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ゼロの平方根・後編①

【上大崎発砲事件と兄聡の残念】



平成18年4月29日
(インターネットニュース)
警視庁交通機動隊は4月28日深夜から翌日未明にかけ首都高速環状線および目黒線を繋ぐ高速道路の天現寺から戸越までの各出入口付近において大掛かりな一斉検問を実施した。首都高速目黒線の一の橋ジャンクション以南上下線も赤色灯を明滅した警察車両と公団車両十数台が行き来して警戒にあたった。
一昨年の少年週刊誌の連載から始まり昨年末に発売され人気に拍車がかかるアニメ・DVD・ゲームソフトのコラボ「首都高トライアルXⅢファイナル」の主人公土屋光司の劇中命日にあたるこの日、最後の走りをしたとされるこのルートに沢山の車両が集まるという情報が寄せられていたからだ。
同作品は昭和53年から平成4年に作られた劇場用映画のリメーク型作品、旧作品が暴走族の走りをテーマにしたものとは異なりXⅢでは高級外車のテストパイロットを主人公とした運転技術をコンセプトにしている。小学生から三十代まで幅広いファンを持っている。
フィクションである限りなんら違法性は無いが、これを真似するようであれば直ちに交通違反事案、危険運転罪が問われる事になる。つい先日にも二十代の会社員がこの作品の現実には不可能な劇画的ドリフト走行を真似て歩行者を巻き添えにした死傷事故を起こしている。

この日の一斉検問では各入口入線車両すべてに対し運転免許証の提示を求め安全運転遵守の呼びかけを行っている。午前0時まですでに3件の無免許運転を検挙、内1名は16才の少年であった。
一般主要幹線、明治通、外苑西通、目黒通、中原街道、山手通、各拠点の検問では飲酒運転による現行犯逮捕が相次いだ。連休前の深夜の軽い気持ちの息抜きが暗転、紳士淑女に重い仕打ちが課せられる事になる。

(インターネットニュースサイトおよび複数事件事故情報サイト等から)
午前1時頃
劇中主人公の命日の午前0時を過ぎて首都高速目黒線は多数車両が流入、その結果で渋滞し通過速度も通常よりもずっと低下した。
そのせいもあってか恵比寿三丁目および上大崎二丁目の住民からの苦情(白金台自然教育園あたりの目黒線カーブのクラクション騒音)以外さほど混乱を生じず収束を見せ始めていた。

午前1時14分
警視庁緊急指令が配備中車両および警察官らにも流される。
「発砲事件、目黒区上大崎三丁目コロンビア大使館付近、繰り返す、発砲事件、目黒区上大崎三丁目コロンビア、コロンビア大使館付近」

午前1時15分
目黒区西五反田大崎郵便局前で検問を実施していた警察官らが目黒川沿いの側道から右折して来た大型バイクに停車を求めようとしたところ突然Uターン、直ちに一台の警察車両が追尾、応援を求めた。
上大崎方向からの警察車両に気づき大型バイクは山手線ガード手前を急に左折、一歩通行を逆走、山手線に沿って杉野短大方向に向かう。
更に東急目黒線沿いに左折、この時すでに三台の警察車両が追尾。指令の指示で一台は迂回し挟み打ちを試みる。
一旦は見失うものの他の応援車両も集まり、別の警察車両が目黒線ガード下から急発進した黒色大型バイクを発見、追跡を開始。
「品川31から至急報、発見、マルツイかけます。マルソウ目黒川目黒線ガード下から発進南側道五反田方向へ逃走中。一方通行逆走、マルツイかけます。」。

大型バイクは側道北側から亀の甲橋のを走り目黒川横断、直ぐ左折して再び一方通行を逆走行し始める。高架目黒線下を一旦右折しようとしたが近付く赤色灯に断念しそのまま高架下を直進、更に一方通行逆走。ちょうど反対側から警察車両が進入し進行を塞いだが、右側マンションの歩道部分に入り込み走行、これを交わして更に逃走を継続。

午前1時32分
逃走車両は五反田大橋交差点信号を無視して国道1号線を強引に右折しようとし、目黒方向から来た乗用車2台に連続して衝突。
大型バイクは国道下り車線の歩道信号機に飛び込むようにして大破した。

衝突した2台の乗用車の内1台は黒レクサス、下り車線歩道ガードレールに車体を擦り付け停止、もう一台は赤のフェラーリ、中央分離帯のコンクリートにぶつかった後反対車線で横転した。他に巻き添えをになった車はない。
乗用車2台はそれぞれ白金台の追悼イベントに参加した後、桜田通りでパトカーを発見追走し、五反田大橋手前で追い越した後加速しながらこの交差点に進入した。信号は青、交通違反事案ではない。しかし、仕打ちを受けた。
幸いにして乗員4名の男女に重傷者はいないもようである。(新車車両の2台の総価格は1530万円だそうである。)

一方、無謀な逃走を試み失敗した男は意識不明の重体、御殿山総合病院に緊急搬送され現在集中治療室で手当てを受けているもよう。容態は穏やかではないと思われる。

午前1時7分(オートバイ事故の25分前)
目黒通り目黒駅東側のコンビニエンスストアで車どうしのトラブルに対応していた警察車両および警察官のもとに外国人が駆け込んで来て発砲による怪我人がいるとの通報を受けた。
2台の警察車両がこの外国人男性を乗せ細い路地を抜けすぐ近くの現場に急行。コロンビア大使館裏、上大崎三丁目28号メゾンデラヴィル入口前で応急手当てを受けていた女性を発見。同時刻には110番通報も受けている。
まもなく消防署救急隊も到着。現場付近一帯に緊急配備が敷かれた。

通報は応急手当てを行っていた同マンション住民の元医師によるものであった。110番通報はこの医師からのものであった。
女性は直ちに高輪台保険中央病院に緊急搬送されたが、救急隊員によれば患者は二発の銃弾を受け重傷ではあるものの適切な止血等応急手当てにより命には別状ないとの事。二発の内一発は右下腕を貫通しているようだが右側腹部に受けたものはまだ体内に留まっている可能性が高い、早い治療が必要だった、と語っている。


