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中之島美術館「平行人生展」に行ってきた

先日、大阪中之島美術館で開催されている「平行人生 新宮晋+レンゾ•ピアノ展」を観に行った。この展示は、ともに1937年に生まれ、これまで数多くの共同制作を行なってきたイタリアの建築家レンゾ・ピアノ氏と、日本の芸術家 新宮晋氏の人生と作品を紹介するものである。

私はこれまで美術館に行ったことがないのだが、昨年興味本位で「岡本太郎展」を観に行って以来、中之島美術館のSNSだけはフォローしていた。パンフレットに描かれていた《はてしない空》のデザインに惹かれて、今回の展示を約1年ぶりに観に行くことにした。

風が生み出す作品の動き

風を受けて動き回る作品たち

レンゾ・ピアノの「軽さを追求した」という建築もさることながら、新宮晋が作った、風で動く立体作品がとても印象的だった。画像ではわからないが、新宮晋の作品は風を受けることで複雑に動き回るように作られている。
展示室では、扇風機が同じ強さで風を送っているだけにも関わらず、作品は非常に複雑で予測できない動き方をしていた。物理学の用語を借りるなら、これらの作品は風に関する単純な条件から「カオス」な挙動を生み出していたと言える。詳しい動きは展覧会のPV(YouTube)が分かりやすいだろう。

彼の作品が、単純からカオスを生み出す変換器になっている要因は、大きく分けて2つある。1つは、作品の形が複雑であり、風を受ける角度少し違うだけで、異なる挙動(結果)を生み出しうること。もう1つは、複数の回転部が備わっていることで、作品が取りうる形状パターンが多数存在するということ。

リザバー計算に使えそう…

急に専門分野に入ってしまうが、なぜこんなことが気になったかというと、彼の作品が近年、物理情報学で注目されている「リザバー計算」の計算機として利用できそうだと思ったからだ。

リザバー計算とは、簡単に言うと、複雑な動き方をするシステムに入力を与え、その結果と低層のニューラルネットワーク(≒簡易的なAI)を組み合わせることで、難しい計算を高速に行う手法である。例えば、複雑に動くタコの足(を切り取ったもの)を水槽の中に揺らすと、計算補助器として使えることが知られている(日経新聞)。

この観点で考えると、新宮晋の作品は、少しの入力条件(風)の違いに応じて全く異なる動き方をするので、リザバーとして使えるのではないかと思った。

展示会を振り返って

さて、だいぶ研究寄りのことばかり述べてしまったが、展覧会全体としても非常に充実した内容であった。
20分近く収録されていたレンゾ・ピアノと新宮晋の対談映像では、彼らのものづくりや表現にかける想いを知ることができた。長い人生を制作にかけてきた彼らの文化や芸術に対する視点は、ちょっとしたコメントをとっても興味深いものばかりだった。また他の方がnoteで書いているように、2人が制作仲間を超えた親友なのだと分かるほっこりする映像だった。

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