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前鋸筋の機能解剖

久しぶりの投稿です.
まつうらです.
個人的にnote書くのは久々です.

今回でSTMマガジン”第14弾”です.(全文無料)
前回は運動療法に関して初の有料noteを隊長のしーごさんが書いてくれました.

今回は,肩を診る上で着目されることが多い”前鋸筋の機能解剖”についておさらいしていこうと思います.

前鋸筋といえば,上方回旋筋として?のイメージが強いかと思いますが,各筋束で特徴が異なります

内容は初学者向けと思いますが,ご拝読頂ければ幸いです.
(5min程度で読み終えると思いますで,通勤のお供にどうぞ笑)

ではまず…

前鋸筋を…
”一つの筋”として捉えますか?
”別々の筋”として捉えますか?

如何でしょうか?
個人的には,両方正解かな?と思っています.
そんな部分を書いていきたいと思います.

1.前鋸筋の立ち位置

肩甲上腕関節においては,インナーマッスルとアウターマッスルという部分で役割があるように,肩甲骨周囲筋にも表層と深層で役割が異なるとも言われています.

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このように前鋸筋はご存知の通り,肩甲骨のフォースカップルに作用するところが一般的です.

僧帽筋群が上部・中部・下部の3Partあるように,前鋸筋も3Partに分かれます.
このように表層と深層で分けると,前鋸筋はアウターマッスル的な立ち位置?になるかもしれませんね!

2.前鋸筋の起始/停止

一般的ですが…

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*左の図は肩甲骨を取ったものです

前鋸筋はこのように肩甲骨の上角〜下角まで広範囲に広がり,肋骨外側面に付着します.

そして冒頭でも話したように前鋸筋は”3part”に分類されます.

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3.前鋸筋上部筋束

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上部筋束に関しては,上記の特徴を有しています.

個人的に上部筋束のポイントとしては,上角周囲を前後にサンドして付着することかなと思っています.
もちろん筋の特徴として筋繊維も短く,筋断面積も大きい形状なので作用としては,強力なのは推測できると思います.
(逆に硬さを作ると弊害も大きいかと…)

上部筋束単体の作用としては,”下方回旋”は主にあると言われていますが,”前傾”作用もあるとも言われています.

上角のアンカー役と書きましたが,これはいわゆる軸としてなり得る筋と解釈していいと思います.

例えば,上方回旋するときは肩鎖関節や胸鎖関節が関節の軸としてはなるわけですが…

筋の制動性(伸長性も含め)がないと,肩鎖関節や胸鎖関節の関節構成体自体に負荷がかかるので,上部の特徴である筋繊維が短く・筋断面積が大きいということはアンカーとして(固定作用や軸として)”上方回旋”をスムーズにする上では必要な筋という理解ができると思います.
*もちろん上部筋束だけで制動しているわけではありません.

4.前鋸筋中部筋束

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中部筋束においては,上記の特徴を有しています.

上部・下部筋束と比較して,筋断面積が薄いといこう事が最も特徴的かと思います.
なので,肩甲骨動態への関与度は低いのかな?と思われますが,内側縁全体に渡って付着するので,関与度は大きいと感じています.

その分,仮に中部筋束の動きが阻害されてしまうと肩甲骨動態の円滑さは低くなる可能性もあると思います.

中部筋束単体の作用としては,”肩甲骨外転”を有しています.

5.前鋸筋下部筋束

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下部筋束に関しては,上記の特徴を有しています.

上部筋束と同様に下角付着部での筋断面積が大きいこと,そして肋骨への付着範囲が広いことがポイントかと思います.

下部筋束単体の作用は,”肩甲骨上方回旋・外転・後傾”を有しています.

上方回旋筋のみの観点としては,下部筋束がとても重要であることは周知の上と思いますが,ここに関してはこの後の筋連結の部分で書きたいと思います.

*下部筋束を促通したい場合は,荷重下よりも非荷重下のエクササイズの方が筋電図的には優れている?との報告もあります.
ただし,Echoでの安静時から収縮時の筋厚差はない.という報告もあります…

6.各筋束の筋連結

ここまで各筋束の特徴を述べましたが,各筋束で筋連結が異なります.

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上部筋束:肩甲挙筋
中部筋束:菱形筋群
下部筋束:大菱形筋・腹斜筋(外腹斜筋)

なので,前鋸筋を賦活させたいという時は上記の筋の状態がどうなのか?を考慮して運動療法を行う必要性があると思います.

仮に,下部筋束を促通したい時に,下角周囲の他動的な制限があったり,肋骨外旋(リブフレア)を呈した状態で,促通を図っても的確な筋活動は促せない可能性があると思います.

7.前鋸筋の支配神経

ここはご存知の…

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はい,長胸神経ですよね.
ただし,各筋束で若干の神経分布が異なります.

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*独立枝とは,主幹を形成する長胸神経にとって無関係な枝・主幹が形成される前の隆起したもので,比較的太い枝と定義されています.

上部筋束は菱形筋を支配する枝から独立した枝で分かれるため,上部筋束は菱形筋,肩甲挙筋とかなり近いのでは?とも報告されています.

Kato K, Sato T (1978) Morphological analysis of the levator scapulae, rhomboideus and serratus anterior. Kaibogaku Zasshi 53:339–356 (in Japanese)

なので,前鋸筋上部筋束は肩甲挙筋と菱形筋との関連性を考慮する必要性が出てきますね.
脱線しますが,両筋の関与する肩甲背神経と上角についてのnoteはこちらを参照下さい.(両方無料です↓↓)

下部筋束に関しては,記したように肋間神経外肋間筋枝の分布も存在します.
これはいわゆる腹斜筋の支配神経です.
なので,このような観点から見ても前鋸筋下部筋束は肩甲骨周囲筋であるとともに,体幹筋群の一部と捉えてもいいかもしれません.

8.前鋸筋の捉え方

冒頭でも書いたように,前鋸筋は一つの筋として捉えるか?個別で考えるか?
という点に関して,上述したものを見ると色々な見え方ができると思います.

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なので,個人的には各筋束と隣接する筋との関係性や協調性を考えることは,肩甲骨運動を捉える上では重要と考えています.

9.まとめ

今回は浅はかながら前鋸筋の機能解剖に関して簡単に纏めました.

・前鋸筋は上部・中部・下部筋束の3Partに分かれる
上部筋束は,肩甲挙筋と筋連結を有し,肩甲骨運動のアンカー役となる
中部筋束は,菱形筋群と筋連結を有し,筋断面積は薄いが,内側縁全体に付着するため菱形筋群との協調した動きを担う
下部筋束は,大菱形筋と腹斜筋と筋連結を有し,上方回旋筋として両筋と協調的な働きが必要となる
・前鋸筋の支配神経は,各筋束で特徴が異なる

*参考文献*

今回は,以上で終わりたいと思います.
最後まで読んで頂いた方々有難うございます.

引き続き,noteはぼちぼちな頻度で書いていきたいと思います.


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