平成18年4月29日

午前9時
(目黒北警察署記者発表)
本日未明、午前一時ごろ、目黒区上大崎三丁目メゾンデラヴィル前において、帰宅した同所居住博物館学芸員の窪寺道子さんが何者かに銃を撃たれ重傷を負いました。一緒に帰宅したフランス国籍の婚約者コロンビア大使館参事官パトリック・セール氏は無事でした。現在、高輪台保険中央病院で治療が続いております。
パトリック・セール氏によりますと、二人でJR上野から最終電車で目黒駅に着き、コンビニで買い物を済ませてから自宅マンションに戻って来た時、後方からつけて来たサラリーマン風のスーツ姿の男に声を掛けられ、振り向いた際にいきなり撃たれた、というものです。男はニット帽のようなものを目深に被り4、5メートル先から黒っぽいリュックのようなものの中からいきなり発砲したとの事です。他にも複数の目撃証言があります。狙撃者はこの大胆な犯行の後目黒駅方向に立ち去った、という事であります。近隣からは発砲音があったとの通報が無くおそらく犯人の拳銃には消音装置が付けられていたものと思われます。
事件現場の遺留品等の捜索には早朝より当たりましたが現在まで貫通した銃弾および狙撃者が発砲したと思われる付近に残留薬莢等の発見はありません。引き続き周辺の聞き込み捜査とこれら遺留品の捜索を続けております。なお、昨年末開設したインターネット交番の効果などもあり一般市民の皆様からの情報も多く警視庁内一般情報管理センター、通称PICと共有し現在個々に分析中です。
また同事件の緊急配備中、別の事案において検問中に警備を突破し、五反田大橋交差点事故により負傷した男性についてはこの男性の着衣等の現認により当該事件の有力な容疑者として現在身元特定および遺留品の鑑識調査の結果判明を待機しているところでございます。これについても有力な情報を数多くいただいております。

平成18年5月1日
午前10時頃
(目黒北署PICに画像と共に届いた通報)
目黒北署 御中
もっと早くお知らせすべきでした。すみません。
我々二名は、西五反田の会社倉庫の出荷作業が一段落したのでいつものように目黒線の下で一服しておりました。深夜1時頃でした。サイレンが沢山聞こえましたので火の不始末が無い事、我々担当室内の事ですが、気になりまして一応二人で互いに確認しあいました。その後サイレン音が大きくなって赤い点滅が近付いているなと回りを見渡しました。すると、バイクのエンジンのキック音が高架の反対側から聞こえました。バイクはこちら側にすっ飛んで来ました。亀の甲橋で急停車、欄干から黒いビニール袋のゴミを川に投げ捨てたように見えました。ゴミは向かい側に浮かんだ木の枝みたいな物に引っかかったように見えました。それから、かなりのスピードで、荒っぽい運転で我々の前を、一方通行なのに構わず逆走して行ったんです。黒いスーツでした。ネクタイはしてません。ヘルメットで顔は見えませんでした。直ぐその後をパトカーが追いかけていきましたから、二人は一瞬、暴走族が捕まるぞ、ザマミロ、一通違反が見つかったぞ、って拍手してしまいました。昨晩のニュースで事件を始めて知りまして、連絡しました。遅くなってスミマセン。
東日本印刷西五反田センター
配送第三部 山崎隆史

午後11時20分
(御殿山総合病院ICU外科担当執刀医コメント)
負傷者、氏名不詳、男性、年齢二十代。頭部陥没骨折で脳挫傷を起こしておりまた脊椎に重篤な損傷があります。現在この治療に専念しておりますが、意識回復の見込みはまだ見えません。左脚部、右上腕部の複雑骨折については一応の処置は終了しております。
午後11時30分
(高輪台保険中央病院事務長コメント)
患者さんの容態は非常に安定しております。手術後の炎症発現等も抑えられ患者さん自身の痛みも小さいものになっております。誠に気丈夫な患者さんで医師らも大変驚いております。後遺症の恐れもなくすでに患者さんは退院の日取りを急ぐように求めておられます。何より、だと思います。
なお摘出いたしました凶器の銃弾は昨日警視庁鑑識調査に移送を済ませております。

(インターネット「事件ファイル速報」から)

午後1時頃
品川区西五反田、目黒川東急目黒線高架下河川において、目撃証言に基づき亀の甲橋を中心に大掛かりな捜索が行われた。
亀の甲橋の隣、市場橋付近荏原調整池取水口対岸の階段から数十名の捜査員らが降り三隻の台船に乗り移った。鑑識課所属ダイバー、民間企業ダイバー、河川局職員らも乗り込んだ。作業には品川区の潜水企業から多数の水中磁気探査機も持ち込まれた。
やがて三隻の台船がゆっくりと亀の甲橋辺りに到着すると、まず複数の目撃情報から推定した遺留品を模した白のリュックサック(凶器の拳銃をも想定し)が釣り糸に結ばれて橋の欄干から投げ込まれた。白のリュックサックはこの時間においては流される事も無く水深2メートル前後の川底にぼんやり沈んでいった。一旦これを吊し上げた後二度ほど異なる袋物で中身を変えて実験が繰り返された。
遺棄同時の潮流はまだ弱い順流、ただ夕方満潮時の逆流等も考慮し、同地点から上流20メートル下流50メートルの範囲に絞り捜索の開始が伝えられた。
すでに川縁の道路遊歩道には大勢の見物人で溢れており周辺交通整理に沢山の警察官が配置されていた。三週間前の花見客の人出をも凌駕する賑わいであった。
目黒川の太鼓橋下流から天王洲までの河川区間は頻繁な浚渫工事がなされており川底の大型廃棄物を含め大量の汚泥が回収されている。ただ依然として硫化物等の沈殿による水質汚濁は解消されてはいない。その為の異臭苦情も未だ多い。遺留品捜査に関しても浅い水深にもかかわらずダイバーたちの視界はとても悪いに違いない。
作業は汚泥を掻き回さないよう慎重に続けられた。台船の上には次々とゴミが引き上げられ、台船上の捜査員たちがそれを丁寧に解きほぐして確認し都度報告を発しているようだった。
開始から約3時間が経過し始めた時、中央の台船が急に慌ただしくなった。その数分後、一隻のボートが横付けされ捜査と鑑識の上級職員らしい捜査員数名が乗り移った。

午後4時15分
凶器拳銃も入った遺留品のリュックサックが発見されたようだ。捜査員たちが一斉に拳を高く突き上げるとそれに呼応して見物客からも大きな歓声と拍手が巻き起こった。亀の甲橋から下流わずか15メートルほど、最初捜査員たちが乗り込んだ階段にほぼ近い市場橋の真下であった。
すでに満潮となり川の流れははっきりとした逆流となっていた。川縁の赤い桜の残骸も流れ出していた。

