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艦これ提督に捧ぐまえせつ!5話入門ガイド

2020年秋アニメの趨勢がほぼ定まっていた11月上旬、一部の提督たちに伝わった「タニベ隊員が艦これじゃないアニメに出演した」という情報。そこで、問題のタニベ氏が出演したアニメ『まえせつ!』第5幕までに最低限把握しておくとよいまえせつ!情報を僭越ながら教示いたします。
この記事は情報の深度で項目を分け、後半にいくほど深い情報、つまり第5幕までの物語を理解するまでの情報を提示します。タニベ隊員のシーンを見るのに困らなければ良いという方は「ことの発端」「キャラクターと出演シーン」までを読めば問題なく第5幕に臨むことができます。

ことの発端

2020年11月9日午前0時56分、私はTwitterにて以下のようにツイートしました。 

 直後には他のユーザーからも報告が相次いでいます。

いちのみや店員 タニベユミ

これによりタニベユミ界隈は一夜にして歓喜と混乱に包まれました。 熱狂的なタニベファンでない提督でも「白露型でも仏艦でも迅鯨でもないキャラクターをタニベ隊員が演じた」という事態はかなり驚きの出来事ではないでしょうか。

タニベ氏は艦これ以外のアニメやゲームに出演した記録が殆どありません。そのため、艦これという2010年代の日本ゲームにおいては非常に大きな作品で活躍しながら、Wikipediaには特筆性の問題から個別記事を掲載することがかないませんでした。それがこのまえせつ!出演により問題をクリアできるとファンからの声があがっています。

キャラクターと出演シーン

タニベ氏が演じたキャラクターはいちのみや店員。甲府盆地の東側、山梨県笛吹市に実在する観光施設「里の駅いちのみや」の店員です。紅色のエプロンにパンツスタイルの出で立ちで、黒いロング髪を後ろで薄群青のシュシュでひとつにまとめています。ツノができており、迅鯨や時雨を彷彿とさせます。

出演シーンは本編ベースで7:25頃~8:28頃の約43秒、台詞は合計約13秒でした。

放送情報

2020年11月10日19時現在、タニベ氏出演の第5幕「ばんかい!」放送に間に合う場合は明記します。また放送終了した回の時刻については除きます。

地上波
TOKYO MX (MX1)…毎週日曜日 深夜24:30~
MBS 毎日放送…毎週火曜日 深夜27:30~ ※11月10日(火)にタニベ氏出演回放送
山梨放送…2020年11月21日(土)以降毎週土曜日 深夜25:30~ 第5幕から放送 ※タニベ氏出演回から放送再開

BS・CS放送
BS日テレ…毎週月曜日 深夜24:00~
CS AT-X…毎週日曜日 深夜23:30~ (世界最速放送)
なお、dアニメストアの地上波先行配信ほか、各種配信サービスは1週遅れ配信およびライブ放送が行われています。

第4幕のあらすじ

この項以降は『まえせつ!』本編ストーリーのネタバレを含みます
第5幕を一応最初からちゃんと観たい方に、話をまたぐ前の第4幕「えいぎょう!」について解説いたします(各キャラクターや作品世界については後半に述べます)。
メインキャラのひとり朝生祗なゆたの姉・中間はじめから山梨の温泉旅館での営業オファーを受けて、主人公たち「とこなつ」「R凸」とその先輩コンビ「ふりいくっ!」の6人で現地入り、昼間は各地を観光して山梨を堪能し夜のステージの出番に臨みます。
「とこなつ」「R凸」にとって身内ではないお客さんの前での漫才披露は経験が殆どなく、第2幕の合同単独ライブの盛り上がりとは打って変わって場の空気をつかめず、ネタもお客さんの心に響かないまま終始スベり続けてステージを終えたのです。
この第4幕を受けて第5幕は営業2日目にサブタイトル通り「ばんかい!」する、物語中盤のハイライトというべきエピソードです。

まえせつ!基本情報

ここからは『まえせつ!』の作品全体について触れます。

2020年10月クール作品、地上波放送はTOKYO MXのほかMBS、山梨放送。ほかBS日テレとCS局であるAT-Xにてテレビ放送されています。

お笑いをテーマに、2組の芸人志望コンビ「とこなつ」「R凸」の生活を描く日常系コメディアニメーションです。

現在活動しているお笑い芸人が多く関わっていることが特徴で、ネタ監修の天津向氏をはじめ、本編にも「ふりいくっ!」富田純基氏・うぶのハツナ氏の両名がレギュラーとして本人役で出演しているほか複数の芸人がキャストとして出演することが発表されています。

原作イラストは美水かがみ氏。『らき☆すた』を連載しているコンプティークでは「美水かがみ先生最新アニメ情報!」という触れ込みで2020年1月号から特集が組まれ、シリーズ構成・脚本の待田堂子氏によるノベル『まえせつ!のまえせつ』を連載していました。

監督は『ハイスクール・フリート』『刀使ノ巫女』の信田ユウ氏。艦艇や横須賀に縁のある作品を手がけてきたあたり提督のみなさんも何か感じるものがあると思います。……そういえばまえせつ!のBS日テレでの放送は月曜日深夜24時からなのですが、なんとその30分前の月曜23:30からハイスクール・フリートが再放送されているんです!つまり1時間とおして信田ユウ監督作品を堪能できる!これは滅多にない大チャンスですので皆さん是非はいふりともどもよろしくお願いします!(露骨なはいふりマーケティング)

世界観と3話までのまえせつ!

