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鎖骨から肩を攻める

こんにちは!
まつうらこーたです.
久々の投稿ですが,STMマガジン”第7弾”です.

前回は,予想以上に皆様から反響を頂けまして大変光栄でございます.
今でもご質問やご意見もお待ちしています.

今回はズバリ…”鎖骨から肩を攻める”
だいぶ攻めたタイトルです苦笑

どこまで攻められるかは分かりませんが,現状考えている事の整理をして,皆様とdiscussionさせて頂ければ幸いです.

では,早速ですが…

肩の動きは鎖骨が脇役であり,中心人物である

では,なぜこの考えに至るのか,短絡的ですが書いていきたいと思います.

前回のマガジンで我が隊長(しーご先生)がこれを掲載しています.

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これを紐解くと…
*肩甲上腕関節:関節窩と上腕骨から成る関節
→固定されたまま動かないし両方動きますよね?関節窩の向きが変わるには肩鎖関節軸の調整が必要です.
*肩甲胸郭関節:胸郭上に浮遊する肩甲骨との関節
→どこか連結していないと動きが不安定ですよね?鎖骨と肩甲骨は上手く連結して安定性を担保しています.(C-C mechanism)
*肩鎖関節と胸鎖関節:ともに鎖骨と関節を形成していますね.

屁理屈みたいですが,そうなると上肢挙上時に”鎖骨”は,上腕骨・肩甲骨・胸郭が動くことに大きく連動しているので,大半の割合で動きます.


立証するために…
挙上時に鎖骨を徒手的に止めてみて下さい!

腕上手く上がりますか?

動く量は大きくないですが,微妙な調整をしてくれる”いぶし銀”的存在であり,”中心人物”でもある鎖骨だと思っています.

では,鎖骨の役割はどんなものかあるか他に考えていきたいと思います.

1.鎖骨の形態と役割

鎖骨の形態ってなぜ直線状ではなく,クランク状なのか考えた事があるでしょうか?

・脈管系の保護
・動きの拡大,伝達の効率化

この2つに関わってくるのではないかなと思います.

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このように鎖骨と肋骨間には,鎖骨の脈管系や腕神経叢など重要なものが走行しています.
なので,仮に鎖骨が直線の形状をしていたら圧迫しやすい可能性があり,様々な弊害が生まれそうですよね.

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そしてこの形状ですね.
クランク状であるが故に,力の伝達効率が格段に上がると思います.

例えば,手動の昇降式のベッドの取手も上記の形状だと思いますが,あれが直線の棒だったら回すのとても大変ですよね…?

そういう意味合いから,鎖骨の形状が回旋力を有するが故に肩甲骨も回旋・回転しやすくなってると思います.

2.胸鎖関節

胸鎖関節軸の肩甲骨の動きは,「挙上・下制,内・外転」ですね.
ん?と思った方は,以下のnoteで確認してみて下さい.

少し今回は,胸鎖関節も深掘りしていきたいと思います.

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はじめに,直接胸鎖関節へ供給している神経・動脈は,上記と言われています.

内側鎖骨上神経:鎖骨〜前胸部の知覚に関与
鎖骨下神経:鎖骨下筋を支配
肩甲上動脈:棘上筋,棘下筋へ栄養供給
内胸動脈:大胸筋へ栄養供給

3.肩鎖関節

肩鎖関節軸の肩甲骨の動きは,「上方・下方回旋,内・外旋,前・後傾」ですね.

胸鎖関節と同様に神経・動脈は…

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腋窩神経:三角筋,小円筋を支配
肩甲上神経:棘上筋,棘下筋を支配
外側胸筋神経:大胸筋,小胸筋を支配
肩甲上動脈:棘上筋,棘下筋へ栄養供給
胸肩峰動脈:大胸筋へ栄養供給

他にも様々,報告はあるかと思います.
では,鎖骨が関わる関節の2つを取り上げましたが,なぜ各関節の神経と動脈を記載したか…

この2つの関節を動かす事で,もちろん肩甲骨の可動性の改善を図る事も可能です.
特に,伝えたいこととしてこの2つの関節を動かすことによる”筋への影響”です.

肩関節疾患において,前胸部や後方tightnessに対しての直接的な介入(リリースやダイレクトストレッチ等)は多くされると思います.