午後6時
(目黒北署緊急記者会見)
えー、本日午後一時より目撃情報に基づき目黒川亀の甲橋下河川底を徹底捜索した所、午後4時頃、市場橋下付近川底から本事件の狙撃犯の物と思われる遺留品を発見いたしました。ご協力いただきました東京都河川局、および株式会社東京潜水工業様に感謝申し上げます。
回収しました黒のリュックサック内部にありました物、①小型自動拳銃一丁②犯人が被っていたと思われる黒ニット帽子③衝撃吸収特殊クッションおよび内部に付着していた打ち殻薬莢2個④犯人の物と思われる免許証の入った財布⑤犯人が着用していたと思われる縞模様ネクタイ⑥目黒区市街地図、などであります。②のニット帽および③のネクタイにつきましては複数の目撃情報に符合する物であります。①の小型自動拳銃は黒メタル装丁25口径コルトM1908であります。すでに入手の経緯については捜査に着手しております。また被害者から摘出された弾丸、穴の開いたリュックサック等との関連ついては科学的な精査照合が必要でありますので鑑識結果が待たれるところであります。
御殿山総合病院にて治療中の容疑者、依然として意識不明でありますが、この男性の爪からは微量の硝煙反応、同じく着衣のワイシャツ右袖口部分からも微量の硝煙反応および発射残渣を確認しております。運転し大破しナンバープレートが偽装された750CC二輪車はこの車両登録等から所有者の特定確認を急いでおります。所持しておりました携帯電話でございますが、事故による損傷もあり只今復元解析を急いでいるところでございます。
これらの事から概ねこの容疑者を傷害事件の犯人と我々捜査本部は考えておりますが、遺留品④の免許証などの検証等が終わるまでこの者の氏名公表等は差し控えさせていただきたい、と思います

平成18年5月3日
(日亜新聞朝刊記事)
4月29日未明、目黒区コロンビア大使館付近の自宅マンション前で起きた殺人未遂事件の犯人は福岡市生まれで元暴力団構成員柴山俊25歳と判りました。柴山は昨年の1月、福岡市から上京、以来渋谷区内の友人のアパートに身を寄せていたそうです。この友人の話によれば1年ほど前から港区内のクラブでアルバイトを始めその頃から急に身なりが良くなったという事です。目黒北署はこの友人宅の家宅捜索を行い勤務先からも連休以降詳しく事情を聴く予定です。
使用されたと思われる25口径コルト自動拳銃は入手先の捜査に併せ、昨年3月に起きた目黒区内の二名死亡事件に絡み未だ行方のわからない同型拳銃との関連性についても捜査を進めて行く方針です。
被害者および被害者婚約者の話ではこの柴山という男に全く心当たりがないという事です。

平成18年5月6日

午前10時頃
(御殿山中央病院外科医師談話)
患者さんの容態は相変わらずとても芳しくありません。血圧も上がり心拍数も正常になりましたが、依然と意識レベルは低位です。腰部脊椎の損傷によって下肢の機能回復はかなり絶望的です。
(病院ICU前、シキテンをしていた目黒北署巡査談話)
先ほど、治療中容疑者の見舞いに親族の方が見えました。察庁の上の方といらっしゃって本署にも確認取りました。容疑者の実兄の方は驚きました。福岡県警の警部補でした。

(御殿山中央病院事務員談話)
お見舞いに見えたご実家ご長男、お名刺頂戴しております。福岡県警自動車警ら隊・警部補、柴山聡様、ご同伴者のご年配の方は東京都公安委員、鈴木英二様、でございます。

(目黒北署幹部談話)
少しというかかなり驚きましたよ、容疑者の実兄が現役の、でしょ。おまけにご紹介が鈴木先生ですから。お通しできないわけがありません。
(二階病棟担当看護士談話)
ずーっと無言で患者さんを見据えていらっしゃいました。ご心境は私たちにも伝わり伝わりますよ。複雑だと思いますわ。お二人の落差、隔たり。親御さんだって大変だと思いますよ。ウチの親類にも同じような辛い事続いてましたから。


平成18年5月8日
(城南記者クラブ詳報)

午後9時47分、港区西麻布三丁目三十三番、アカシアビル二階メンバーズクラブ「デュオラング」に捜索令状を示した警視庁西麻布署の十数名がなだれ込んだ。東京地方裁判所の発布した令状は「捜索差押許可状」であった。
風俗営業法においては従業員の名簿を規定に従って備えておかなければならずまた未成年者の従事を禁止している。これに違反したとされるもの。これにより店の書類および備品を多数押収した。
また、店内にいた従業員一名を同法違反の逮捕令状によって逮捕し、男子従業員二名および女子従業員、内二名は外国国籍、計五名に任意同行を求め、未成年のアルバイト女子大学生および女子高校生四名を補導した。
だが、同時に脅迫罪の逮捕令状をも示し他二カ所の捜索も行ったが直前に察知逃亡されこの執行は空振りとなった。この店のオーナー小宮山博史二十八歳の逮捕である。


平成18年5月9日

午前9時40分
(目黒北署捜査本部発表)
昨日午後九時五十分、港区西麻布メンバーズクラブ「デュオラング」に対し風営法違反容疑で家宅捜索を行いました。従業員一名を逮捕した他、未成年のアルバイト女子大学生および女子高校生四名を補導いたしました。
また、経営者小宮山博史二十八歳を脅迫の罪で逮捕令状により逮捕を試みましたが、執行に失敗いたしました。本日九時、同人を全国に指名手配いたしました。容疑者は今月目黒北署管内で起きました殺人未遂事件の重要参考人でもあります。

(西麻布警察署発表)
御殿山中央病院に入院中の目黒区の殺人未遂事件の狙撃犯柴山俊の犯行時所持していた携帯電話の解析から事件直前まで頻繁に通話していた電話番号から割り出しと他通話者からの事情聴取の結果、港区西麻布クラブ経営者小宮山博史28歳を重要参考人として別件の脅迫罪により全国に指名手配いたしました。同じく同携帯電話、直前に着信のあったメール数件については発信人を特定しすでに当該内容に関し事情聴取を完了しております。
また、被害者の体内に残留されました弾丸の旋条痕は鑑定の結果先日目黒川において回収されました25口径の自動拳銃のものと一致、当該事件の凶器と断定いたしました。
当該拳銃でございますが、祐天寺二名死亡事件に関連しコルト拳銃等を密輸入し譲渡した罪で懲役刑が確定し現在執行猶予中の男性に確認したところ自分が分解し密輸入した物とは異なるという証言を得た事および弾倉内に遺留していた銃弾2発のメーカー品種の異なる事、などから祐天寺事件で行方不明とされる拳銃と同一と断定するには至りませんでした。
なお本事件の凶器となった拳銃の刻印番号などをもとに、入手先および出自について引き続き捜査しております。

平成18年5月10日

(インターネットの掲示板情報スレッド「二枚舌」、クラブ、デュオラングの掲示板呼称)


当店は会員制ですのでイチゲンさんはオコトワリしてますの。どちらの国の方ですか?


