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読了報告。「小料理屋いろりのお味見レシピ ひと匙の恋としみしみ肉豆腐」を読みました。

こんにちはこんばんは、小谷です。

この挨拶を前回忘れてたことに気がついて「しまったーーーー!」と大げさに嘆いてました。そういうこともあります。

さて、6月に入りまして、私の職場は4月から時短勤務だったのがさらに時短になりました。8時間だったのが5時間に。そして今月に入って3時間勤務に……不安はありますがなんとか毎日無事です。

また、今月は文フリ大阪に出品する予定(何しろ開催がわからないので)のシリーズものを執筆する以外に小説を書く予定がなく、充電期間にしようと考えていたのでさらなる勤務時間短縮に呆然としているわけです。それなら積みに積みまくった小説を今こそ読むべきでは。読了報告をしようと宣言したばかりだし。

そんな感じで、トップバッターは望月くらげさんの「小料理屋いろりのお味見レシピ ひと匙の恋としみしみ肉豆腐」を読了報告していきます。

まずはあらすじ。

大学1年生の主人公、真緒は夢の一人暮らしを絶賛謳歌中……とは言い難く、課題に追われ、また壊滅的な料理下手のせいで食事がままならない。毎日うどんじゃ目が回る。空腹のあまり倒れてしまった。気がつくと、そこは食事処のような和室。コトコトと耳に心地いい料理の音が聞こえてくる。どうやらここは、真緒が住むマンションの隣にある小料理屋「囲炉裏」だった。そこにいたのは、大好きなおばあちゃんではなく、和服のイケメンが睨みつけている……口が悪く、ちょっと無愛想、でもイケメンな店主、神代に助けられた真緒は彼の料理を食べてみた。ん?あれ?美味しくない!?この店主、なんと味付けが下手だった。実家では食いしん坊で、大好きなおばあちゃんが料理する横で味見をしていた真緒は、神代の料理にひと匙のアドバイスをしてみる。すると、料理が抜群に美味しくなった!それがきっかけで、真緒は神代から「この店でバイトする気はないか?」と強引に頼まれる。

飯テロ小説です。テロられました。「飯マズ店主」と「味見女子」というありそうでなかった組み合わせ、そして帯の煽り。カクヨムで投稿されてたときから読んでて「あー、これ本にならないかなー」と思ってたら本になったし、びっくりしましたよね。そういうことか!!と(笑)嬉しすぎるニュースで、刊行が楽しみでした。おめでとうございます。

私は料理は好きです。しかし、なにぶん一人暮らしなもので自分のためにご飯を作る……のもまぁ楽しいですが、やっぱりサボることが多いです。周期的に月末は食欲減退します。季節が変わって蒸し暑くなった今はさらに食欲が減退するわけです。「食べたいものがない=食欲がない」という認識なので、スーパーやコンビニの惣菜を見ても食べたいものがなく、惰性で栄養摂取してる気がします。そうなると食事はさほど楽しくないですね(笑)

でも、本作を読んで久しぶりに自炊しました。読んでる途中から、なぜか無性に生姜焼きが食べたくて食べたくて(P52に豚ロースの生姜焼きが出てきます)、気がついたらスーパーに走って豚ロースを買っていました。本当は肉豆腐とか鯖の味噌煮とか作りたいんですけど、私的に家に帰ってすぐに作って食べられるものといったら生姜焼きくらいで。言ってしまえば、玉ねぎと生姜切るだけで、あとは豚肉と一緒に炒めて味付けしたらあっという間に出来上がりです。誰でも簡単にできる、まさにお家時間にぴったりな読書もできてご飯も食べられちゃう、そんな一作ではないでしょうか。

しかも、本作の魅力はそれだけじゃない。和装イケメンに頼まれて、たまにいがみ合いながらもなんだか付かず離れずな模様がかわいくてかわいくて。

くらげさんの小説は女の子が健気でかわいいな〜って常々思ってるんですよね。まっすぐでひたむきな子はついつい応援しちゃいたくなる。私もかわいい女の子が書けるようになりたい……

真緒ちゃんは一生懸命で、面白い子でした。時折、神代さんに砕けた返事をするのがツボです。一方の店主、神代さんも私のツボでした。彼はツンデレですよね……一言で簡単にまとめてしまうとそうなっちゃうんですが。細かく言うと、口が悪いのに性格が曲がってるかと言われたらそうではなく、自分の欠点を知ってて、真緒ちゃんに味見のバイトを頼んでいるところが彼の誠実さを物語っていて、でも実際、こういう人が近くにいたら私なんかは真緒ちゃんみたいに怒って反論しちゃうかもしれない。それくらい感情移入がしやすくて、そんな彼らの内面を覗き見できるのが読書の醍醐味みたいなとこもあって、つまり神代さんも真緒ちゃんもお似合いなんです(^ ^)

私、読書感想文の類が苦手なので、ただただ自分の萌えポイントを語ってますが、大丈夫ですかね。とにかく面白かったということが伝わればいいかな……

真面目に解剖してみると、本作は「醤油」がベースのお話のようでもありました。「醤油ベースのお話」ってなんだかラーメンみたいな(笑)いや、ラーメンではなく和食が中心でした。家庭でも簡単に作れるものがテーマのようでもあり、またレシピも記載されていました。甘露煮や肉豆腐はついつい真似して作りたくなります。

醤油といえば、私が住む福岡県も食文化ならぬ味文化が特徴的で、醤油自体が甘く、こっちでは「うまくち醤油」って呼んでます。高校生くらいまで濃口と薄口の意味が分かりませんでした。それくらい「食」って地域性もあって、ともすれば他の地域の味を知らないまま一生を終えそうな。醤油なんかはとくにそうで、私もグルメ小説に挑戦したときはこの「醤油問題」をどうしたものか悩みました。読書をする上でもこの「醤油問題」などの味文化が引っかかってしまい、想像に困るわけです。その醤油問題をいとも簡単に解決させられました。本作は京都が舞台で、主人公の真緒ちゃんは徳島出身、神代さんは東京育ちで、お客さんは京都の人。私は生まれも育ちも九州なので関西圏の味文化に疎いのですが、主人公がそもそも京都の人じゃないわけで。それがかえって良かったのか、スルスルと違和感なく読めてしまいました。また、出てくる料理が家庭料理なものだから引っかかることもなく。そして、なんだか実家を思い出させてくれる懐かしさもあり。

うちの母、料理が好きだったんですよね。家の味を思い出して「レシピ聞いとけば良かったなー」とか後悔しました。ただ、家を離れすぎてしまってて、私の味の好みもかなり変わってしまい、母の甘ったるい味付けがちょっと苦手になりつつありますが、無性に食べたくなる料理をいくつか思い出しました。

さて、物語は食だけじゃなく、真緒ちゃんの恋模様も流転します。そうだった、作者は恋愛小説家だった、と思い出しました。後半、がっつり真緒ちゃんの恋心が綴られているのでこちらも必見です。むしろ必見です。

美味しいはもちろん、人情も家族も恋もたくさん詰まった物語「小料理屋いろりのお味見レシピ」、ぜひご一読。いや、ご賞味ください。

https://lbunko.kadokawa.co.jp/product/322002001179.html

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