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五十音物語

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あ~をまでを物語に。
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2023年2月の記事一覧

氷点下を知らせる幹線道路沿いの気温計。 いつもは見るのも疲れるぐらい色うるさい街が、白と街灯のオレンジだけで統一される。 1台も車が走っていないのは、都市部のドライバーの運転が下手で事故が起こるからなんだと冷めた事を考える。 何とも言えない足音がクセになり、頭と肩を白くしながら家の前を往復する。 数分前の私の軌跡は消えていく。 私の生きた証もこんなものなんだろうか。

ハッと目を覚ました時、この世界が終わっていてくれないかなぁと何度思ったことか。 今日もそんな無駄な希望共に目覚めたが、いつものテレビがリビングから聞こえてくる。 代りばえのしない朝食、強制的に決められた制服、目の死んだ大人と乗る電車。 こんな毎日のどこに希望と夢を持てばいい。

呑気に鼻歌を唄いながら洗濯物を干すあなた。 いつもの時間である事を確かめ、自分の感覚時計を微修正する。 階段を上り、ドアに手をかける。 足音を忍ばせながらリビングに向かう。 籠にはまだ半分以上洗濯物がある。 気づかれないように身を隠す。 ドッキリに弱いあなたの心臓が心配。

ねるねるねるねの味をしったのは19の時だった。 添加物を全否定する親の元を離れ、加工品に囲まれた大都会で根を生やそうとしている私の初ねるね。 何とも言えない見た目と子供用に作られた味。 周りから遅れること約13年。 私の中に駄菓子ワールドが建設されていく。

脱げ捨てられた服から香る貴方の痕跡。 3年前から始まった私の貴方の関係。 数ヶ月に一度しか会えない、そんな関係に縋りながら生きている。 決して世間様に胸を張れる関係ではないけれど、自信のない私にとっては唯一存在を認められた場所。 貴方の痕跡を消したくなくて、そっとクローゼットにしまう。

煮っころがしが食べたい。 窓の外を見つめるあなたはそっと呟いた。 難病指定の病に罹り、好きな物が食べられなくなって3年。 年齢的にももうこれ以上の治療は出来ないと医師から伝えられた。 田舎から出てきた私が出会った当初唯一作れた料理。 共に歩んで60年、何も変わらない。

何度も夢で見た河原を歩く3人の姿。 真ん中をぐんぐんと進む小さな影に、大きな影は心配そうに手を伸ばす。 いつもここで目が覚めて、頬の湿りを確認する。 3年間通院して変化のない身体。 夫が私を認め、求めてくれるから心が折れずに生きている。 最後の年と言われた今年。 神は私に微笑んでくれるのか。