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太陽光発電が増えると停電が増える?

最近読んだ「電力系統進化論」という本。
いろいろと考えさせられた一冊。

今、脱炭素等の環境志向もあり、太陽光発電等の自然エネルギーによる発電が増えつつあるけど、これが増えすぎると、日本のあちこちで停電になることが多くなるかもしれない。そんなリスクが潜在していることを、本を読んでいて、気付かされた。


その原因はいくつかあり、
1つ目は、電力網を俯瞰的に管理しているところの不在。

電力は、使用する電力と供給している電力量のバランスが重要。当然のことながら、供給している電力量が、使用する電力量を上回っていないといけない。また、上回る量も多すぎると、それはそれで電気の周波数が狂ったりするので、できるだけ適正な余裕度にする必要がある。

以前の、エリアごとに大手電力会社が管理しているような状況であれば、エリア管内での発電量と消費電力量を把握でき、その管理を行っていた、中央集権型の管理を行っていた。また、当時の電気の流れは、電気消費地から遠く離れた水力発電などを上流とすれば、電気消費地に向かって流れるような基本的には一方向の電気だった。

ところが、電力の自由化が行われ、発電・送電・小売がバラバラの状態となり、さらに太陽光発電による電気が入り込んだりして、供給電力と使用電力のバランスや流れの管理が難しくなっているという。たとえば、管理外で電源脱落(発電施設等の故障)が起きたりすると、需給バランスが崩れ、電力網が落ちてしまう可能性がある。


2つ目は、発電方式の違い。

従来の、火力や水力などはタービンを回して発電している。タービン自身が回転エネルギーを持っていて、仮に電源が脱落しても、電力網が落ちないように、瞬間的な出力増加等を行う「慣性力」を持っている。こういう電源を「同期電源」という。

一方の太陽光発電は、素子による発電しているインバーター電源で、回転エネルギーを持たないため、「慣性力」がない。「非同期電源」ともいう。

「非同期電源」の比率が増えてしまうと、電力網の耐性が減り、電源が脱落すると、連鎖脱落となり、大停電となる可能性があるという。現在、インバーターに擬似慣性力をもたせるような仕組みを研究開発しているという。

上の本では、将来的な次世代管理のあり方を論じているが、果たしてどうなるのだろう。


ふと、電気の創成期には、テスラとエジソンによる、交流と直流の戦いがあったことを思い出す。その当時は、電圧の可変性、長距離での電送もできたりする点がすぐれ、テスラの「交流」が勝利した。

しかし、ひょっとしたら、次世代は「直流」の時代になるのかもしれない。スマホなどの多く電気製品は直流で動いているし、太陽光発電やエネファームなどでできる電気も直流。交流に変えなくとも、発電したその場で、直流として利用する。

エジソンの時代と違って、電気は消費地の近くで作る時代となり、昔のような長距離電送をしない社会づくりが可能なのかもしれない。