ただし,患部の圧痛が強かったりして介入しにくい時もあるのではないでしょうか?
もしくは,即時的に直接的な介入が奏功しても,次回の持ち越し効果が乏しいケースは経験される事はあると思います.

そんな時に,試行的に胸鎖関節や肩鎖関節軸とした肩甲骨へのmobilizationを行うことで上述した筋の筋緊張の緩和や圧痛の改善を図れる事もあるのではないかと考えています.

なので,逆に上述した筋の緊張が高かったりするケースは,肩関節の挙上動作時に胸鎖関節と肩鎖関節の動きの調和が取れていない可能性も示唆されると思います.

4.棘鎖角

続いて,棘鎖角(水平面上から見る鎖骨長軸と肩甲棘長軸)に関してです.
鎖骨の静的,動的位置からの予測ですが…

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このように鎖骨位置が外旋(後退)や後方回旋が強調される(棘鎖角狭小化)と,腕神経叢等の脈管系のスペースの狭小化が生じる可能性があると思います.

では,なぜそのような動態異常が生じてしまうのかですが…正直,様々あると思います.

*静的のケース(例)
1.静的な肩甲骨位置が外旋(と内転)に強調されることにより,鎖骨遠位が後方に牽引される
2.同側の上位肋骨外旋や後方回旋の強調により,鎖骨の対応として鎖骨外旋(後退)が生じる
3.上位肋骨のPump Handle motionが制限される
4.鎖骨を水平面上から見る付着する筋のアンバランス

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*動的のケース(例)(静的のケースを含む)
1.挙上初期の鎖骨の前進が上手く生じない(動的な早期の肩甲骨内旋の低下)
2.肩甲上腕関節の可動性不足による代償(凍結肩等によるROM不足,動的な早期の鎖骨外旋・挙上や肩甲骨外旋の強調)
3.肩甲骨運動異常(軟部組織性,末梢神経性,筋出力抑制等)
4.器質的障害に対する適応(肩甲上腕関節不安定症や鎖骨骨折,腱板断裂等)

5.胸鎖関節優位と肩鎖関節優位の挙上の戦略例

では,この双方の調和が取れていない挙上例を述べます.
*この”調和の取れる”という言い回しは,中澤先生の伝え方を拝借させて頂きます.

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このように,強調しすぎた図ですが…
胸鎖関節軸での動きが強調された場合は,鎖骨の挙上(肩甲骨挙上)が優位な戦略を取りやすいと思います.

逆に肩鎖関節軸での動きが優位な場合は,鎖骨の外旋・後方回旋(肩甲骨外旋)が優位な戦略を取りやすいと思います.

なので,対象者の挙上時の優位な戦略を評価していくことで,介入手段も変わってくると考えています.

つらつら書きましたが…
こう纏めると鎖骨からの”肩関節”への影響って計り知れないのでは?
というように考えています.

もちろん,局所を考えることは大切ですが,難渋した際に再評価しつつ引き出しはたくさんある方がいいと考えています.

そのような観点で,肩関節疾患を見る際は鎖骨の位置や動態にも着目しています.
肩甲骨運動異常があるから鎖骨の運動異常があるのか…はたまたその逆か…の議論は絶えない部分と思います.

では,本noteの纏めです.
*鎖骨の形態を理解することは臨床のヒントになり得る
*胸鎖関節と肩鎖関節の支配神経・動脈の筋への関与の可能性
*鎖骨を動かすことで,厄介とされる前胸部や後方筋群への脈管系を介して間接的な介入ができる可能性
*鎖骨の静的・動的位置(棘鎖角)による脈管系への関与
*動作時の胸鎖関節もしくは肩鎖関節の優位な戦略を評価する事で,挙上時の動態や筋tightessの要因の一評価になり得る
*鎖骨は脇役であり,中心人物である

今回は鎖骨から肩を攻めるという…タイトルにした割に攻めきれない微妙なnoteとなってしまいましたが,最後までお時間を頂き,お読み頂いた方々…

誠にありがとうございました.

中々,突っ込みどころ満載かと思いますので,是非ともご意見等頂ければ幸いです.
宜しくお願い致します.

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