深刻な悩み

宿屋ヒルベルトさんの単著はまだかしら。

と・に・か・く!

もう、自分に何ができるのかわからない!
それくらい実話怪談作家が充実してきている!

今までの作家活動の中では、わたしは浮いた存在でまあまあその「浮いてる」感じが個性かなとぼんやり思っていたんです。しかし、今の状況ではわたしはまったく浮いてなくて、むしろ埋もれてきている実感があるわけで。これはまったく商業的な数字の話ではなく、文章のパワーとか切り口の鮮やかさとか、バックボーンの豊かさを生かしてどれだけ世界を作れるかとか、そんなことの話です。
けれども、そこが一番大事!
「売れてるモノが良いモノ」って言葉は、売る側=出版社が発するべき言葉で、こっちは「面白いモノ=良いモノ」という評価軸で考えている。たまに出版社の狙いと作家の感性と時代の風潮が奇跡のマリアージュを果たしてヒットが生まれるわけですね。でも、その話をしても意味がないし、絶対に売れる攻略法なんかないんです。
そんなことより。
わたしは今後どうしようか、という悩みが生じました。

ここ最近、わたしは今まで「なんか人と違う感じに書けてるからいいや」程度のぬるま湯に浸かっていたんじゃないかと、不安になってきました。
ファンならば「ソンナコトナイヨー」を繰り出したくなるタイミングでしょうが、これはあくまでわたしの独自の悩みであって、他者の言葉はまったく響きませんし、他者に理解できるものではありません。

と・に・か・く!

例えば若本衣織さんは初めから知ってたんですよ。この人は感性が優れていて文章も巧みだと。それでも単著にショック受けましたが。
蛙坂須美さんも、そもそもデビューから見詰めているわけで「そりゃこの人ならこれくらい書けまさーね。うん、やっぱり面白いな」なんて心の余裕もあり。
丸太町小川さんも宿屋ヒルベルトさんも竹書房マンスリーから出てきているので、「おおっ! これは素晴らしい新人怪談作家! 先が楽しみ!」という先輩風を吹かせて心の平穏を保っていました。

で、鈴木捧さんなんですが。
竹書房から出ていた単著は既読で、筆致がどんなものかも知っていた。
つもり。
だったんですが。

セルフパブリッシングKindleの「エニグマをひらいて」が凄すぎる。

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↑敬意を込めてもう一回貼った。

あれ? もしかして、これってわたしが書きたかったけどどうやっても消えないわたしの人間臭さと文章下手っぴと含蓄の無さが邪魔をして書けなかった雰囲気そのままじゃないの? もしかして、やられた? やられてる?

と強い衝撃を受けてしまったんですね。
わたしは「怪談界一のへそ曲がり」というフレーズが帯に踊るような人間なので、これを読んじゃうともう本来わたしが目指していたはずの方向性はもう封印するしかないことになっちゃっいます。鈴木捧さんのほうが上手いんで……。じゃあ、高田公太は今後一体何を書いたらいいの……という悩みが。

「マイペースでやればいいんじゃないんですか」

と言われても、今は素直に聞けないですね。
いや、やりますよ。オファーありますし全力でやりますよ、そりゃあ。
書きだしたらノリますよ。ずっとやってんだから。ちゃんとお値打ち以上の文章を書くんですよ。それは当たり前ですよ。

で・も!

焦るのよ!

面白いものを書くという苦しみがさらに重くなったような感覚があるんです。こんな感覚、初めて。
ミッドライフ・クライシスじゃないの?
唯一の自信だった作家としての自分の存在に危機を覚えちゃって大丈夫?
しかも、これ全然売れてる売れてないの話じゃないよ。
これ、悩みどころとして成立してる?
みんな等しく売れてないんだよ?

と・に・か・く!

嬉しいですよ。
こんな気分にさせてくれる作家に囲まれて。
こっからのわたしが尻つぼみになるのか、達観するのか、さらなる(何かの)躍進を遂げることができるのか、見ものじゃないですか。もう自分を諦める程度の器なら、どっかに就職してぽっきり筆を折りますし。
どうせ、最終的にひとりの闘いであって、誰かと闘っているわけではないんです。ルールも勝敗も自分で決める「人間大会 高田公太カップ」をひとりでやってるだけなんです。

作家はこんだけしんどいんだぞ、バカ。

ということで、最上部に貼った怪談本をみんな必須で読んでください。


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