24.09 複素数と2次方程式(複素数に拡げて得たもの)

理一の数学事始め

前回は複素数に拡張して "数の大小関係" が失われたという話をしました。今回は獲得したものの話です。

虚数は3次方程式を解くときに形式的に現れるものでした。身近では2次方程式を根の公式で解こうとするときに現れます。中高の数学ではこれを動機とし形式的に認めることからはじまります。こうすることで実数を係数とする2次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ を必ず解くことができます。根の公式

           $${x=\dfrac{\:-b \pm \sqrt{b^2-4ac\:}\:}{2a}}$$

によって必ず2個の根を持ちます(※1)。例えば

例1 2次方程式 $${x^2+5=0}$$ を解くとき、実数 $${\mathbb{R}}$$ の範囲では解くことが出来ません。なぜなら $${x^2=-5}$$ と変形したとき、$${(実数)^2 \geqq 0}$$ なので決して $${-5}$$ になることはないからです。でも形式的に $${x=\pm \sqrt{-5}}$$ を認めたことによって
              $${x=\pm \sqrt{5}\: i}$$
と解けるようになりました。ここで $${i=\sqrt{-1}}$$ です。
なお、方程式の解は虚数で $${\sqrt{5}\: i, \: -\sqrt{5}\: i}$$ の2個です。▮


例2
 2次方程式 $${x^2-2x+6=0}$$ も実数の範囲では解けません。根の公式で解くと分かりますが、ルートの中身がマイナスになります。実際
             $${x=2 \pm \sqrt{-5}}$$
となります。
したがって複素数 $${\mathbb{C}}$$ の範囲に拡げることによって、方程式は2個の虚数の解 $${2+\sqrt{5}\: i, \: 2-\sqrt{5}\: i}$$ を持ちます。▮


このように2次方程式は複素数 $${\mathbb{C}}$$ の範囲で考えると必ず解くことが出来ます。その際、根の公式などを使わなくても、解が実数か虚数かを判断することが出来ます。根の公式で解いたときのルートの中身がマイナスだったら虚数と判断できるからです。プラスなら実数です。
もしレイになったら

     $${x=\dfrac{\:-b \pm \sqrt{0\:}\:}{2a}=\dfrac{\:-b \pm 0 \:}{2a}=\dfrac{\:-b\:}{2a}=-\dfrac{b}{\:2a\:}}$$

となり、$${a, \: b \in \mathbb{R}}$$ なので解は実数であり1個です。

例3 2次方程式 $${x^2-3=0, \: x^2+3x=0}$$ などは根の公式を用いることなく解きますが、次のように考えれば根の公式を使うことができます。

$${x^2-3=0}$$ を $${x^2+0x-3=0}$$ と考えれば、$${a=1, \: b'=0, \: c=-3}$$ とし $${x=0 \pm \sqrt{0-(-3)}=\pm \sqrt{3}}$$.

$${x^2+3x=0}$$ であれば $${x^2+3x+0=0}$$ と考えて、$${a=1, \: b=3, \: c=0}$$ とし $${x=\dfrac{\:-3 \pm \sqrt{3^2-4\cdot 1 \cdot 0\:}\:}{2}=\dfrac{\:-3 \pm \sqrt{3^2\:}\:}{2}=\dfrac{\:-3 \pm 3\:}{2}=-3, \: 0}$$.  ▮


これによって2次方程式の解については根の公式のルートの中身 $${b^2-4ac}$$ が正・0・負によって解の種類と個数が判ります。
この式 $${b^2-4ac}$$ を判別式(discriminant) と呼び、英語の頭文字dから記号 $${D}$$ で表されます(※2)。

2次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ なら判別式は $${D:=b^2-4ac}$$ ですが、2次方程式 $${ax^2+2b'x+c=0}$$ なら根の公式が  $${x=\dfrac{\:-b' \pm \sqrt{b'^2-ac\:}\:}{a}}$$ なので $${D/4:=b'^2-ac}$$ を使います(※3)。


例4 2次方程式 $${x^2+x-2=0}$$ の判別式$${D}$$ を計算すると
$${D=1^2-4\cdot 1 \cdot (-2)=9}$$ なので解は実数で2個です。▮

例5 2次方程式 $${3x^2-6x+4=0}$$ の判別式$${D/4}$$ を計算すると
$${D/4=(-3)^2-3 \cdot 4=-3}$$ なので解は虚数で2個です。▮

:このように解の種類とその個数を判断することを「解を判別する」などと表現します。「解を判別せよ」と言われたら、解の種類とその個数を答えれば間違いありません(※4)。
ただし、高校生の場合は教師の指示に従ってください。

判別式の使い方は次回です。2次方程式の判別式は上で紹介した2つを使います。忘れたらその都度確認してください。▢


※1 中高数学ではコンではなくカイといいます。この場合は、解は2個または1個です。考えている数の世界によっては解や根がないこともあります。解が1個のとき重解ジュウカイと呼んでいますが、これは学習指導要領によるもので専門用語にはありません。重根は専門用語です。

※2 判別式(discriminant) の頭文字dから記号 $${D}$$ で表記されることが高校数学では多いようですが、$${d, \: \Delta, \: \delta}$$ なども使われるので、判別式を表しているつもりで単に $${D}$$ と書いても伝わりません。使いたい場合は "判別式 $${D}$$" のように一度は書きましょう。
これで高校生相手に入試で減点することはないと思いますが、数学する上では基本です。数学書を読むようになるとだんだん身に着き、ゼミ(セミナー)や論文指導を通して身に着くのだと思います。

※3 2次方程式 $${ax^2+2b'x+c=0}$$ のとき、判別式 $${D=(2b')^2-4ac=4b'^2-4ac=4(b'^2-ac)}$$ より、$${\dfrac{\:D\:}{4}=b'^2-ac}$$ ということです。

※4 本来、判別式の判別は方程式が重根を持つか否かのことです。2次方程式の場合は重根だけでなく、その根が実数か虚数かまでたまたま判断できるのです。
『数学雑談』「判別式は何を判別するのか」をご覧ください。

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