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累計百物語 青森篇初回まとめ①

わたしが主催する会合「累計百物語」で語られた参加者の怪談を文章化しました。遅いペースになるかもしれませんが、「累計百物語」で語られたものはほぼすべてを文章に起こせたらいいなと思っています。

1 鶴乃大助さん 1周目

 場所、時期などは特定を避けるために秘す。

 鶴乃さんも時折出入りしている、とある事業の事務局でアルバイトをする女性が亡くなった。
「あの事務局に関わってる人で亡くなったの、あれで四人目だよ」
 鶴乃さんが顔馴染みの死を嘆いていたところ、仕事仲間からそう言われた。改めて思い返すとたしかにちょうど四人、鬼籍に入った者が事務局内にいる。
 そして、決して長くない期間、印象としては「続けざま」に事務局に勤める者が死んでいることに怯えた社員のひとりは、社長に「付き合いがあるカミサマ(東北地方の民間の巫)に相談してみよう」と提案した。
 許可を得た社員がカミサマの家に赴き事情を説明すると、老婆は「その事務局に何か古い御札がある。それが良くない」と言った。
 週三日ほどしか実質使わない事務局室はありきたりな応接机とソファーがあるばかりの殺風景な模様で、神棚がない。老婆はそれについても改善するよう話していたが、それ以前に御札の類いがあるようにも思えない。それでもカミサマの言葉だからと、会社に戻ったのちに社員数名で事務局室内で御札を探してみることにした。
 皆でトイレ、引き出しなどのあちらこちらを見て回り、諦めかけたころにそれは見つかった。
 流し台の下の観音扉の戸を開け顔を突っ込むと、確かに古い御札が一面に貼ってあった。

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