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4-3.いまさらきけない多項式(分配律,展開の基本)

分配律は2-2.文字式の話で紹介したのが最初です。それ以来、同類項の計算や括弧を外すときに繰り返し使われてきました。4-1.でも分配律を使って同類項をまとめました。難しかったと思うので、再掲します:

次式はtに着目して、1行目の式を降べきの順に並び換えたという式です。

多項式の話①-1

この式で、2行目から3行目に掛けて変形するときに、分配律を使って同類項をまとめました。分配律というのは am+bm=(a+b)m というものでした。
括弧を外すときは、多くの場合、m(a+b)=ma+mb の形で使われます。

展開というのは、多項式の掛け算の形を1つの多項式で表すことです。
例えば、t(x+1)=tx+t は左辺を展開して、右辺に変形した式です。
左辺はtと (x+1) の掛け算で、右辺は項が tx と t を+で結んだ多項式です。
展開というときは、ふつう、1次式以上のいくつかの掛け算の形を1つの多項式で表すことをいいます。つまり、2(x+1)=2x+2 は展開とはいいません。

そのときによく使われるのは、(a+b)(c+d)=ac+ad+bc+bd …(♪) の形です。
この式の左辺は、(a+b)・(c+d) のことですから、多項式の掛け算になっていますね。右辺は4つの項が「+」で結ばれているので、1つの多項式です。
左辺を展開して、右辺の多項式を得たことを表す式です。

どうしてこの式が成り立つのか説明します:(a+b)(c+d) 
➡ c+dをmと考えると,(a+b)m.
➡ 分配律を使うと,(a+b)m=am+bm.
➡ mはc+dのことだから,a(c+d)+b(c+d).
➡ もう一度分配律を使うと,a(c+d)+b(c+d)=ac+ad+bc+bd.
つまり、(a+b)(c+d)=ac+ad+bc+bd が成り立つ.

実は、分配律を図形を使って説明したように、この式も図形を使って考えると自然な等式なのです。

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分配律のところで話をしようと思っていて、忘れていたことを書きます。
分配律 (a+b)m=am+bmも等式 (♪) も次の等式 (♬) も小学算数で使いましたね。それは、37×4,42×15,318×93を計算するときです:
37×4=(30+7)×4=30×4+7×4=120+28=148,
42×65=(40+2)×(60+5)=(40+2)×60+(40+2)×5=40×60+2×60+40×5+2×5
     =2400+120+200+10=2330,
318×93=(300+10+8)×(90+3)=(300+10+8)×90+(300+10+8)×3
            =300×90+10×90+8×90+300×3+10×3+8×3(以下略)
これらを縦に並べたのが筆算です。原理はとうに習っていたのです。

分配律を繰り返し使うことにより、次式も成り立ちます。
(a+b+c)(d+e)=ad+ae+bd+be+cd+ce …(♬)
図形で示しておきます。

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展開の基本は、それぞれの括弧の中から一つずつとってそれを掛け、すべての場合をつくした後、それらをすべて「+」で結べばいいのです。図形で考えると分かり易いと思います。

では問題です。
数式 (a+b+c+d)(x+y+z) を展開すると、異なる項は何個できますか。



答え 12個.
解説:これまでの図を真似て、図を書いてみてください。(※1)
尚、(a+b+c+d)(x+y+z)=ax+ay+az+bx+by+bz+cx+cy+cz+dx+dy+dz.

発展問題です。
数式 (a+b)(p+q)(x+y) を展開すると、異なる項は何個できますか。



答え 8個.
解説:(a+b)(p+q)を展開すると項は4つで、それに(x+y)を掛けたら8つになります。これまでの図を真似て、図を書いてみてください。(※2)
尚、(a+b)(p+q)(x+y)=(ap+aq+bp+bq)(x+y)
         =apx+apy+aqx+aqy+bpx+bpy+bqx+bqy.

ここに挙げた問題は、高校数学Aで学ぶことですが、原理を理解すれば中学数学で十分理解し、解けます。▢

※1 (a+b+c+d)(x+y+z) の図 4×3で12区画できます。

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※2 二通りの図が考えられます。
その1:(a+b)(p+q) は項が4つだから、縦4つ、横2つに区切った長方形。
その2:縦2つ、横2つ、高さ2つに区切った直方体。
ただ、4つの括弧の積だった場合は、直方体のような図が書けませんね。

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