メタバースにおける地形の役割(2022の年の年初ご挨拶)
1.はじめに
明けましておめでとうございます。2022年もユーザーの立場で引き続きメタバースの進化を楽しんでいきたいと思っており、その立場で思っていることを書いておきたいと思います。
前半は和歌山県の那智山に行って思った、メタバースにおける地形の話、後半は、2022年のメタバースに期待することを書きました。
実績のあるワールドクリエータでもないので、説得力無いとは思いますが、2022年のメタバースの進化を考えるきっかけになればと思います。
2.街における地形の役割
1)メタバースのワールドとは
メタバースとは、ユーザーがアバターとして中に入って体験できるコンピュータ上の空間ですが、このノートの中でメタバースは主にVRSNSの世界を想定してます。(これを限定しないと、テキストだけで構成されるメタバースとかわけわからなくなるので)
VRSNSでは、クリエーターが作ったワールドに、ユーザーがアバターで参加するのが基本的な構成です。ワールドは、景色や地形、アイテム、さらにはゲームやイベントのギミックなどが盛り込まれます。
なお、アイテムという概念を分離しているサービスもありますし、ワールドとアバターを連動させる例もありますので、あくまで基本形ということで。
メタバースでは、ユーザーが自分のワールドをアップロードし、公開することが可能で、ユーザー数の増加や製作ノウハウの共有が進み、日々メタバース上で多くのワールドが生み出されています。
2)メタバースのワールドの現状
多くのワールドが生み出される一方、ユーザーの時間は限りがありますので、知られずに埋もれていくワールドや、一時の話題にはなっても忘れ去れてしまってるワールドが多数あります。
継続的に利用されるワールドは、特定のコミュニティの集会場になっているワールド、イベントが開かれるワールド、定番のゲームワールド、アバターショールーム、そして待ち合わせ用のワールドなどです。
メタバース生活が長い人だとそれぞれいくつか具体名が挙がるかと思います。
注目している流れとして、リアル地域連動型のワールドがあります。バーチャル渋谷が代表例ですが、2021年は、バーチャルOKINAWAやバーチャル大阪なども登場しました。
リアル地域連動型の利点は、その地域に関連する様々なものを取り込んだイベントがやりやすいという点、地域の住人を巻き込むことによるコミュニティの構築のしやすさという点がありますし、自治体や地元企業にとって参加する理由を説明しやすいというビジネスモデル上の優位性もあります。とはいえ、メタバース上の商取引はまだ規模が小さいので、実際にビジネスとして回るようになるのはもう少し先です。
3)那智山に行った話
ここで突然、先日行ってきた那智山の話をします。
和歌山県の東側、世界遺産にもなっている熊野三山の一つです。
交通の便は微妙なので、なかなか行きにくい所ですが、その行きにくさから生まれる体験も含めて、熊野詣という歴史があります。(それでも高速道路の整備が進んでアクセスしやすくなってきています。)
この那智山、街という観点で説明すると、那智の滝を中心に生まれた宗教都市です。
この街の景色を観た感想は、「住みたい」と言いたくなる美しさでした。(都会人の得意技である、ほんの少しも実感の伴わないやつですが)
この美しさの理由は、統一感のある石垣・樹木・建造物で構成された高低差を生かした立体的な街というところだと思います。
この立体的であるというのが、住みたくない理由でもあって、日常で高低差を上下するのは体力的にしんどいですし、物品の搬入や建設にもすごい制約が発生してしまいます。一方で、自動車があればふもとの平地から通うことは困難ではないので、結果的に現在この街に住む人はあまりいないのでしょう。
4)メタバースの地形設計の方向性
那智山のような立体感のある街をメタバース上のワールドに再現することは恐らく可能であり、例の「住みたい」を満たせるとは思うのですが、何かが足りない気がしました。
それは、街の成り立ちにおける地形の力のようなものを感じられるかどうかだと思えてきました。
那智山であれば、大きな滝が、大都市から離れた奥地にあったからこそ、宗教都市として成立したし、滝の目の前にちょうどいい斜面があったからこそ、街ができたと考えてます。
人が生活するのに不利な地形というのは、何も珍しくなくて、そこに人が住む必要があることの方が珍しいのですし、その珍しさが特別な景観を生み出すということです。
