見出し画像

肩甲背神経を紐解く

こんにちは.
まつうらこーたです.

前回は遂にSTMマガジンが”第10弾”まで辿り着きました!
毎回読んで頂いている方には感謝致します.
隊長(しーごさん)のnoteは,小胸筋への介入の一助になると思いますので,読んでない方は是非ご一読ください!

今回でSTMマガジン”第11弾”です!
前回は,”肩甲骨上角を考える”というテーマでnoteを書かせて頂きました.
上角周囲組織への着目する必要性が少しでも伝われば幸いです.

今回は,前回の続編を意識した形で”肩甲背神経”に着目してnoteを書いていきたいと思います.

はじめに,肩関節疾患を見る際に,末梢神経の観点から見ると腋窩神経や肩甲上神経への着目度はさらに増していますが,”肩甲背神経”への注目度はいまいちな?印象を持っています.

では,なぜ肩甲背神経に着目する必要があるのか?ですが…

前提:肩甲挙筋と菱形筋を支配する神経
肩甲胸郭関節
  ・Scapular Dyskinesisとの関連性
肩甲上腕関節
  ・肩甲挙筋は棘上筋との関連性
  ・菱形筋は棘下筋との関連性
末梢神経
 ・神経をグループで見ると肩甲上神経等との関連性

ざっと書きましたが,肩甲胸郭関節との関連性はもちろんですが,間接的に肩甲上腕関節との関連性も”少なからず”あるのではないかと感じています.

1.肩甲背神経の走行

前回は少し触れましたが,より近位からいきます.
まず”腕神経叢”の復習ですが…

スクリーンショット 2021-05-18 8.23.14

少し分かりにくい図で申し訳ありません.
この辺りは,”どの部位”を走行するか等の知識は持っておくと評価や介入のヒントになるので押さえておきましょう!

では,肩甲背神経の走行ですが…

スクリーンショット 2021-05-23 8.32.57

このような報告を見ると,中斜角筋や肩甲挙筋へのstressは肩甲背神経へ直接影響を及ぼす事が想定されると思います.

となると,両筋への介入は”変化をだせる一つのきっかけ”になるかもしれませんよね?

そして,肩甲背神経の遠位に辿ると前回もnoteでも書きましたが…

スクリーンショット 2021-05-31 8.21.50

このように上角〜内側縁の内側を走行します.
なので,直接的な介入としては中斜角筋〜肩甲骨上角/内側縁のラインを意識するといいかもしれませんね.

*ただし,肩甲背神経は深層に位置しています.(上後鋸筋と菱形筋の間を走行)

スクリーンショット 2021-06-13 7.12.14

この菱形筋の表層には僧帽筋群が走行してますから,肩甲背神経は深層に位置している事が分かると思います.

この後,介入部分でも触れますので,この位置関係(上後鋸筋は脊柱〜肋骨間,菱形筋は脊柱〜肩甲骨間に付着する事がポイント)は頭に入れておくといいと思います.

2.肩甲背神経の絞扼症状

続いて,症状として出るのは…

スクリーンショット 2021-05-18 14.18.26

このような症状が出ると言われています.

では,疼痛に関してですが,肩甲骨内側縁周囲の疼痛”のみ”だと思ってる方もいらっしゃると思いますが,そうでもなく多岐に渡ります.

先ほど提示させて頂いた腕神経叢の図を確認ください.
肩甲背神経はC5レベルですが…

他のC5レベルの神経は,
・長胸神経(前鋸筋)
・肩甲上神経(棘上筋,棘下筋)
・腋窩神経(小円筋,三角筋)
・筋皮神経(上腕二頭筋,上腕筋,腕橈骨筋)
・橈骨神経(上腕三頭筋)等…

何が言いたいかと言うと神経をグループで見る事で,疼痛は肩甲骨内側縁周辺だけでなく,肩後面〜上腕の後外側〜前腕にまで関連痛として生じる”可能性”もあるわけです.

なので,例えば症状が上腕外側→末梢神経の観点だと腋窩神経や肩甲上神経だ!となるのではなく…
問診を取る中で症状発症の順番はどうか?(例:頸部周囲から)
その近位の神経周囲組織の筋Spasmや可動域,表在感覚等はどうか?
などと考える必要があると思います.

上記を踏まえると,疼痛部位=○が原因だ!と方程式を作ってしまうのはとても危険と感じますよね?

*補足
肩甲背神経の症状の出る例
・塗装業など長時間上肢を挙げている人に多いとの報告
・肩前方脱臼時に長胸神経とともに損傷
・ボディービルダーなど頸部の過緊張を強いる人
・オーバーヘッド選手の肩甲上神経損傷とともに肩甲背神経損傷もあり

3.肩甲背神経とScapular Dyskinesisの関連性

ようやく出てきました”Scapular Dyskinesis(SD)”です.
output開始してからTwitterでフォロー頂ける方はご存知かと思いますが,個人的にはかなりSDが好きです.笑

まず簡単なSDの定義ですが…
日本語名称では,”静的な肩甲骨位置異常・動的な肩甲骨運動異常”の2つがこのSDの中の意味合いにはあります.(SD noteも検討中)

肩甲背神経絞扼とSDの関連性(例)ですが…
静的なSD:肩甲骨下方回旋,外旋位
動的なSD:肩甲骨上方回旋,内旋不足(動的な肩甲骨の外旋優位)
*ともに逆パターンもあり

*逆パターンあり
と書きましたが,肩甲背神経の絞扼症状として筋に対して,筋Spasmが高まる要素?であれば上記が当てはまる可能性はありますが…
逆に,筋力低下や萎縮している場合は,安静時筋緊張の程度も落ちて,Winging様(翼状肩甲)の肢位を取る可能性もあります.

