9月23日 「小麦粉の日」

一宮ストア。 6月 29, 2015

「一宮ストア」のバス停で降りても、
「一宮ストア」は見当たらない。

きっと昔ここに
一宮ストアというスーパーがあったのだろう。
かつて町の人の生活を支えたであろう、
小さくもたくましい食料雑貨店を思った。

ある夜、翌朝のお弁当の下ごしらえをしようとしたら、
小麦粉が切れていた。でも、もう深夜。

小麦粉なして済まそうかと考えるも、
明日のお弁当の献立を変えなくてはならなくなるし、
もっと面倒なことになる。

仕方ない、
コンビニに買いに行くしかないか。
そうだ、
一宮ストアのバス停近くにコンビニがあったような。

外に出て、街灯と
遠くコンビニの明かりだけが薄暗く光る大通りをゆく。
そして、
活気ないさみしげなコンビニに着き、
やたらゆっくり扉が開く瞬間、
ガラス扉の文字が見えた。

「一宮ストア」

品ぞろえもまばらなコンビニは、
あの「一宮ストア」だった。

かつてバス停になるほど
町の真ん中に構えきっと棚いっぱいに、朝、目覚めては、
お客さんを迎えていたであろう。

今は、小麦粉は、棚の端っこに残りひとつ。
チェーンのコンビニの姿で、
朝も夜もなく、青白く細々と。

町の時間とともに、町の活気を担っていただろう商店。
行ったこともないのに、勝手に喪失感。

それでも、24時間眠らない営業に、
我が家のお弁当の献立は助けられた。

そして、望めば手に入るものと、
望んでももう手に入らないものを、
お弁当につめているのだと知った。

いつもそれは、気がつかないだけで。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?