おつかれさまでした、メイケイエール、今日はゆっくり休んでね
メイケイエールが、最後の直線で伸びなかった。
スプリンターズステークス、1番人気、前走がレコード勝ちだったこともあって、単純にG1獲れる、と思っていた。
結果は14着、なにか突発的なトラブルでもあったのか、いろいろなことを考えてしまった。
怪我したんじゃないか、体調はどうか、もしかして、もう走るのが嫌になったのか。
最後の直線、メイケイエールが沈んでいくのを茫然と見ていた。
レース前、メイケイエールが勝つかどうかで、肯定的な意見と同じく、否定的な意見もあった。
前走との間隔が短い、前哨戦では強いがG1は獲れない馬、あのメンツだから勝てた、強かったのは左回り、調教のタイムが後になるほど遅くなっていた、果ては、ずっとG1の1番人気が飛んでる、こういうときは1番人気は来ない、という、なんの根拠もないネガティブな意見もあったりした。そういうコメントを改めて思い返した。
そういえば、テレビで見るメイケイエールに対して、嫌な予感はあった。馬場入りスムーズ、パドックでも落ち着いているようだったし、ゲート入りもまったく問題ない。これまでにないぐらいおとなしい。いや、この子は、ゲート開くまではおとなしい、いい子だという。だからこれが本来の気負いのないメイケイエールだ。私は、ゲートが開いてからも、メイケイエールは勝つ、少なくとも掲示板には入る、と思っていた。
だから、最後の直線で、伸びないのを見たとき、本当に、なにかあったのか?と思わずにはいられなかった。
まだ、すごくかかっていた、とか、なにか明らかな理由があれば、ここまであれこれ思わずにすんだのだが、テレビで見ていた私(ちなみに競馬を見出したのは昨年からだが、いまだ競馬のことをよくわかっていない)には、ただ普通に走っている、折り合いもついてちゃんと走っているようにしか見えなかった。
いやいや、落ち着いて考えてみよう。
たしかに、なにかあったのかもしれない。
大人になって、今日はこれ以上走ると怪我するかも、と自分で加減ができるようになったのかもしれない。一番前を走ることしか考えてなかったのが、余裕が出てきて、いろいろ気になることが出てきたのかもしれない。でも、不器用なもんだから、それに気を取られて足が止まってしまったのかもしれない。今のところ、くわしいことはわからない。
そうだ。あまりにも前評判良かったが、メイケイエールって、そんな簡単に勝ってくれる馬だったか?
今は、まだまだ発展途上の馬なのではないか?勝手に覚醒した、などと思っていたけど、メイケイエールの強さと隣り合わせの、いままで知らなかった脆さが出ただけではないか?
そうだ。一緒に走った馬も同じように強いはずだ。それに今回勝った馬は、メイケイエールより先輩の馬、陣営ともども、いろんな経験をしてきて、いろんなことを言われたり、嫌な思いをしたり、いろんな思いをして、今日の勝利をつかんだ馬である。
競馬の神様が、メイケイエールに、G1獲るのはまだ早いよ、と、止めてくれたのかもしれない。
メイケイエールには、まだまだ勉強することがある。
我慢することも、悲しいこともつらいことも、今日勝った先輩ぐらいに、いろいろ経験して、より大きな花を咲かせられるように。もっともっと大きな感動を私たちに与えてくれるように。
今日はそのワンエピソードだ。きっと。
もちろん、この先のことはどうなるかわからない。もしかしたら、走ることがもう嫌になってるかもしれない。実際、そういう馬がいて、若くて、実力があるにもかかわらず、引退していた。つい最近のことである。
でも、もし、まだメイケイエールが走り続けてくれるなら、その先にはきっとなにかが待っている。
なにが待っていてもいい。私はこの先も、気にせずにはいられない。
それだけ、魅力のある馬だから。