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ルート1(4)・カーミラ(Carmilla)/ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ

前回扱いました「ドラキュラ」にも影響を与えたと言われる、レ・ファニュの「カーミラ」を読んでみました。
聞いていたように、「ドラキュラ」とはかなり趣が違いました。なんとなく一種の格調、叙情のようなものを感じたのは、原作のためか訳出のためか、それとも語り手や吸血鬼自身が女性と設定されているためなのでしょうか?

◆カーミラ

母を亡くし、父とともに、召使いなどに囲まれて、郊外の邸で生活するローラは、行き来する友達もなく、寂しい毎日を送っていました。
そんな彼女の邸の前で馬車が事故を起こし、乗っていた婦人は、急ぎの旅であることを理由に、同乗の娘を邸に預けて旅立っていきます。
美しく魅力的なその娘「カーミラ」は、ローラの幼い頃のある記憶に残る娘と同じ姿でした。
かすかな戸惑いと怖れを含みながらも、現れた友人とそのカーミラの魅力に、幸せな気持ちを感じるローラ。
ちょうどその頃、近くの村では「病気」が流行しはじめ、若い娘たちが続けて命を落とします。やがてローラ自身も身体に不調を現し始めますが・・・・。

◆印象

短編ではありませんが、短めにまとまった話で、例えば「ドラキュラ」に比べればシンプルな筋立てです。
しかし話のまとめ方、物語の後半部分にはそれなりの趣向が凝らされており、単純なお話とは言い切れないでしょう。
他の話を読んでみないとはっきりしたことは書けませんが、このへんは作者の特徴というか、テクニックのひとつなのかもしれません。

舞台となる邸やその周辺の状況描写が美しく、しっかりとした背景になっています。これは雰囲気作りとして巧みですし、このあたりが「叙情的」と思わせられたのかもしれません。

事前に何かで読んでいたように「同性愛的」という感じはあまりしませんでした。確かにそれを思わせるような記述、会話などもありましたが、個人的には、昔の令嬢たちって若干こんな感じだよね、というイメージがあり、そこからそれほど離れていなかったので。

この作品を読んで、「吸血鬼」というのはやはり、民間の伝説、伝承から生まれてきた存在なのではと感じました。
それらがキャラクターとして立ち上がらせられたのが「カーミラ」であり「ドラキュラ」ではないかと思います。そのへんが「フランケンシュタイン」との違いかな。

「ドラキュラ」も「フランケンシュタイン」も、のちにさらにキャラクターが膨らみあるいは変容していくところは同じですが・・・。

◆「花のようなリリベット」

さてこの話を読んで、昔、わたなべまさこさんの、女吸血鬼を扱ったマンガを読んだなあ・・・と思い出しました。
調べたところ、「花のようなリリベット」という題名だったようです。
どなたかも書いていらっしゃいましたが、この「カーミラ」を下敷きにしたかと思われる作品です。

同性愛的と言うならこのマンガの方が、それらしかったかも・・・。おぼろげな記憶によれば、当時まるで子供だったわたしにはわからない部分が少しあったような・・・あれからどうなったんだっけ。

連想としては次はこの本!としたかったのですが、生憎書籍としての入手が若干困難なようですので、こちらは時間をかけていつか手に入れ、再読しようと思っています。

わたなべまさこさんと言えばやっぱり「聖ロザリンド」でしょうか。忘れられないものがあります。
「水曜日の森」もしっかり覚えています。こちらは「四谷怪談」を翻案していたんだろうな。わたなべさんの作品は、妙にコマのひとつひとつまでくっきり蘇ります。「白いカメレオン」というのもあったなあ。

わたなべ作品といえばわたしにはホラーものが思い出されますが、「花の中のリザ」など、ホラーでない話もたくさん書いてらっしゃいますね。
ちらっと読んだきりですが、ロシアの話もあったなあと思い検索してみました。
「百塔ーЗавтаの獅子たち-」というらしいです。
読んでみたいけどこれもまた入手が難しいみたい・・・。

◆BOOKS桜鈴堂

この「カーミラ」ですが、今回は電子書籍で読みました。
「BOOKS桜鈴堂」さんというレーベルで、

「本好きの、本好きによる、本好きのための本」をモットーに、英米古典文学の隠れた名作たちを電子書籍として紹介する、電子出版のインディーズレーベルです。

BOOKS桜鈴堂 amazon著者ベージより

とのことです。

https://www.booksorindo.com/

覗いてみると、何やら面白そうな本がたくさん!
電子書籍なら1編100円で読めるものもあり、手軽に読み始められそうです。
今まで幻想や怪奇小説にはそれほど興味がなかったのですが、ちょっと読んでみようかなあ。

このレーベルで、“カーミラと並ぶレ・ファニュの代表作”と紹介されている「緑茶」という話が気になりましたので、次回はこちらを扱うことに致します。

ところでレ・ファニュという名前から、フランスあたりの人かと思っていました。
アイルランド出身なんですね。
レ・ファニュ自身にも興味がわいてきています。
「ドラゴン・ヴォランの部屋 (レ・ファニュ傑作選) 」という本が創元推理文庫から出ております。
この本も読んでみたいなあ・・・。

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