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肩甲骨の静的位置の評価

こんばんは!
理学療法士のまつうらこーたです.

STMマガジン”第3弾”です!
前回は,動きの定義について纏めました.

今回は,”静的位置の評価”について私の考えを纏めました.

 

まず「何を”基準”」に静的評価をしますか?

”静的位置を評価する意味”ってなんでしょうか?

そんな側面から書いていきたいと思います.
是非,ご一読頂いている先生も「自分だったら…」と,想像しながら読んで頂けたら幸いです.(ご意見,ご質問大歓迎です!)


私が評価で大切にしているのは”左右差”です.

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左右差がある=悪ではなく,まずは静的評価から左右差があるという…"事実のみ"にする事が必要と考えています.

後の評価でそれが”悪”かどうかは試行的介入及び精査をすればいいので,位置評価のみでの決めつけは危険と感じます.

「当たり前だよ」と思う先生方が多いと思いますが…かなり大事な部分と感じます.

位置評価ですが…ここが結構難しいんですよね.
理由は,肩甲骨は三次元的に位置し,胸郭上に浮遊し,鎖骨との関節も形成しているからです.


各セラピストでの捉え方が異なると思うのですが,私はシンプルに以下に進めています.

1.空間的にある肩甲骨を視診する

肩甲骨を視診するとお伝えしましたが…
最初は”肩甲骨だけ”を見ないようにします.


座位も立位でも,まずは頭部〜脊柱(胸郭)〜骨盤帯の全体の位置を背面から眺めます.(シルエットや特徴を捉える
イメージは以下の感じです!

スクリーンショット 2021-01-10 19.42.23

骨盤帯に対して,頭部位置がどうかな?(例:首曲がってる?)
骨盤帯に対して,脊柱(胸郭)位置がどうかな?(例:右に身体流れてる?)


その逆は? 
脇の空き具合は? 
肘頭の向きは? 
母指の向きは?
などと基本的に骨盤より上位を大まかに眺めます.


そして,その間の患側の肩甲骨は空間的には脊柱より右寄りだな…


と上記の視点で,シルエットから肩甲骨の空間的な位置のイメージを付ける程度にします.

2.胸郭・鎖骨に対しての肩甲骨位置を触診を交えてみる

次は,触診を交えます.
先程述べたように,肩甲骨は胸郭上に浮遊しており,鎖骨との関節を形成しています.
その為,肩甲骨を空間上で見るとともに,胸郭と鎖骨との関連性を考慮して見る必要があります.

*ポイントとなる骨ランドマーク
・鎖骨(遠位,近位)
・胸骨(剣状突起)
・上位胸郭(肋骨)
・脊柱(棘突起)
・棘三角
・肩甲棘
・上角
・下角
・肩甲骨内側縁
・烏口突起
・肩峰


体表から比較的触診しやすいので,ランドマークにしています.

3.三次元的に見ようとする(前額面・水平面・矢状面)

1と2を踏まえて,視診と触診で肩甲骨・胸郭・鎖骨の位置関係を三次元的に見ていきます.
*再度お伝えしますが,基本的に左右差で見ていきます!


前額面(前面と背面)から見る事が多いです.
前額面前面からは,鎖骨の傾斜度合いと胸骨の傾き(剣状突起の向き)を見ます.

スクリーンショット 2021-02-15 9.10.40

鎖骨位置は,他の関節同様に近位だけでなく遠位も見る事が大切です.
また,胸骨の左右の傾き(剣状突起の向き)も見ておくと,だから鎖骨位置がこうなのか!肩甲骨位置がこうなのか!という判断材料になることもあると思います.


次に前額面背面から得られる情報は…
挙上・下制,内・外転,上・下方回旋です.
一般的なのは,脊柱と肩甲骨内側縁の距離間を見る事(Scapular Supine Distance)だと思います.(下の②に当たります)

①肩甲骨内側縁を頭側から尾側方向に指を沿って評価→肩甲骨の傾き度合い
②棘三角と脊柱間・下角と脊柱間の距離間→脊柱と肩甲骨間距離の関係
③両肩峰もしくは両上角周辺に指を当てる→肩甲骨の高さ度合い
*安静時の上方回旋は,4〜10.5度(1)

スクリーンショット 2021-02-15 9.10.23

続いて水平面ですが,
肩甲骨内外旋・棘鎖角・上位胸郭を見ていきます.
*前回のnoteでも簡単に触れています!