西麻布の二枚舌には前からソートーワルの帰国子女の溜まり場だったョ。外国のオッサンたちがケッコー来てた。若いコ目当てダロ。ブスもいたけどランキングは中の上。極みはみんなツーツーラロレロだぞ。

12
私のトモダチ、一階の飲食。店閉めるとき、よくオネーチャンがロスケにぶるさがって出て行ったってさ。真夜中何しに行くんダベな。

30
麻布マッポ御一同様の見回りは見た。まあこの外人街では当たり前の光景だが。
33
←30 時々、手入れらしい私服も来てたな。階段まる見えだから。

47
西麻布三丁目パーキングのアーマーゲのターボですが、コミヤマンはあの有名な渋谷宮坂オートで買いました。ローンが組めず、キャッシュで支払いました。当方、格安下取りいたします。

59
←47 ハイハイ、こちらケーサツ、キチョーな情報ありがとうございます

71
一階ドヒマ飲食情報。柴山俊のような田舎モンは見たこと無いヨーです。一番マブイ女は最近ずーっと見てませんら、シーです。モデル系高級品はよくコミヤマンと階段あたりでもめてましたソーです。視線釘付け女の一人でした、らし、イーす。

82
←71 二枚舌元勤務のサッチャーちゃんが語っていたところによれば、このベッピンさんは源氏名みゆきさんかもしれません。一年前ぐらい学期末試験の結果はずーっとトップでした。生徒別売上は学長コミヤマンから毎週メールで配信されました。みゆきさんは去年夏に学長とガチガチ対立して学園を去って転校したみたいでーす。

90
←82 ハイハイ、こちらケーサツ、またまたキチョーな学園情報ありがとうございます

95
コミヤマンくん、前職は新宿フーゾク経営、前々職は池袋フーゾク共同経営、前々前職は博多暴走業

またまた人気の当番組、新スレ立てます。

平成18年5月11日

午前8時30分
(御殿山中央病院担当医発表)
本日未明、集中治療を継続しておりました柴山俊ですが、午前2時11分死亡を確認いたしました。急性多臓器不全によるものです。目黒北署捜査本部と相談の後、遺体の措置、司法解剖の必要性、遺体の引取先、等々を決定いたします。遺族への通知は終了しており遺族が只今霊安室にて遺体との面会をしておるところでございます。 

午前9時30分
(目黒北署捜査本部発表)
病院担当医発表がありましたように、本日午前2時11分、目黒北署管内殺人未遂事件の容疑者柴山俊は多臓器不全により死去いたしました。これにより本事件は被疑者死亡のまま書類送検の手続きに入りますが事件全容解明に向け捜査本部設置のまま継続して捜査にあたり重要参考人小宮山博史の行方を追っております。
なお柴山俊の遺体につきましては死因が確定しておりますので病理解剖は行いません。 

午後12時
(KBSお昼のニュース)
目黒区マンション前殺人未遂事件犯人柴山俊は今日未明収容先病院で死亡が確認されました。被疑者死亡のまま事件は書類送検となります。またこの事件の重要参考人として全国指名手配中のクラブ経営者小宮山博史の行方は現在も掴めておりません。詳しい報道は当チャンネル夕方五時半からの東京事件簿最前線をごらんください。 

午後5時30分
(KBSテレビ番組、事件簿最前線)
こんばんは。本日はスタジオに、目黒区マンション前殺人未遂事件を発生当初から取材してまいりました石垣・福島両記者、コメンテイター桂鶴箱師匠、そして元捜査一課刑事で作家の平山精一氏にもお越しいただき事件の解析をすすめて行きたいと思います。
まず、石垣記者。

石垣です。
事件は4月29日未明、JR目黒駅近くコロンビア大使館そばのマンション入口で起きました。地図で示しております。
このあたりで被害に遭われた科学博物館学芸員のKさんと婚約者コロンビア大使館参事官S氏が終電車で目黒駅を着き、このコンビニで買い物して、この道を通り、このあたり、ここで後から付けて来たと思われる黒スーツに縞ネクタイのサラリーマン風の男に声を掛けられます。「○○さんですか」と声をかけられます。二人が振り向いた瞬間、この男が黒いリュックサックを前に突き出し二発の銃弾を発射しました。ちょうどこのあたり、車止めのコーンが置かれていたあたりからです。一発目の銃弾はKさんの左腕を貫通し二発目が腹部、このあたり、このあたり骨盤に留まったようです。
S氏が倒れたKさんを呼びかけているのを、ちょうどこのマンション二階の部屋で気付いた元医師の方が下りてこられ、ご自身の衣類やS氏の持ち物で応急の止血処理をされました。S氏は日本語が不慣れで携帯の緊急通報もできませんでしたから、元医師の方がそれを借りて止血の目処を付けた後、119番通報されたわけです。S氏はKさんに言われパトカーのいたコンビニまで走って通報しに行ったそうです。その時が午前1時7分ですから撃たれたのが1時2、3分頃となります。この応急処置のおかげで出血量が抑えられ重篤な症状に至らなかったと搬送先の医師が語っておられます。
その後、目撃された通行人、こことこことここ、三名の方がいらしたわけですが、その方々によれば、この路地を抜け、こちらの方向へ走って逃げていったそうです。みなさん唖然とされ身動きができなかったそうです。犯人はニット帽を目深にかぶっていて人相はよくわからなかったようです。右手にリュックを持って逃げていったそうです。

