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肩甲骨上角を考える

こんにちは.
まつうらこーたです.
ついにSTMマガジン”第9弾”とついに二桁大手です.
改めて,読んで頂いている皆様に感謝申し上げます.

前回は,”鎖骨から肩を攻める”というnoteを書かせて頂きました.
浅はかですが,鎖骨の重要性が少しでも伝われば幸いです.

今回のテーマは,ズバリ”肩甲骨上角”です.
個人的には,もっと早くに肩甲骨を見るときに抑えておくべきだったと感じる一部位です.

では,なぜ今回”上角”をテーマにしたかと言うと…

1.付着する筋が肩甲骨動態に関与
2.肩甲背神経・肩甲上神経に関与

臨床上,このような観点を持って上角周囲の軟部組織の硬さや可動性が「疼痛・可動域制限」に繋がっていたのではないか?というケースを経験します.

1.肩甲骨上角周囲の筋・滑液包

まず,おさらいですが…

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この2つの筋ですね.
個人的には,肩甲骨周辺を見る際に抑えとくポイントの筋でもあると考えています.

*肩甲挙筋
起始停止:C1〜4横突起(破格の存在あり:長頭C1〜2横突起,短頭C5〜6横突起)〜上角・内側縁上部
作用:肩甲骨挙上,下方回旋
神経支配:肩甲背神経

*前鋸筋上部繊維
起始停止:第1,2肋骨〜上角
作用:肩甲骨下方回旋,前傾
神経支配:長胸神経

次に滑液包ですが…
”胸郭と前鋸筋間””肩甲骨(肩甲下筋)と前鋸筋間”には滑液包が存在すると言われています.

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こういう観点から見ると,肩甲胸郭関節がうまく動かない場合は…
前鋸筋や肩甲下筋の柔軟性低下や滑動性低下,筋出力低下が関与する可能性の一つになるかと思います.

*個人的なポイント
他動的な可動性を引き出すことはもちろん大切ですが,他動的なモビライゼーションだけでなく,前鋸筋肩甲下筋自動介助運動や自動運動(収縮形態も考慮して)を取り入れる事も意識しています.

Twitterでもあげました,前鋸筋の自動運動(評価も兼ねる)です↓↓
自動介助に関しては,側臥位でやる事が多いです.
(これに関しても,撮影出来たらいずれTwitterやnoteに追加出来たらと考えています.)

前鋸筋の運動療法はこちらの記事も参考にしてみてください!

2.肩甲骨動態に関して

肩甲骨動態に関してですが,上記の作用の反対を考えると分かるように…
ここでの制限になるのは,”上方回旋”です.

そりゃそうだろう!
となる方が大半かと思いますが…

上方回旋は下角が動く”だけ”に着目してないですか?

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このように,肩鎖関節軸での上方回旋が生じる際には,下角だけが動くだけではなく,上角が脊柱方向(内下方)への可動性も大切なポイントになると思います.

なので,他動的な上方回旋の可動性を評価する際は,下角だけでなく上角周囲の可動性評価も一緒に行うと,なぜ上方回旋が出ないのか?のヒントになる可能性があると思います.

*個人的な注意点
他動的に上角を内下方に動かす際には,あくまで肩鎖関節軸上での動きを促通する事を考えているので,肩甲骨下制鎖骨後退が入りすぎないように注意しています.(言葉では伝わりづらく,すいません)

なので,ポイントは鎖骨遠位・肩峰・上腕骨を把持して,上角を動かしています.(遠位をアンカーにして近位を動かすイメージです)

3.棘鎖角に関して

この棘鎖角に関してですが,狭小化の一要因として…

肩甲挙筋前鋸筋上部繊維

”も”絡んでいると思っています.
棘鎖角の狭小化には肩甲骨外旋も関係しますよね!
棘鎖角が?の方は以下の記事をご参照ください.

ですが両筋ともに”肩甲骨外旋作用”はないのでは?
と思う方はいらっしゃるかと思いますが,ポイントは下方回旋という作用だと思っています.

理由としては…
*筋連結を考慮すると肩甲挙筋・前鋸筋・菱形筋は一枚のシート状になっている為,下方回旋を認める場合は,菱形筋による肩甲骨外旋(内転)の可能性も示唆される(もちろん,肩甲骨内旋位での下方回旋もあります.)

前鋸筋上部繊維は前傾作用もある報告があり,第1肋骨に付着することも踏まえると鎖骨と肩甲骨の距離が近づく可能性がある為(前傾も伴う棘鎖角狭小化)

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4.上角と肩甲上神経

まず,上角の形態も大きく分けて3種類あるのはご存知でしょうか?

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少々分かりにくい図ですが,上角の突起度合いにもパターンがあるようです.
ただし,これを触診のみで判断するのは…
難しいかもしれませんが,左右差比較で何となくの把握はできるかも?と思います.(Echoではどうですかね?)

続いて,”肩甲上切痕”も形態分類が6種類に分かれています.(こちらもEchoでは撮像可能?)

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*補足
TypeⅠ〜Ⅲ:   肩甲上神経絞扼の低リスク群
TypeⅣ〜Ⅵ:肩甲上神経絞扼の高リスク群

・肩甲上切痕の形態はType Ⅲ>Ⅱ>Ⅰ>Ⅳ・Ⅴ・Ⅵの順で多い
・肩甲上神経の絞扼のリスク比は,mountain peak shapeで高まる

このような報告を見ると,上角に付着する肩甲挙筋と前鋸筋上部繊維の過活動(Scapular Dyskinesisや棘鎖角狭小化)は,上角の形態変化を引き起こす可能性があり,二次的に肩甲上神経の絞扼症状(後方Tightnessや筋出力抑制等)に繋がる可能性があると思います.

なので,オーバーヘッドスポーツ選手の肩甲挙筋のtightnessによるScapular Dyskinesisや肩甲上神経の絞扼症状が惹起される事に関しても何らかの因果関係があるかもしれませんね.(この辺りは,報告されているものがあるかもしれません)

5.上角と肩甲背神経

はじめに肩甲背神経の走行を確認しましょう.

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このように走行を見ると,上角〜棘三角周囲の内側には肩甲背神経と動脈が存在します.
棘三角となると”菱形筋”などの関与も考えないといけなくなりますね.

なので,この周辺の可動性や軟部組織の柔軟性低下も肩甲背神経および動脈に何かしらの影響を及ぼす可能性がある事が予測されます.


*本noteの纏め*

・上角には肩甲挙筋前鋸筋上部繊維が付着する
・上角周囲にある滑液包は肩甲胸郭関節が可動するために重要なクッションや潤滑剤的な役割であり,”前鋸筋(肩甲下筋)”を介して存在している
・肩甲骨上方回旋の評価を行う際には,”上角の内下方移動”の評価も必要
棘鎖角の狭小化には”前鋸筋上部繊維”の関与の可能性があるかも?
・肩甲挙筋と前鋸筋上部繊維の”オーバーユース”二次的な肩甲上神経の絞扼症状を引き起こす可能性がある?
上角〜棘三角の内側には肩甲背神経・動脈も存在する為,周囲の柔軟性や可動性の担保は必要

脱線しながらダラダラ書いてしまいましたが,少しでも上角周囲組織への着目度も高まればいいなと思います.

今後は,需要があれば”肩甲背神経”に関してももう少し深掘りしていきたいと思います.(需要なくても書くと思います笑)

今回も,お時間頂き最後まで読んでいただいた方,有難うございます.
またドシドシご意見等頂ければ幸いです.

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