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2020年代に入ったことだし、SDGsを「誰ひとり取り残さない」の観点からおさらいしよう

 SDGsの共通理念は「誰ひとり取り残さない(leave no one behind)」である。いよいよ2020年代に入った今、「SDGs?聞いたことはあるけど…」なんてことでは、もうダサい。

SDGsとは?

 SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、今や世界の共通言語だ。「エスディージーズ」と読む。

 まず、SDGsは「私」の問題だ。
 世界は、放っておけば立ち行かなくなる。もし経済成長の只中で格差が解消されず、人権が無視され、人々の生命が脅かされて不満が募っていけば、社会は不安定化する。環境保護を怠れば、私たちが活動する基盤である地球が危機に陥る。プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)はすでに到来しているとする説もある。

 だから、世界的なコンセンサスが必要なのだ。SDGsは2030年までに達成する国際目標として、国連が採択した17の目標とそれを達成するための169のターゲットで構成されている。国連に加盟する193ヶ国がその達成に向けて動いている。

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 SDGsは目標であるだけでなく、具体的なアクションへの示唆を伴っている。
 日本では、首相官邸に「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置されており、国家の意思決定にも影響力を持っていることがわかる。また、企業経営においては、BSDC(ビジネス&持続可能開発委員会)による報告書『より良きビジネス より良き世界』によると60の領域でビジネスチャンスがあり、12兆ドルの市場機会が生まれるとされている。営利企業としても、取り組む上での合理性があるのだ。

「自分自身のことだけを考えているようでは、世界を維持できない」というマクロの視点だけでなく、「企業や個人にとってビジネスとしてのメリットもある」というミクロな視点との2段構えによってSDGsのロジックは構成されていると私は感じる。だから当然、開発途上国だけの問題ではなく、先進国も含めたあらゆる国の人々の目標であり、すなわち「私」の目標として力を持つのだ。

 SDGsは2016年から適用されているが、2018年時点で、このままのペースでは2030年の達成ができないと言われている。2020年代、SDGsを軸とした世界の動きはさらに加速していくだろう。

私たちの「誰ひとり取り残さない」とは

 167個のターゲットのうち「誰ひとり取り残さない」が最も端的に表されたものはこれだろう。

ターゲット10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
(目標10 人や国の不平等をなくそう)

 各国は、17の目標について達成の傾向と状況とのふたつの側面から評価を受けているが、日本はSDGsの共通理念である「誰ひとり取り残さない」の実現に程遠い。

 国内におけるSDGsの達成の傾向(Trend)を見てみると、17の目標のうち、多くが「達成もしくは達成予定」か「改善」と評価されている。素晴らしいことだ。しかし問題は、目標10「人や国の不平等をなくそう」が唯一「悪化」の評価を受けていることだ。
 日本について、パルマ指数(Palma Ratio)に示される経済格差は広がり、高齢者の貧困率(Elderly Poverty Rate)は高まっている。

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(日本の「10 Reduced Inequalities(人や国の不平等をなくそう)」は悪化している)

 また、現状評価では目標5「ジェンダー平等を実現しよう」などで「達成にはほど遠い」の評価を受けている。
 前述のSDGs推進本部(首相官邸)による「拡大版SDGsアクションプラン2019」では「女性活躍の推進」や「ダイバーシティ・バリアフリーの推進」が謳われているものの、女性や障害者、外国人の状況は、2019年、果たしてどうだっただろうか。

参考:Sustainable Development Solutions Network/Bertelsmann Stiftung「Sustainable Development Report 2019」

すぐに出来ることは「位置づける」?

 自分や自社が行なっている取り組みが、気づかないうちにSDGsに関わっていることもあるだろう。まずはSDGsを理解し、自分の所属する組織や自分自身の行う取り組みを「位置づける」ことが大切だと私は思う。例えば、近い知り合いに一声かけることが「誰ひとり取り残さない」に寄与していることもあるだろう。

 俯瞰して見れば、先進国の日本がSDGsの共通理念「誰ひとり取り残さない」を実現できていないとの評価は、恥ずべきことだ。取り組みを17の目標および169のターゲットの中に位置づけて、不足している部分に対してアプローチすることが求められる。

 さらにSDGsはCSR的な文脈だけではなく、利益にも直結する目標だ。利己的に活用するのも、活用しないよりずっと前向きではないだろうか。SDGsはそうしたエネルギーも取り込める、懐の深い概念だ

 まずは、知ることから。

【参考】
『60分でわかる! SDGs 超入門』(著者:バウンド、監修:佐藤寛、功能聡子/技術評論社)


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