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2-3.もしもボックス『もしもxが間違いで、1x が正しい世界だったら』

「はかせー。今日、小テストがあったんだけど、0点だったよ」

「どれどれ見せてごらん。ふーん、なるほど、そういうことか。この①は間違いではないね。正しいかと言われたら困るが、間違いではないのは確かだ。②はいろいろなことが解っていないような解答だな。③を書かなかったのはなぜかな?」

(小テストの問題とはじめ(ルート)の答え)
練習問題 次の式を簡単にしてください。
① 3a-2a  ② 2x-x  ③ ax+ax
答え① 1a  ② 2  ③ 無解答

「③は、2x+3x とかだったら 5x と書けるんだけど、axとaxの和だから困ってしまったんだ」

「ルートは『和(ワ)』という用語を覚えたんだね。きちんと使えている。さて、2x+3x だったら 5x だといったが、どうして5x となるんだね」

「2mと3mなら5mでしょ。だからさ」

「2メートルと3メートルなら5メートルか。unique(ユニーク)で素敵だ。実に素直だ。ルートは分配律というのを聞いたことはあるかな」(※1)

「分配法則なら聞いたことあるよ」

「ああ、そのことだ。(紙に書いた式を見ながら)(a+b)m=am+bm で、括弧の中のa,b 2つに、公平にmを分け与えているね。注意することは、足し算と掛け算を結び付けている点だ。いまは、右から左に使うということだけを考えよう。amやbmは、a・m,b・mということだ。このとき、mで「一括り(ヒトククリ)に出来る」というのが分配律だ。これを使えば、64×3.14+36×3.14も暗算でできる」

「3.14が両方にあるからmと見ればいいんだね。64がa,36をbと考えると、64+36で100。これに3.14を掛けて、314」

「そうだ。これを使って計算すればいい。だから、3a-2a=(3-2)a=1aとなる。だから、間違いではないと言える。ただ、+7や+45のプラスのように煩わしいから、1x などの「1」は省略する。スッキリしていて扱いやすい」

「じゃあ、もしもxが間違いで、1x が正しい世界だったらどうなるの」


「ではその世界に行って様子を見てみよう。数学では、未知のもの、正体の判明していないものを「x(エックス)」で表現することが多い。『容疑者Xの献身』やミスターXやX線などはこれが由来だ。でもこの世界では『容疑者 1Xの献身』やミスター 1Xや 1X線だ。数学者たちも1a, 1b, 1c,...,1x, 1y, 1zを使っている。1次方程式の一般形も「1ax+1b=0」と書かれている。2次方程式…n次方程式もFermatの最終定理にも1が付けられている。私の目から見ると、美しさの欠片もない式だ。美しいと云われている「e」「i」「π」「1」「0」が奏でる数式もだ。ルートにはこれが美しい式に見えるかい」

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「ごめんなさい、博士。静かな世界を騒がせてしまって」

「さあ、元の世界に戻ろう」

(ルートの小テストを見ながら二人は話を続けている)
「この②の解答で気になるのは、『引き算』の理解だ。ルートは、24-4を2とやったり、西瓜-烏賊=酢などと計算してるのかと思ってしまうよ」

「そうはしないよ。②も③も、もう自分で解けそうだよ。ちょっとまってて。2x は2・x で、x は 1x と考えればいいから、2x-x=(2-1)x=1x=x.ax+ax=(a+a)x=(1a+1a)x=(2a)x=2ax.どう、博士」

「理解できている人の式だ。静かだね」

「ありがとう、博士」

エンディング はいだしょうこさんの『夢をかなえてドラえもん』▢

※1 unique・・・独特な、類(たぐい)のない の意。数学では「一意的」と訳されています。

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