その後、目黒通り裏の飲食店従業員の方のお話で、捜査本部にも伝わった目撃証言ですが、それによりますと、このあたり、近隣に住む方しか利用しない道。道路も狭く乗用車などは駐車できない場所。このあたりのコロンビア大使館関係の建物脇の石垣に黒いオートバイが停められていて、ちょうどその時刻に容疑者と思われるリュックを背負ったサラリーマン風のスーツの男が南に発進して行った、と詳しく証言されていました。その約10分後ぐらいにパトカーのサイレンを聞いたと言っていますからほぼ犯人の逃走目撃証言に間違いは無い、と当初思われました。
別の地図、出してもらえますか。
それが犯人だったとするとここ、ここからおそらくこの道、山手線に沿った道を五反田駅方向に逃走、この高速目黒線高架下を右折、戸越方面に向かいます。そして、このあたり、大崎郵便局で検問中の警ら隊に停止を求められ急にUターンして逃走劇が始まったわけです。
しかし、その時刻に合わせますとどうも時間的にややつながりません。逃走を急ぐ犯人はわざわざどこかで時間をつぶさなければならないからです。

そんなおりに視聴者の方から有力な情報を当テレビ局に提供いただきました。
ちょっとこの方からの電話を聴いてください。
「ほんまに大事な事だったら、申し訳ありません。●●が深夜の外出がばれたら嫌だってずーっと黙っていたんです。でもさっきお友達のご家族の方から連絡もらってもうびっくりしました。もし、あの犯人が使ったオートバイだったらなんて」
「●●が写メール撮ってましたからお差し支えなければそちらに●●から送らせますからアドレス教えてくだはりません?地図も送らせます。」
「警察ですか?とんでもありまへん、いい加減やったらしょうもない、です」
というお話で写メールの写真がこちら。
事故で大破した車両がこちら。

同じです。拡大していただけますか。はい、この部分と、この剥がれた部分、同じです。
少年は人気コラボ「首都高トライアルXⅢファイナル」の主人公命日のこの日、首都高速目黒線あたりの騒ぎを見物に出た帰り道、ナンバーブレートにシールが貼られているおかしなバイク、階段上のバイクに気付いて撮影したようです。撮影した時間は午後11時50分頃でエンジン部はまだ暖かかったという事です。
で、バイクが停められていたのが、この位置、東五反田五丁目。事件現場からは直線距離で約500メートルほどですが、犯人が逃げて行った方向は迂回路になります、走って約7分、怪しまれない程度の早足で約10分近く、道を回って発進、目黒線高架下に出て信号を守りながら普通に南下する、検問中の場所の到着時刻が、これで、このケースでほぼ符合するわけです。
それから逃走バイクはパトカー数台の追跡から逃れながら、ここから、この一方通行を逆走し左折、それからこの、東急目黒線の下で一旦バイクを停め、また発進した際に、ここ、目黒川の亀の甲橋から凶器拳銃などが入ったリュック、焦っていたからでしょうか、何故か身に着けていた免許証入り財布なども入れ、川に投げ捨て、再び、パトカーに追跡を受け、フルスピードでこの一方通行を逆走、約600メートルを途中このあたりで、幅一杯に停めたパトカーの脇の歩道をすり抜けた後、第二京浜交差点の赤信号を無視、左から来た二台の乗用車と衝突し更に歩行者用意信号機にぶつかって大破しました。これが事故現場直後の映像です。事故の凄まじさがおわかりになると思いますが、犯人以外、乗用車乗員の怪我が軽症であった事、歩行者等が事故に巻き込まれる事が無かった事が救いだったと思われます。

はい石垣記者、ありがとうございました。それにしても一体犯人は何の目的でKさんを襲ったのでしょうか、福島記者、お願いします。

はい、福島です。こんばんは。
まず被害者の国立科学博物館学芸員のKさんですが、考古学の研究者です。加害者柴山俊とは一面識もなく、なぜ被害に遭ったのかはまったく謎でした。婚約者のコロンビア大使館一等書記官S氏も同様です。
今朝になってその謎に一歩近付く事実がわかってきました。
被害にあったKさんがこのマンションに移り住んだのが先々月、3月月末。以前の居住者はロシア通商代表部に勤務する男性K氏。この男性と昨年末から一緒に暮らしていたのが元クラブコンパニオンのRさん。RさんはK氏が本国への臨時帰国に合わせ転居。その際に部屋に残したRさんの沢山の衣類をKさんが譲り受けました。二人の体型がほぼ5号サイズで共通してもいたからです。Kさんが被害にあったこの日もRさんから譲り受けた明るいピンク色のコートを着て出かけました。

