繕うようにまちを編む −小さなまちで、建築技師として働くということ(0/5)

0. イントロダクション
 みなさん、こんにちは。どんなきっかけかは存じませんが、こうしてこのテキストを読んでいただいていることに、心から感謝を申し上げます。
はじめに、ほんの少しだけ自己紹介。名前を、田畑耕太郎といいます(なんて田舎っぽい!)。生まれは秋田なのですが、いろいろなご縁が重なり、かれこれ6年ほど前から、お隣の岩手県、住田町という小さなまちの役場で建築技師としてはたらいています。

 地方の役場の建築職と聞くと、みなさんはどのようなイメージを持たれるでしょうか。僕は常日頃、一体どうしたら建築を学ぶ学生のみなさんや、あるいはセカンドキャリアを考えている方々に、「地方で働く」、あるいは「公務員として働く」という選択肢を提供することができるんだろうかと考えあぐねているのですが、このテキストの趣旨は、そんな「働き方」の一端を、広くみなさんに知ってもらうことにあります。
 何を隠そう、僕自身も公務員になるとは微塵も思っていませんでしたが、いざ働いてみるとなんとも奥の深い仕事ですし、何より、学生の時分には全く想像もしていなかった働き方をしているように感じます。そういう意味で、「地方で働く」、「公務員として働く」ことの魅力を少しでもお伝えできればと思いますし、もしそこに、僕も想像していないような可能性を感じ取ってくれるなら、それ以上の喜びはありません。

 すこし話は逸れますが、昨年、アーキテクチャーフォトジョブボードというサイトで、島根県庁の技術系職員募集が大々的に告知されました。https://job.architecturephoto.net/jobs/012838/

 仕掛け人は同県庁の職員であるやまもとさんという方で、ぼくはこのことに深く深く感銘を受けたのですが、そこに掲載されたテキストを拝読するにつけ、そうか、よくよく考えたら、僕たちの仕事をきちんと伝える媒体なりテキストなりって、いままでなかったのかもなあ、と思い至り、こうして筆を取った次第です。
 技術者の減少、特に地方の役所なり役場なりにおけるそれは、ずいぶん長いこと全国各地で叫ばれているように感じますが、然るに、その根本的な原因は、僕たちがふだんどのような仕事をしているか、それをきちんと伝えられていないことにあると思うのです。

 もちろん、一概に「都会より地方の方がいい」、あるいは「民間より公務員の方が魅力的」なんてことは絶対に無いですし、そんなこと言いたくもありませんが、「都市と地方」、「民間と公務員」が、せめて選択肢として同じ土俵に乗っかってもいいんじゃないかなあ、と、つくづく感じています。 もちろん小さなまちの、小さな役場のことですから、どこまで普遍性のあるお話になっているかは分かりません。僕自身、たいへんお恥ずかしながら、「ふつうの役所であれば当たり前に教わっていること」、即ち建築技師としての一般常識のようなものが、だいぶん欠けているような気もします。これはひとえに、小さな役場の功罪とでも言いましょうか、「役場内に建築技師は一人だけ」という状況ゆえ、実に世間知らずな側面もあろうかとは思いますが、どうかどうか、ご容赦を頂ければ幸いです。

 前置きが長くなりましたが、おおまかな構成は、以下のとおり。役場で行う主だった業務と、そこに紐づくキーワードを並べています。

1. 企画する -仕様を書くというしごと / 発注者としてまちをつくる
2. 設計する -インハウスアーキテクト / 積算業務 / 地方の設計事務所について
3. 工事する -地付きの工務店とつきあう / 監理者・監督員として現場を見る
4. 管理する -公営住宅という住まいによりそう / 町医者としてはたらく
5. 制度をつくる -補助金のルールブックを書く

 こうして書き出してみると、建物が生まれてから死ぬまで、その一生に深く深く関わることのできる仕事なのだなあと、改めて気付かされました。

 きちんと最後まで書き上げられるかどうかは定かではありませんが、少しづつ書き溜めていこうと思いますので、ぜひぜひお付き合いのほどを。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?