こえないんです。
補聴器をつけても、聞こえる子と同じようには聞こえないんです。
何のフォローもないと、必ずヌケモレが出るんです。
冒頭の画像と同じです。
みんなと一緒がいいでは、背の低い子は、野球の試合を見れません。
前に壁があるから。
みんなで野球観戦を楽しむには、台をもらって、壁より高い位置に顔が来るようにしないといけません。
この台が、難聴児で言えば、聞こえのフォローです。
聞こえのフォローがあれば、みんなと一緒に遊べます。一緒に学べます。
聞こえのフォローが絶対的に必要なんです。
でも、難聴児、一人一人違います。
そして、学校の資源もそれぞれ違いますし、先生はこういうことを知りません。
だから、同じ家族で集まって、情報共有して、より良い方法を使っていって、そういう家族を増やしていくことで、難聴児がそこにいても、普通にフォローができるようになるんだと思うんです。
みんなと一緒、普通がいいじゃないんです。
普通にフォローを頼める、普通にフォローしてくれる状況を作っていくことが、やるべきことです。
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