先週、そのRさんとのインタビューが取れましたのでごらんください。

「デュオラングの小宮山博史さんはご存じですよね」
「はい、」
「●●さんとはどんなご関係ですか」
「いちおう元カレです、遊びの」
「こちらのこの男性は会った事は、少し古い写真ですから、ヘアスタイルが違うかもしれません、柴山という男性」
「無い、無い」
「デュオラングにはどれぐらいの期間おつとめを」
「えーと、去年、おととしの春休みぐらいから去年の夏、かな」
「今、おいくつ」
「二十一、もういい年、ですよね、ハハ」
「ということは、二年前は未成年、学生さん」
「いちおうは短大、夏休み前除籍、しかたない」
「なんで」
「行ってない、金払わない、で」
「通学通勤はご両親のおうち、から」
「なわけない、なわけない」
「独り、で、どこに」
「御苑のマンション」
「賃貸」
「いちおう、持ち家」
「学生さんにしちゃ金持ちだ」
「なわけない、なわけない、父親が全部。母親と競ってたからその頃、大学通うからって甘えたらスンナリ」
「お母さんは反対したでしょう」
「なわけない、なわけない、母親もあれこれあるし」
「競ってたとかあれこれとかどんな事」
「成田離婚」
「え」
「父親がアエロフロート、母親が日系ロシア、共稼ぎ別居、皆さん自分の事しか頭にない、話はかみあわなーい、話すこともなーい、だから会わないが一番にあーう」
「あなたはそれが楽しい」
「ま、そんなとこ、友だちとワイワイするのが一番」
「お母さんがロシアのハーフ、だからクォーター、かわいいのはだからか」
「なわけない、なわけない」
「お店の子たちみんなロシア語とか話せるってほんと」
「へたな子もいるけどいちおー、うまい子はだいたい長続きしない、で、また新しい子が来る、だからお客さんも楽しみでまた来る」
「お仕事はなんですかってロシア語で言ってみて」
「プロフェッシア カコヴァ ヴァーシァ」
「かっこいいね」
「フツーフツー」
「お店、女の子は何人ぐらい」
「早番遅番全部でいつも十人くらい」
「女の子も良くあつまるんだ、口コミかな」
「それもあるけどだいたい女の子は週刊誌の広告で釣られて来ちゃう、学べるお仕事とか言っちゃって、ハハ、何学ぶんだっちゅーの」
「お客さんは」
「ミニコミとか広告出してる、ロシア語の、かわいい子写真付き、半分借り物、ガセだけど」
「●●さんも載ってた」
「なわけない」
「お客さんみなロシアの方」
「ばっかじゃなくていろいろ、アフリカや砂漠からも時々は来る」
「砂漠ってアラブのかた」
「そうらしい、そん時はエーゴとかフランス語の子がつく、店長がお客さん見てすすめる」
「お店、今どうなったか知ってる」
「友だちから聞いた。ガサ入って店クローズ、いい子はすぐスカウト、友だちリクルート、あと並みの子は失業、かな」
「ところで、新宿淀橋警察に相談してるよね、おととしかな去年かな」
「去年」
「どんな事」
「春前ごろから急にあいつ、だんだんあれだこれだこーしろあーしろってウザくなったの。それまでは私の期末いつも良くて、あいつ機嫌よくてペイも良かったけど、ころっとかわって、大逆転」
「あれこれってたとえば」
「一番いやだったのはお客さんを他の女の子に換えろって、ヤダ、お客さんは気にいってるから私についてる」
「他は」
「他の女の子はみんな俺の指示通りに動いてる、だからペイしてるって。●●は自分のやり方で店にいっぱい金落としてる、それじゃダメなのって言うと、とにかく言う通りにしろのもうテンバリ」
「なぜだろうね」
「わけ、わかんない。妬いてんだとおもって、いやだから店休みだした、かっこいい男と思ってたけど、キレたら目が変わっちゃう奴、声、うなる感じ、すごみにらみハンパない。それから嫌がらせエスカレーター」
「どんな」
「五月頃は家の前で深夜張り込み、窓の真下にデッカい車でワサワザチャカチャカするから目立つ目立つ、だからいつも変装したり、非常口から入ったり。ある日見つかってさ、追いかけられて部屋に入られて、契約金返せとか怒鳴るし、ペイに入ってたから割を返せとか、ワメーて、腰蹴られたりして、香水ぶちまけたり、部屋にあったブランド品なんか、これ俺んだとか言って持ってったり、だからあくる日友だちとケーサツにいった。」
「どんな対応、警察の」
「クラブの子のゴタコさんなんて聞き飽きてんのよね、さらさら紙に聴いて繰り返してっからカキコするだけ、あとは被害届けだすかーとか言って、医者行ったかーとか言って、そしたらソーサしてやるぞーみたいなァ、なわけない、なわけない、やる気もないかんじい」
「いちおー届けたんだ」
「あいつに言ってくれたら、少しはおさまるかなって、でも甘かった」
「それからは」
「でんわ、無言でんわ、それから張り込みやさん、サラ金チラシ貼り、歩いてると誰かがわざとぶつかり酒ビン落とし、もう郵便受けなんかキモくて触れない」
「ケーサツ届けた」
「なわけない、なわけない、あきらめエスカレーター、引っ越した、二回も、カレのとこ、●●●やさしいし」
「目黒」
「ソー、秋に、静かなとこだった目黒は、その前品川、事務所みたいなへんてこ」
「3月にまた引っ越した」
「カレ、帰ったの、モスクワ」
「また戻る、日本に」
「なわけない」
「今、誰とどこで」
「今カレ、あまり詳しく言えない、言っちゃうとマズい事あるし」
「ところで目黒に洋服残した」
「カレには捨てていいと言っといた、型落ちばっか」
「明るいピンクのスプリングコートなんかあった」
「あった、あった、ウエストウッド、昔のお気に入りだった」
「それを着て外出したかたが、マンション帰りついて、で、拳銃撃たれちゃった、あなたの身代わりになっちゃったって、そーは思わない」
「えー、ウソーッ、マジー」
「まじ、ですよ」
「チョーかわいそさ」
「小宮山博史が仕組んだ可能性はありそう」
「ぜってーありえーる、ありえーる、でー、撃たれた人って、死んじゃったの」
「幸い助かったよ」
「あー良かったねー」
「小宮山博史に関して変わった話って、何かある」
「うーん、けっこーヤバい事やってたやってた、裏でもやってた、現金主義だとか言っちゃっていつも財布の厚み見せびらかしちゃって。それから、でも俺はサツに顔がきく、でしょ、あと俺は捕まった事がない捕まらない、でしょ、ヤクはやらねーがクスリは流せる、でしょそれから、好きなだけパスポートが持てるとか、変なじまんばなしばっか、あと、スパイがスッパイ、スパイがシッパイとかーわけわかんないダジャレレンパツ、でスタ、ハハ」
「他には」
「あいつ、売上なんかゼッコーチョーの日なんか、こうやっちゃって、満点の微笑みっちゅーの、目尻下げて、頭揺らして、クルクル」
「ああ、こうやっちゃって、指クルクルトンボ取りみたいにするんだ」
「えーっ、トンボ取りー、何それーっ」
「わかんないよなー、トンボ捕まえるポーズ」
「知るわけないない」
「機嫌良くて、こんな感じか、指先二本立ててくるくる、それで頭もクルクル」
「それそれ、それーっ、そんな感じーっ! パテックなんかも回しちゃってー。だけど、メインが休んで、売上落ち込んだ日、続いちゃったら、めっちゃタイヘーン、ダイヘンシーン」
「どうなっちゃうんだろか」
「真逆マジ切れ、目が座っちゃう。パンチミサイル飛びそー。落差がスカイダイビング。だから女の子びびって辞めちゃったりする。辞めれない子にとったらカネハイルヒットラーだけど」

あっけらかんのインタビューでした。


ここで明らかに語られたように、科学博物館学芸員のKさんはこの女性に誤認されて被害にあった可能性が浮上したわけです。
狙撃犯柴山俊は小宮山博史とどんな関係にあったのか、ここでおさらいをしてみようと思います。
ボード、用意しました。