①鎖骨の近位から遠位のラインを結ぶ→鎖骨長軸の評価
②肩甲棘内側(棘三角周囲)から肩峰のラインを結ぶ→肩甲棘長軸の評価
③鎖骨から上位肋骨間の距離→肋骨の回旋を評価

*左右差比較で,鎖骨とその直下の肋骨間の距離が…
・近ければ上位肋骨後方回旋:前後径増大(胸板が厚い)→肩甲骨外旋示唆
・遠ければ上位肋骨前方回旋:前後径減少(胸板が薄い)→肩甲骨内旋示唆

なので…
例)棘鎖角が増大(内旋示唆)→上位肋骨前方回旋(内旋示唆)となると鎖骨位置と胸郭の形状を加味した上で評価した結果に繋がります.
*もちろん,左右差がない場合や上記に沿わないケースもあります.

スクリーンショット 2021-02-15 9.11.06

鎖骨に関しては,後方回旋が入ると水平面上での鎖骨の後退も入りやすいと思うので,鎖骨遠位がより背側に,鎖骨近位は腹側に変位しているように感じるかもしれません!(前方回旋時は逆)

臨床的な話ですが…
例えば,肩甲骨内旋アライメントが悪だと捉えて介入.
即時的に変化するも,中々定着しない場合…
同側の骨盤帯が後方回旋位でいる事により,それに対応する為に肩甲骨内旋位でいる.という事もあるかもしれません.


何が言いたいかというと,骨盤帯の位置で胸郭の形状もしくは肩甲骨位置の適応変化もあるかもしれない.という事です.
それは,どの面においても言える事なので骨盤帯より上位を俯瞰して診ることは大切です.(そうなると全身ですね…)

最後に矢状面ですが,
ここは肩甲骨の前後傾を見ていきます.

①烏口突起と肩峰後角を自身の両示指または中指で示す→前後の傾き度合いの評価(先程の胸郭前後径を考慮)
*イメージは,骨盤前後傾を見る感じです(ASISとPSIS)
*矢状面上の場合は,関節窩の向きを考慮して評価するのもアリです.
→約30〜40度肩甲骨内旋位(1)にあるので肩甲棘ライン上から見ます.
*前傾は10〜13度程度(1)

スクリーンショット 2021-02-15 9.11.33

肩甲骨の静的位置評価の簡単な纏めですが…

①最初から肩甲骨を見ずにシルエット,特徴を掴む
肩甲骨単体位置を大まかに見る
胸郭,鎖骨との関連性を三次元的に考慮する
④状況によっては,骨盤帯上下の関係性も考慮する

三方向から見たものを統合して,三次元的なイメージを作る事が大切です.
これが,私なりの静的位置評価の基準です.

では,冒頭でも述べたように…
実際,肩甲骨の位置が分かった事で何に繋げるか?が大切です.


静的位置は,その人の生活背景(競技特性や癖)や心理社会的な一面を物語ると考えます.(持論ですが,可動範囲が広く,肩甲骨での適応・補償しやすい為→位置も動きも

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肩甲骨位置が分かることで,関節窩の向きに対しての上腕骨頭の位置なども評価する為にも必要です.(関節窩に対しての上腕骨頭位置評価は省いています)

上腕骨頭の可動性を評価するときにも関節窩の向き(肩甲骨位置)を意識する事で可動範囲は変わる可能性があります!(Scapular Plane上を捉える意味でも大切)



となると評価だけでなく,介入にも大きく関与しますよね?


他にも静的位置の変化による可動域制限や周囲筋imbalanceや末梢神経へのstress,筋の出力抑制にも繋がる事もあると思います.(頸部位置との兼ね合い等も)
そんな思考で評価しています.(私はルーティンで見る事が多いです)

ですが,静的=動的でもないので…
その辺りは,今後書いていけたら…と思っております.
その前にある程度の肩甲骨の挙上動態は知っておくべきかと思うので,下記をご参照ください.


如何でしたでしょうか?
私なりの肩甲骨の静的位置評価を簡単に纏めました.
是非とも,読んで頂いた先生方の感想やご意見等のコメント頂ければ幸いです.

今回も最後まで読んで頂いた方々,貴重なお時間を頂き有難う御座いました.
何か,不明点やご指摘等ありましたら引用リツイートもしくはDM等頂ければ幸いです.
宜しくお願い致します.

参考文献
1.Sang Ki Lee,Dae Suk Yang .A comparison of 3D scapular kinematics between dominant and nondominant shoulders during multiplanar arm motion.Indian Journal of Orthopaedics | March 2013 | Vol. 47 | Issue 2


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