この辺りは,個人的にも解釈が難しくて末梢神経の絞扼症状:Entrapment(neuropraxia)や軸索損傷(axonotmesis)によって…
・筋Spasm
・筋萎縮
・筋力低下
と筋への影響も様々だと思います.

個人的な浅はかな解釈だと…
絞扼症状(neuropraxia):筋Spasm
軸索損傷(axonotmesis):筋萎縮
末梢神経損傷の”程度”で筋への影響も異なる?と思っています.
*もちろん,絞扼症状:Entrapment(neuropraxia)が慢性化してくることによる,筋萎縮への進行の可能性も大いにあり得ると思います.


やはりこの辺りの解釈って難しいと個人的に感じます.
なので,ここでも症状発症”前後”までの問診(ストーリー)や評価を丁寧に行う事が肝になると思います.

介入としては,局所循環量の改善を図るために,局所の硬さ(滑走性)の改善も必要ですが胸郭・脊柱・肩甲骨の可動性を引き出したり,筋収縮をマイルドに促通する必要もあると考えています.

筋の影響から考えると…

スクリーンショット 2021-06-03 8.27.55

この要素からも肩甲骨の”動きの質”を担保するためには,浅層筋だけでなく深層筋の重要性もあり,肩甲背神経支配の肩甲挙筋と菱形筋の関与は大切であると言えます.

4.肩甲背神経と肩甲上腕関節の関連性

この辺りは,上記を読んでいただくと既にイメージが湧いてる方もいるかと思いますが…

肩甲背神経は”肩甲挙筋と菱形筋”を支配していますよね.
なので,上記の筋連結を考慮すると…

スクリーンショット 2021-05-27 8.11.29

スクリーンショット 2021-05-27 8.11.42

このように,筋連結を考慮すると肩甲背神経へのストレスが生じた場合,肩甲挙筋と菱形筋の筋Spasmが高まることで,棘上筋と棘下筋の筋機能低下(伸長性低下や出力抑制)を引き起こす可能性があると思います.

なので肩甲上腕関節の動きを引き出すため(例:肩甲上腕関節の内転制限や内旋制限)に…

棘上筋や棘下筋への直接的な介入が奏功しない場合は,肩甲挙筋や菱形筋はもちろんですが,肩甲背神経の影響も考慮する必要があると思います.(もちろん他の因子も多数あります)

5.肩甲背神経への介入案

では,どのように介入していくか…ですが,
実際,Echoで確実に可視化できているわけではないので理論上の空想です.

肩甲骨内側縁レベルの走行や層を考慮すると…

上後鋸筋と菱形筋間に位置するので,胸郭を固定させた状態(上後鋸筋はTh1〜3から第2〜5肋骨上縁に付着し,上位肋骨挙上作用)での肩甲骨の可動(菱形筋は肩甲骨内旋(外転)・上方回旋で伸長,肩甲骨外旋(内転)・下方回旋で短縮)をさせる事がポイントと思います.

セルフの場合だと…

この動画のように脊柱屈曲位で固定した状態で,手を組んだままで左右に上肢の回旋を促す(体幹の回旋が入らない程度の細かい動きで十分かなと)と,胸郭固定下での肩甲骨内/外転(内/外旋)を促せて,上後鋸筋と菱形筋間の肩甲背神経の短軸の滑走が促せるのでは?と考えています.

ただし,単純に菱形筋の伸長/短縮が生じているだけの可能性もあるので…
事実は分かりません.

*説明が良くわからなかったら,動画作成しますので仰ってください.

*本noteの纏め
・肩甲背神経は中斜角筋(肩甲挙筋)を貫通する割合が高く,肩甲骨周囲では深層を走行する
・末梢神経をグループで捉えたときに,肩甲背神経由来の疼痛は肩甲骨内側縁だけでなく,上腕〜前腕への関連痛を生じる可能性がある
・肩甲背神経の絞扼症状により,肩甲骨位置・運動異常を生じる可能性がある
・肩甲背神経の絞扼症状により,間接的に肩甲上腕関節(棘上筋・棘下筋)への影響の可能性がある
・肩甲骨内側縁レベルの肩甲背神経の短軸の滑走は,胸郭固定下での肩甲骨内/外転(旋)及び上方/下方回旋を促す事で生じる?

肩甲背神経を紐解く…と大袈裟なタイトルにしましたが,ほんの一部しか解釈できてないと思っております.泣
なので,今回もたくさんの疑問点やディスカッションをさせて頂けると幸いです.

今回も,最後までお読み頂きありがとうございました.

次回のnoteは…
まだ未定なので,リクエスト等あればコメントや引用ツイート頂ければ幸いです.
宜しくお願い致します.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?