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24.08 複素数と2次方程式(実数を複素数に拡げて失われた性質)

理一の数学事始め

小1算数の自然数からはじまり

   自然数 $${\subset}$$ 整数 $${\subset}$$ 有理数 $${\subset}$$ 実数 $${\subset}$$ 複素数($${\subset}$$ は包含関係)

のように数の世界が拡げられました。そうするとさらに複素数を含む数の世界、さらにもっと広い数の世界があるのではないかと考えるのは自然です。

複素数を含むより広い数の世界は考えられています。さらに広い数の世界も考えられています:複素数 $${\subset}$$ 四元数 $${\subset}$$ 八元数
※ 四元数(シゲン スウ)、八元数(ハチゲン スウ)。(※1)

でも代数方程式 (多項式=0) を考える上では複素数で終わりです。これはドイツの数学者 ガウス(K. F. Gauss 1777-1855) の成果です。数の世界を広げると新たに獲得する性質もありますが、失われる数の性質もあります。

さて、実数を含むように拡げた複素数の世界で何が失われたのでしょうか。


方程式 $${x^2=-5}$$ を満たす複素数は $${\pm \sqrt{-5\:}}$$ です。$${\pm \sqrt{5\:}\: i}$$ として考えてもいいのですが、わずらわしいので $${\sqrt{-5\:}}$$ を $${\alpha}$$ と書き $${\alpha^2=-5}$$ を満たすとします。

[1] $${\alpha \neq 0}$$ であることは分かります。では $${\alpha >0}$$ でしょうか。それとも $${\alpha <0}$$ なのでしょうか。

①   $${\alpha >0}$$ とすると $${\alpha^2>0}$$ です。$${\alpha^2=-5}$$ なので $${-5>0}$$ となりますが、大小が逆になっているので $${\alpha >0}$$ ではありません。
そこで
②   $${\alpha <0}$$ として考えてみましょう。このときも  $${\alpha^2>0}$$ になり、以下は①と同じことになるので $${\alpha <0}$$ ではありません。
つまり、$${\sqrt{-5\:}}$$ はプラスでもマイナスでもないということです。


[2] $${-\sqrt{-5\:} < \sqrt{-5\:}}$$ は言えるのでしょうか。ここでも $${-\alpha < \alpha}$$ として考えてみます。

①   左辺を右辺に移項すると  $${0< 2\alpha}$$ となるので  $${\alpha >0}$$ となりますが、[1] で示したように $${\alpha >0}$$ は成り立ちません。だから $${-\alpha < \alpha}$$ はいえません。
②   同様に $${-\alpha > \alpha}$$ もいえません。
つまり、$${-\sqrt{-5\:} < \sqrt{-5\:}}$$ でも $${-\sqrt{-5\:} < \sqrt{-5\:}}$$ でもありません。


[3] $${-1-\sqrt{-5\:}, \: 1+\sqrt{-5\:}}$$ とすると  $${-1-\sqrt{-5\:} < 1+\sqrt{-5\:}}$$ のように思えませんか。ここでも $${-1-\alpha <1+\alpha}$$ として考えてみましょう。

①   移項して $${-2 < 2\alpha}$$.  つまり $${-1 < \alpha}$$ と変形できます。$${-1}$$ より大きいのだから $${0 < \alpha}$$ または $${\alpha < 0}$$ がいえます。でもこれは [1] の結果に反します。
②   $${-1-\alpha > 1+\alpha}$$ を考えても同様です。

 
実数を複素数に拡張したことによって何が失われたか気づきましたか。
失われた性質は数の大小です。手元にある教科書には「複素数では数の大小を考えない」と記されています。

この認識は大事です。
 2次不等式 $${x^2-2x+3<0}$$ を解け。
 $${x^2-2x+3=0}$$ を解くと、$${x=1\pm \sqrt{2}\: i}$$ となる。
 よって、$${1-\sqrt{2}\: i < x < 1+\sqrt{2}\: i}$$.  ▮(誤)

 すべての実数 $${x}$$ に対して $${x^2-2x+3=(x-1)^2+2>0}$$ であるから、 $${x^2-2x+3<0}$$ を満たす解はない。▮(正)

※ 問題文に考える数の範囲が記されていないのが気になります。でも高校数学ではふつうの問題です。大小関係は実数までしか考えられないので、不等号を使っていれば実数が前提と考えるのだと思います(※2)。

この『数学事始め』ではどの数の世界で考えるかをうっかりしない限り断りを入れています。今後も自然数、整数、有理数、実数、複素数 やそれらを表す記号はたびたび出てきます。▢


※1 興味があれば『四元数と八元数』などの本をご覧ください。
 実数とは別に、有理数を含む世界が考えられています。素数p進数というもので整数論で用いています。十進数,  二進数(N進数)とは別のものです。
 何の目的で数を用いるのかは大事です。
 個数を数えるためにふつう有理数は使わないし、長さを求めるために自然数は使いませんね。四元数をもちいるとうまく説明できることがあったりするのです。

※2 方程式の場合は複素数で考え、関数の場合は実数で考えます。因数分解は有理数で考えます。そうでない場合は断りがあります。毎回、考えている数の世界を断るのがめんどうなので、たいていの教科書には断りがあります。似たことは大学以降の数学でもありますが、必ず断り書きがあります。教科書によって異なるので注意が必要です。分かりやすい例は「自然数」や「積分定数」です。0を含むか含まないか、表記するのかしないのか。

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