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読了報告。「柊木さんちの絆ごはん」を読みました。

こんにちはこんばんは、小谷です。
2020年は未曾有の大災害イヤーですが、9月の今日は台風10号が九州全域を踏み荒らしていきました。私が住む地域は本当になにごともなく、大きな被害はありませんでしたが、ニュースを見るとやっぱり台風の爪痕があちこちにあるようで、対策の大事さを改めて痛感しました。
一刻も早い復興を願っております。

さて、九月から心機一転として、だらけた生活を改善しようと読書を再開しました。
いろいろ思うところがあって、恋愛小説を手当たり次第集めておりまして、いままさに勉強中なのですが、今回はまず3月にアルファポリス文庫より発売された、かんのあかねさんの「柊木さんちの絆ごはん」を読了しました。
すみません。ものすごく遅くなりました!!

さて、まずはざっくりとあらすじを。

大学生になる春、亡くなった祖父母の家に移り住むことになった柊木すみかは、祖母のレシピノートを見つける。
「受け継ぐ者に贈ります」と書かれてあったレシピノートは、これまで祖母が祖父や娘(すみかの母)に振る舞ってきた膨大な料理と生活の記録だった。
このレシピノートに一瞬で心を奪われたすみかは、料理初心者ながらレシピ通りに自炊を始める。祖母のレシピは人を笑顔にする不思議な力があった。
そんなすみかの周囲にも笑顔が集まるようになってきて、ある日、大学の同期である伊織瑛太に出会う。自然と心が通いあう二人の生活は、美味しいご飯によって柔らかに営まれていく。
愛情あふれる食事と暮らしの日々がたくさん詰まった連作短編小説。

アルファポリス第2回キャラ文芸大賞の読者賞を受賞された本作。
当時、私も本大賞に参加していたのですが、箸にも棒にもかからない結果でした。短編賞も設けられていたので何作か投げつけていたんですよね。そんな中、ひときわ注目を集めていたのが本作でした。
素朴な表紙と「おばあちゃんのレシピノート」というタイトルで、すごく気になっていたのを覚えています。
読者賞を受賞されて、本が刊行されるまで楽しみに待っていました。(それなのに、こんなに遅くなってしまい、本当にすみませんでした)

そんなわけで、WEB掲載時から「かわいいなぁ」という印象を持っており、改題され、表紙イラストが解禁になったときはますます「かわいい!」と思わず笑顔になりました。
本編もやっぱり「かわいい」。ほっこり温まる優しい物語で、すみかちゃんと瑛太くん、そしておばあちゃんとおじいちゃんの暮らしぶりに癒されます。いつの間にか、キャラクターたちのことが大好きになっていました。

以下、ネタバレも含むと思うのでご注意ください。語らせてほしい。


すみかちゃんの大学四年間の暮らしが丁寧に綴られています。生活の一コマ一コマが描かれており、またおばあちゃんのレシピも丁寧で優しい昔ながらの家庭料理が記録されています。
これはおばあちゃんと孫が織りなす生活の記録と伝授の物語なんですね。
冒頭、おじいちゃんとおばあちゃんの穏やかで睦まじい生活が描写されていますが、おじいちゃんの死によって彼らの生活が終焉を迎えてしまいます。おばあちゃんも後を追うように亡くなり、それから孫のすみかちゃんがやってくる。
家は孫に受け継がれ、同時におばあちゃんのレシピノートも受け継がれる様子は、羨ましいなぁと思いました。なんだか、この継承だけでも柊木家はあったかい幸福な家族だったことが伝わります。
この、すみかちゃんがかわいくて。女の子がかわいいと癒されますね。おっとりと優しい話し方をする子で、素直で純粋で、めちゃくちゃいい子です。家族との距離感も自然ですよね。お母さんとすみかちゃんの会話からは、やっぱり家族特有の「気恥ずかしさ」みたいなのがあるから多くは語らないけど、お母さんがけっこう娘の心配をしていますよね。愛が感じられました。

そして、すみかちゃんを訪ねてくる瑛太くん。彼の行動は、きっとおじいちゃんとおんなじなんだろうなぁと読み進めていくうちに気づいてましたが、大当たりでしたね。
すみかちゃんがおばあちゃん似だということがちょこちょこ出てくるので、瑛太くんもそうなんだろうなぁとニヤニヤしながら見守っていました。
なにかと理由をつけて(主に食材のおすそ分けで)訪ねてくる彼の描写は冒頭でも確かに描かれていました。そうです。私たち読者は、彼らを暖かく見守るご近所さんなんです。なるほど、読み終わって気がつきました。
昔ながらのお家なので、ご近所さんたちも古くからおばあちゃんたちのことをよく知っています。時折、すみかちゃんにおすそ分けしてくれたり、すみかちゃんもおすそ分けしたりと、とても良好な関係ですよね。
こういう文化、忘れかけてたなぁーとしみじみ切なくなります。ご近所付き合いが希薄な私には沁みる物語です。単純に羨ましい。

物語は一年目〜四年目の終わりまでですが、二人の生活は末永く続いていくのが十分にわかります。この二人ならこれから先、何があろうと絶対に離れないという安心感がありました。

さて、忘れちゃいけないのが、おばあちゃんのレシピです。
あったかい和食がメインなのかなぁと思いきや、そうじゃなく。いい意味で裏切られました。
おじいちゃんが「新しいもの好き」というので、祖父母の当時の生活においては大変珍しかっただろう西洋メニューがいくつか出てきます。でも、よく考えたら戦後なんだし、外国旅行も盛んになって、流通の幅も広がって日本の食生活も大いに変わっている時代を経てるんですよね。ネットがない時代ですが、おじいちゃんのアンテナがすごいです。人脈が広いんだろうなぁ。誰にでも好かれるような方ですよね。たぶん、いろんな人とすぐに仲良くなって教えてもらえるんだろうな、とレシピノートだけでお人柄がうかがえます。
ガンボスープなんて、私、知らなかった…おじいちゃんすごい…そして、そんなおじいちゃんのリクエストに応えられるおばあちゃんもすごい。
ビーフシチューが美味しそうで、いまは夏ですけど無性に食べたくなりましたね。
鮭のちゃんちゃん焼きも美味しそう。石狩鍋は絶対に食べたい!
約300ページのこの一冊に、四年分の料理とすみかちゃんの生活記録が詰まっており、予想よりもかなり品数があり、けっこうびっくりしました。そのどれもが、初めましての料理ばかりだったので「作ってみたい!」と意欲が掻き立てられます。
私自身、西日本に住んでいるので、北のほうの料理が私にとっては珍しく映りました。
また、日々ズボラ飯で生きているので、たまには気合いの入った料理をしてみたいです。私の実家はおせちの文化がなく、お重に詰め込まれた宝箱みたいなおせちに憧れがあります。
家庭で季節を大事にするというのは、すごくいいものだなぁと、やっぱり羨ましくなります。
日々、忙しさにかまけて忘れかけていた豊かな暮らしに思いをはせられる、そんな物語だと思います。どの世代も穏やかに楽しめる一冊です。


ごちそうさまでした。

アルファポリス文庫:柊木さんちの絆ごはん/かんのあかね
https://www.alphapolis.co.jp/book/detail/1085116/6131

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