小宮山博史、昭和53年福岡市博多区生まれ、一人っ子として育てられます。柴山俊、昭和56年福岡市東区生まれ、公務員の家庭で姉兄と共に育てられます。二人は平成9年頃福岡市内の同じ暴走族グループ「乱亡」に属していました。小宮山がいわゆるカシラ、リーダー、柴山がいわゆるケツモチ、最後部で威嚇ポーズを担っていました。こちらが当時の写真、これが小宮山、後列これが柴山。当時、小宮山19歳柴山16歳。
その後小宮山は広域暴力団錦会の下部組織林部組に迎えられますが、この年九州暴力団三系列が三つ巴となって争ったいわゆる福岡御神木抗争のあおりで解散を余儀無くされ小宮山は名古屋に行き、初めて水商売の世界に入ります。
ここで得た知恵と稼いだ資金を持って上京、豊島区内で知人と風俗店を始めます。その後に新宿区内にも出店し拡大を図りますが、これが平成13年頃の店の外観です、この頃池袋西警察署の摘発を受け廃業となります。この時知人は逮捕起訴、しかし小宮山はその逮捕からも免れます。
そして平成15年4月に現在の店、デュオラングを開業しました。
一方、柴山俊は暴走行為で何度か補導された後平成12年頃から福岡市内の運送取次店に勤務を始めています。働きながら大好きだった漫画のローカル同人誌などの製作にも参加しています。これが当時の作品、暴走族をモチーフにしている読み切りコミックの一コマです。しかし平成15年の冬に起こした交通事故によりこの勤務先から解雇され、その後福岡市内の実家でしばらくニート生活が続きます。地元友人らの話によりますと、その頃も作画活動が続けられていたようだ、という事です。そして平成17年、去年2月、渋谷区内のかっての漫画同人誌仲間を頼って上京し、4月には小宮山博史を訪ねデュオラングのアルバイトを始めます。福岡市での運送経験を買われ西麻布の店と約100メートル離れた駐車場までの区間をおもに来客車の移送や、同僚と共にこれらの車両の運転代行のような仕事を行っていたようです。
自分の思い通りに素直に従うこの柴山を小宮山は舎弟のように扱い、よく小遣いや自分の高級な衣服を与えていたそうです。
その後柴山は他の従業員らと共謀し雇用上のトラブルなどに際して女子従業員らを脅迫するなどにあたっては一定の役割を果たしたとされております。小宮山は店内での不法行為が、いわゆるチクられる、通報される事などに相当の警戒心を抱いていた、という証言もあります。現在、その詳細についてはまだわかりませんが、いずれ公判等で明らかになると思います。
先ほどのインタビューのかたへの脅迫行為にも荷担していたのではないかとも思われます。
さて、事件当日、犯行に至るまで、どんな手順を踏んだのでしょう。

再現しましたのは当報道部特報取材班が独自に掴んだ情報を点とし、時間経過の線、でつないだあくまで推理に過ぎません。ですから捜査本部の発表ではありません。それをあらかじめおことわりしておきます。
再現ドラマこをご覧ください。

4月29日
午後0時頃
金曜日の閉店前、柴山俊が西麻布の店を出ます、西麻布パーキングで自分のオートバイのシートを外して目黒に向かいます。ナンバープレートの偽装はここで行います。

4月29日
同じ頃、午前0時
小宮山の協力者A子から店の従業員で知り合いのBに渋谷のクラブCの同僚Rさんの閉店前の動向が逐一メールで入ります。
A子はBからの報酬と引き換えにRさんの退勤をBに報告するように命じられています。またA子は4月に入店したばかり、Rさんに出会いBに在籍と登録住所を教えました。しかし、すでにRさんが代々木に転居し別の男性と暮らしている事を知りません。Rさんは男性の秘密を守るため他言してなかったのです。Rさんの所在を知った小宮山はRさんの襲撃計画を立てました。殺害の強い動機があったかもしれません。
この日金曜日、小宮山がRさんの出勤を確かめ、計画実行に着手します。
Bは小宮山の報酬と引き換えにその情報を柴山に直ぐ転送するように命じられます。
柴山は小宮山の計画どおりすでに上大崎周辺の念入りな下調べを始めていました。小宮山から拳銃を渡されてバイクに隠してもいました。偽装シールもお手の物、でした。
A子とBには全ての実行計画は知らされてはいません。ただBにはRさんに対して何らかの仕打ちがあるだろうとの予感はありました。

午前0時30分
A子からBにRさんが店を出たとメールが入ります。着衣、所持品などの様子も伝えられます。Rさん、この日は大好きなピンク色のブルゾン、男性同伴で店を出ます。
Bは柴山に店を出たとメールを入れます。着衣はピンク色のコートである事を伝えらます。JR渋谷駅へ軽い酩酊でも約5分待ち時間を入れて目黒駅には遅くとも1時までには到着します。しかし実際はRさん、渋谷駅でこの男性と別れた後山手線外回りで代々木の居宅へ向かいます。

午前0時
一方、被害に遭った学芸員Kさん、上野駅近くの飲食店で婚約者と食事を済ませた後共にJR上野駅から山手線外回りの最終で目黒駅へ向かいます。

午前0時50分
柴山は今回の計画について何度も小宮山に聞きただします。実行犯柴山には躊躇もあったのでしょう。しかし小宮山は強引に指示通りの実行を命じます。
学芸員Kさんと婚約者SさんはJR目黒駅改札を出ると目黒通り沿いのコンビニに立ち寄ります。ちょうどちょっとした諍いがあってパトカー三台が来て見物客も集まっていました。
柴山はこのあたりで携帯を持ち行き来しながら張り込んでいました。そして視界にピンクのコートの女性とエスコートして来た男性の姿が入ります。劇画好きな柴山は小宮山からすっかり洗脳され暗殺指令のスナイパーにされていたのではないでしょうか。柴山はRさんがまだ店の在籍だった時期、何度か会っています。後部座席に乗せたとき室内ミラーを介して言葉を交わしています。しかし、今そこに別人がいるとはもう考えられません。目の前の人物がRさんだ、と。
二人はやがてコンビニから現れ柴山はその後をつけます。そして路地を曲がります。
柴山は携帯を胸のポケットにしまいリュックを外しそして、中の拳銃を握り安全装置も外します。
更に追ってマンションの入口で呼びかけけました。
「Rさん、ですか」
そして、二人の振り向きざま、二発、発射しました。