一方、メタバースにはそういった背負うべき歴史がないため、計算負荷や目的地への移動時間などの機能性を重視した地形にする場合が多いです。また、探索を楽しんでもらう意図で敢えて複雑な地形にする事例も出てきているように思います。
そのような中で、街を機能させるために積み重ねてきた住人の努力のようなものを感じさせるために、リアルの地形を利用するという方向性もあると思っています。
また、リアルの地形を利用するのが難しいということであれば、例えば、ランダムに地形を生成して、それがどんなにワールドの目的と合致していなくても、それをベースにワールドを制作する技術を競うというのも面白いと思います。
3.2022年のメタバースに期待すること
那智山に行った思い出を語りながら、メタバースのワールドにおける地形設計の今後について書かせてもらいましたが、ちょっと話は変わって、年初らしく、2022年に期待することを書いておこうと思います。
2022年のメタバースは量(市場規模)の面でも、質(コンテンツ)の面でも成長するのは当然なのですが、この中で期待していることが3つあります。
1)リアル世界と共に進化する世界であること
リアルと分断された世界ではなくて、人類の歴史の積み重ねのようなものをうまく取り込んでほしいし、メタバースの成長によって得られた成果をリアルの街や社会の発展につなげていってほしいと思っています。
とくに、外国人観光客受け入れが困難になった現在の状況で、地方の街を支えるための力になると良いと思っています。
一応断っておくと、リアル世界と連携させたいからと言って、人格や外見をリアル側と統合すべきとは全然思っていません。楽しくないメタバースなんてそもそも人が来ないので、そこは犠牲にしてはいけないと思います。
2)成長を加速させ、一般層に普及させること
住人の盛り上がりとは裏腹に、(VR以外のメタバースを含めても)普及率は人口の数%行くか行かないかが実態です。この規模では、もの好きがやっているもの扱いで、社会制度を変えるような流れをつくることはまだまだ難しいです。
ただ、一方でリモート会議で相手の存在感を感じられなくなった問題に対して、メタバースが解決策であることは知られていますし、高齢者でも役に立つ技術であることはわかっています。また、そもそもの認知度は低くないという調査結果も出ています。
今のところ、始め方の難しさや、すでに活動している層とは異なるバックグラウンドの人の始めるきっかけ、始めた後の定着方法などが大きな課題だと思ってます。これらは技術面よりも、コミュニティやサポートの部分が大きいと思うので、解決方法はあると思っています。
3)日本の産業として成り立たせること
日本のメタバースがここまで盛り上がっていることが、ユーザーとしてはうれしいのですが、このまま市場として普及した時に日本発の企業がグローバルで活躍できるような流れができてほしいと思っています。
新しい技術、サービスが流行り始めると、巨額の投資で市場を押さえに行くのが、米国系IT巨大企業のやり方です。ご存知の通りFacebookがメタバース市場でそれを始めています。
この状況で日本企業が、世界市場のトッププレイヤーとして生き残るための勝負に挑むかの判断が必要な状況になっています。もちろん、クリエイターやコミュニティは投資だけで動くわけではないので、投資力がすべてではないのですが、人材確保や技術開発、有名コンテンツ購入など投資力での勝負になる場面は出てきます。
そして、この勝負は当該企業だけで完結する問題ではありません。投資額が巨大なので、投資家・銀行も覚悟をもって投資する必要があります。ユーザー・クリエイターサイドでも、巨大化する企業との間のコミュニケーション手段(問題解決の枠組みなど)の構築が必要です。さらに、そもそもの普及率次第では、社会や政府からサポートが得られないどころか、不当な介入を受ける可能性もあります。
このすべてを乗り越えるのは大変ですが、結構同じ方向を見ている関係者は多いように見えるので、不可能ではないと思っています。(そういう活動をする、本来のメタバース協会はやっぱり必要だと思う)
4.まとめ
新年早々、長文お付き合いありがとうございました。
今年の抱負というわけではない、ぼやっとしたことを書き散らかしてしまいましたが、前半は要するに那智山は街として良かった、という内容です。
後半のメタバースに期待することとして書いたことはあくまで期待なので、自分の自身が何かするという宣言ではないですが、自分の立場でできることには取り組みたいとは思っています。
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