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舞台『D.C.III~ダ・カーポIII~君と旅する時の魔法』その1 導入編

去る4月29日から5月2日まで劇団飛行船さんの持ち小屋である飛行船シアターで行われた「舞台『D.C.III~ダ・カーポIII~君と旅する時の魔法』上映会」が終わった。
これは、昨年の11月に新橋のニッショーホールで上演された舞台『D.C.III~ダ・カーポIII~君と旅する時の魔法』を撮影した映像を、皆でスクリーンで観ようという試みだ。ゲキ×シネ的な催し、と言えば通りがいいかも知れない。

舞台D.C.III上映会 告知ポスタ

2時間20分の本編上映後、15分の休憩の後、日替わりゲストによる30分間のアフタートークショーを行う、というのが上映会の主な演目だが、基本的にトークショーは連日平均45分、最終日にいたっては一時間半のトークになってしまい、大いに盛り上がったようだ。
僕も30日の昼の回、夜の回のトークショーに特別ゲストとして登壇し、少々、制作秘話的なものを話させてもらった。
こういうのはいくら話しても話し足りないし、僕に対するインタビューというわけでもないので、そこまで突っ込んだ話にはなっていない。
そこで、自分なりの舞台D.C.IIIというものに関する総括みたいなものは、あった方がいいんじゃないかと思って筆を執った次第だ。

2021年の春頃、フルプライスもののお仕事を仕上げたばかりの僕の元へ(タイミングは本当に良かった)、CIRCUSさん経由で劇団飛行船さんからの企画書が舞い込んできた。
D.C.IIIを舞台化したいので脚本をお願いしたい、という依頼だ。
その時点でどこまで配役の声掛けをしていたのかは知らない。交渉中なのか、確約が取れていたかはわからないが、新田恵海さん、佐々木未来さんを起用して舞台化する、という大体の方向性は決まっていたようだ。
D.C.IIIが舞台化する。企画書を読んだ瞬間、背筋がのびた。

舞台D.C.IIIは縁によって成立した舞台だと僕は思っている。

大学時代、僕は新聞部に所属していたのだが、3年次に新聞部の後輩たちが、学科の仲間などに誘われて演劇部を設立した。
彼らを演劇に誘った者は割と早いタイミングで辞めてしまったのだが、その後、彼らはSky Theater PROJECTという劇団を立ち上げ、大学の仲間や当時、主宰が働いていたラーメン博物館のキャストなどを中心に徐々に人脈を広げて劇団は劇団らしくなっていった。
僕自身もその劇団に身を寄せ、仕事でゲームのシナリオを執筆する傍ら、公演の制作などを10年程やっていた。

本業が忙しくなってしまったので、後輩の主宰する劇団から離れたのだが、演劇鑑賞自体はもちろん続けていた。
が、結婚し、子供が生まれ、待機児童の関係などで2016年夏に、活動拠点を地元静岡に移したことにより、小劇場文化に触れる機会がほとんどなくなってしまった。

演劇に携わっていると多かれ少なかれ、知人が出演している舞台、というものを観る機会は増える。
が、地元にいれば、地元劇団か商業演劇ばかりで、そうそう知人が立つ舞台に巡り合えることはない。

そんな中、新田恵海さんの出演するミュージカル『キューティ・ブロンド』の静岡公演があることを知ったのだ。
さすがに観劇に飢えていた頃で、日本青年館(ここもD.C.的には思い出の舞台ですね)でやる舞台『仮面ライダー斬月』のチケットでも取ろうかと考えていたところだった。
しかも、静岡公演の会場がマリナート(清水文化会館)、自転車でも行ける距離である。

かくして2019年3月、僕は新田さんの出演するミュージカルを観劇、マネージャさんのはからいで直接挨拶することもでき、久々に彼女のために台詞が書きたいと思ったわけだ。
このミュージカルに、舞台D.C.IIIの演出家となる市村さんの奥さんも出演していたことを知るのは、もっと後になってからである。

また、地方に住んでいると演劇に限らず、ヒーローショーなどのライブエンターテインメントもなかなか見る機会が少なくなる。
住宅展示場などで行われる小規模なショーくらいしかないので、子育てしていた特撮好きの僕にとって、シアターGロッソが遠くなってしまったことは、大きな損失だった。

そんな中でも大規模公演が静岡にやってくることはある。ルパンレンジャーVSパトレンジャーのファイナルライブツアーや仮面ライダースーパーライブなどを観に、息子を静岡市民文化会館へ連れて観に行ったこともあり、プリキュアドリームステージに娘を是非、連れて行きたいと思っていた。

『キラキラ☆プリキュアアラモード』のプリキュアドリームステージが、静岡公演が先述のマリナート清水で開催された頃は、まだ娘が小さく、次の『HUGっと! プリキュア』は静岡公演が無かった。
翌年の『スター☆トゥインクルプリキュア』も静岡公演が無いのか、と諦めかけていたところ、TVシリーズの最終回後、次期プリキュアである『ヒーリングっど・プリキュア』放映開始の前日、2020年2月1日に静岡公演が滑り込みで開催されることを知り、プリチュームに身を包んだ娘とともに静岡市民文化会館へ駆けつけたというわけだ。

2020年2月5日に清水港に寄港予定だったダイヤモンドプリンセスが、その数日前に運航停止になったことを考えると、娘と一緒に見に行ったスター☆トゥインクルプリキュア・ドリームステージは、コロナ禍直前の輝かしい記憶として、僕の中に残っている。

※実はプリキュアドリームステージには二種類あり、メインの劇団飛行船さんが仕切っている公演と東映さんや地方局が仕切っている公演があるらしく、この時の静岡公演は後者である。内容は同じだが、スーツアクタ等が共通なのかどうか僕は知らない。

舞台D.C.IIIの初期企画書を受け取った僕が目にしたのは、演出家である市村啓二さんのプロフィール。
そこにはプリキュアドリームステージ2019、2020総合演出、の文字。

僕の中でミュージカル『キューティ・ブロンド』と『スター☆トゥインクルプリキュア・ドリームステージ』が一本の線に繋がり、この依頼は受けなきゃいけない、そう強く感じたのだった。

※市村さんの奥さんを通じて新田さんと市村さんに繋がりがあり、彼女も市村さんの演出で舞台に立ってみたい、と思っていた、ということを知るのも、僕にとってはちょっと先の話である。

そんなわけで、多分、誰にとっても予想外だった舞台版の依頼が舞い込み、僕はD.C.IIIの舞台版の脚本を書くことになった。
勿論、僕が断ってもプロジェクトは進行するだろう。舞台は好きなので断る気も無かったが、断ってしまったら大変なことになるかも知れない、という予感もあった。
何より10年のキャリアを積んだ「新田恵海」と「佐々木未来」に台詞を書きたい。ここから、僕の試行錯誤が始まることとなる。

季節は春。COVID-19のパンデミックが始まってからまるっと一年、その時点での状況は芳しくなく、様々な団体の公演延期・中止の噂も聞く中、公演が予定されている11月がどうなるかなんて全然、想像もできなかった頃。
ワクチンの普及などによって11月は結果的に、一時的に感染が抑えられた期間になったわけだが、そんな未来が待っているなんて誰も予想してない。

はてさて、どうなるか。

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