はい、これはあくまでも推理です。柴山が犯行に至るまで、こんな事があったのではないか、それを再現ドラマで描いてみました。

福島さん、ありがとうございました。

桂鶴箱師匠、いかがでしょうか、いままでをお聞きになって。

うー、さっきの子じゃないけど、わかんなーい、だね、こりゃ。
なんか劇画の切り貼りみたいでそれぞれに一貫性がまるでないんだね。
多分、実経験の無い犯罪素人がきっと一生懸命練って企てた、まあ、茶番なんだろね。
まず、目標を取り違えちゃった事ね、大失敗はここから。浅草の高座にあがるはずの咄家が新橋演舞場に出ちまった。きっと実行犯も大真面目で取り組んだんだろが真面目すぎて大チョンボ。計画そのものも役割分担もあった、あったけど、穴だらけ、出来が半分、だけならまだしもそれの三乗で、オレの株といっしょ。やらなきゃ良かっただろ、いやー、それでもやっちゃったんだな、こりゃ。
逃げ道もトンマだね、電車がないからバイク、バイクですぐ逃げてりゃ捕まんないけど、まあエラいとこ置いといたんだね。ナンバー偽装かい、余計目立ったね。あと、免許入り財布を鉄砲と一緒に捨てたんだろ、パニクってたにしてもバカだよね、この鉄砲撃ったのは私ですって言ってるようなもんだもの。
実行犯の犯行までの手順ね、解析にあった様な事とは思いますね。が、だね、小宮山って奴の目論見は一体なんだろね。銭金目当てならあんなにはならない、女の子への恨みを膨らましちゃったにしても手がこみすぎる。なんか昔のストーカー殺人てのにダブるんだけどね、失礼だけどこの女の子にそんなに入れ込んだのかね、不思議だね。
実行犯の柴山、俊、だったかな、25歳、そんな殺し屋気取り、小宮山にどういじられてたりアジられたりしたのかね、頭ん中はもうゴルゴサーティーン、そんな気にさせたんだろね。

平山清二さん。

私も師匠に全く同感です。
犯行の指揮は小宮山主導と見てほぼ間違いはないと思います。師匠のご指摘でもありましたように突発的犯罪に特有の単純な一貫性に欠けてみえます。言い換えるともっと別の見えてない側面があって、ただ過度な愛憎が引き起こしただけのものには見えないんですね。
まだ噂の範囲でしかありませんが事件ジャーナリストの方のご指摘の中にはこのデートクラブの裏の目的が旧共産圏国家に対する低級な諜報活動のような事をホステスにさせている、在日外国人の国内動向を探るための情報収集が店の大事な役割になっている、公安機関から金と違法行為の免責を貰っている、というものなんですね。そんな事情を知ってやめた子が沢山いるようですよ。
でもその事は違法行為ではないから訴え出たりはしない、訴える事はまた逆賊みたいな事だと考えてしまうからそうしない。店が困るとすればそんな噂が漏れ出す事、営業の二つの側面に影響が出ますから。小宮山はそうならないようにいつも恫喝を繰り返していたみたいです。強制捜査の際の脅迫容疑の逮捕状も辞めた未成年元従業員に対する脅迫に関するものですから。複数の従業員の話では、他にもかなり荒っぽい事も続けて天狗になっていた小宮山が事件前あたりからかなり混乱していた様子だった、そうですね。
で、小宮山の過度な私憤も加わって見境もなくなったのでしょうか。まるでドラマのようでしょ、にわかには信じがたい、ですよねえ。

しかし、ちょっと、このフリップをご覧いただけますか。

これ、この資料は私が野党国会議員の方からいただいたものです。
こちらは今年4月、ロシア大使館から外務省に届いた抗議の文書、ロシア語の正文。
その後に議員の所属党で衆院外交委員会の質問に上げようとして調査しましたが、その具体的内容に関してロシア大使館からの回答が得られず討議見合わせになったものです。
これを翻訳してもらったものが、こちら。福島さん、読み上げてもらえますか。

はい。

日本国外務省へ、2006年4月8日
ロシア国大使館、ロシア国通商代表部とその所属官吏および職員は日本国において日本国法令を常々守り日本国ロシア国の健全な外交関係ならびに商務の相互信頼の維持に努めている。
先般、それらの職員に対して低俗な手段をもって接触しようとする事象に遭遇している。また、職員の会話を盗聴する意図を有した機器をロシア国の占有する敷地内に持ち込もうともした。
中略

一方、ロシア国に属する官吏および職員は日本国内において自由な私人としての生活が保証されている。昨今はこれらの者に対し低俗な意図を持って私人の金員等を搾取せんと試みた事象もある。

中略。

我が国の主権を犯すこれらの低俗な行為について日本国は注意義務を有す。
ここに、ロシア国政府は日本国に対して抗議する。

在日ロシア国大使 セルゲイ・ドミトリエフ
г
ありがとうございました、福島さん。・
さて、偶然でしょうか、この文書の前の3月、インタビューのRさんの彼氏が本国に帰国している、異例の辞令、滞在わずか一年で帰国している。

私はこの件におおいに関わりがあるんじゃないかと思います。
女性の性的な魅力で相手を懐柔籠絡し情報を搾り取る、いわゆるハニートラップの安物を仕掛けたんじゃないでしょうか。
抜き差しならない関係にして脅迫する手口もあります。国外の事になりますが、おととし国内ニュースを席巻した上海総領事館員自殺事件などは、さすが手慣れた中共諜報のプロの技、などとも揶揄されました。
それと比較するとまさにアマチュアの仕事、日本公安調査のレベルも疑われてしまいます。
日本が注意義務をなんて言っているのは日本をからかっているわけですよ。
しかし、まあ、事実関係、具体的な事などはロシア大使館でも、まして公安各部署、我々の常識ではコメントするとはとても思えませんが。

ありがとうございました。
あるんですねまだ。対共産圏諜報。過去の産物では無いのかもしれません。昨年の祐天寺二名死亡事件に絡み国会質問で公安調査の関与も指摘されておりました。
逃亡中の小宮山博史の逮捕によって全容が解明される事を期待します。  さて次の事件です。

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https://note.com/kotan777/n/nb4e7fa5ce74f

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https://note.com/kotan777/n/n2f3d40418d14

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