舞台は現代日本(おそらく現在時刻とほぼリンク)の埼玉県を中心としています。

お笑い芸人を目指す女の子たち、実は主人公である青髪に丸メガネの北風ふぶきと、仲間4人でいるときはとても元気な凩まふゆのコンビ「とこなつ」。一番小柄でしっかりものなデコっぱちのツインテール新谷りんと、一番背が高くゆるふわ天然系な懐剣持ち朝生祗なゆたのコンビ「R凸」この4人2組を中心に物語は描かれます。

第1幕、物語で初めて描かれた4人の舞台は、まふゆの妹で高校生の凩まなつがオファーした文化祭ステージ。実はこのステージは元々音楽ライブの予定で、そのピンチヒッターとして4人はエアバンドによるパフォーマンスを敢行。会場は大盛り上がり。しかし欲をだしたまふゆのモノマネが全くウケず、ステージは静かな幕切れとなった。シチュエーションは某軽音楽アニメを彷彿とさせますが、4人の道は過去のそれよりもう少し泥臭くなります。

第2幕では新人の賞レースへ出場するうえで実績を積むために、周囲の協力を得て合同単独ライブ開催することを決めた4人。フライヤーからグッズまで手作りしてチケットを売って回り、どうにか会場である行きつけのカフェをお客さんで埋めることに成功します。少しばかりの自信と明日のための課題をもち帰りました。

第3幕にて先輩コンビ「ふりいくっ!」の誘いを受けて、4人はよしもと∞ホールでのライブを観に行くことに。そこで目の当たりにしたのは、自分たちより年下の女子高生漫才コンビ「JKクール」の活躍と、チケットが捌けず空席の目立つ「ふりいくっ!」の舞台でした。
「とこなつ」「R凸」の4人は日々の生活や直面する芸人としての壁に対して、場当たり的に対処するでもなく、また悲観するわけでもなく、まっすぐ彼女たちらしく立ち向かっています。

腐らず驕らず、楽しくがんばる。それが『まえせつ!』の物語です。

補足

先に掲げたツイートの一連はTOKYO MXでの地上波最速放送をリアルタイム視聴していたユーザーによるもので、タイムコードを見て分かるとおり出演したシーンと同時ではありません。私もスタッフロールを見てようやく気づいたくらいです。スタッフロールの写真を撮影するまで黙っていた可能性も示唆されますが、実は地上波放送の1時間前にはAT-Xにて世界最速放送、30分前にはdアニメストアにて地上波先行配信が行われており、早ければ11月8日の23時40分頃にはタニベ氏出演シーンを観ることができました。しかし該当の時間まで遡って調査したところ、スタッフロールが流れるまで1時間半タニベ氏出演に気づいた報告はありません。唯一AT-X放送時にキャスト欄のスクリーンショットがツイートされてはいますが、あくまでタニベ氏に気づいたことを伝える旨ではないと推測されます。

おわりに

補足で述べたツイートの調査の際、期せずしてリアルタイムに視聴した方々の声に多く触れることとなりました。2020年10月クールは他に『戦翼のシグルドリーヴァ』『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』『ハイスクールフリート(再放送)』を観ているのですが、それらの実況と比べると割合として批判的な声が多く観られました。披露するネタの拙さをはじめとして、第5幕では某キャンプアニメに乗っかる姿勢や富田氏歌唱の特殊EDなどを指して「ノリで冷める」などという指摘もありました。

私自身、この『まえせつ!』視聴のきっかけが「前クールの『ストライクウィッチーズ2(再放送)』と同枠ではじまり、また番組終了後8分ほど後に始まる『日向坂で会いましょう』までの時間潰し」ということで、さほど前のめりではありませんでした。第0幕でまじめに観たのは信田監督の漫才だけでした。はいふりを作ってくれた監督だからです。

しかし、第5幕まで全話視聴しておいて何も感じないということはないのです。確かにネタ披露のシーンではその拙さに、さながらホラー映画の怖いシーンが近づいたときのように目を覆ってしまいます。心がぞわぞわするのです。ただそれを取り上げて『まえせつ!』の不出来を指摘するのはいささか拙速だと考えています。

活動当初、あるいは養成所時代からその面白さが認められたり、うっかり大ヒットするネタを世に送り出した芸人は現実に確かにいます。キングコングやオリエンタルラジオ、いまで言えば第7世代の芸歴が浅い若手の活躍が思い浮かぶことでしょう。彼らがスターダムにのし上がるさまを見るのはそれはとてもカタルシスを感じるものです。なにより抜群に笑えます。

『まえせつ!』が描くべきはその駆け上がる瞬間ではないのでしょう。あるとしても、それは最後のとっておきです。

もしも4人が、どこへ行っても外さない鉄板のギャグや、どの舞台でも抜群のネタを手に入れたとしてどうなるのか?少なくとも第5幕までの4人ではまだ手に余る代物です。きっと使いこなすことができない。エンタの神様のように笑い声がとまらない状況を私が目の当たりにしたら、それはうれしいのでしょうが、いま頭のなかにある「とこなつ」「R凸」の姿とはかなり乖離してしまいます。

見ようとしている姿、あるいは見せようとしている姿は輝かしい成功ではなく、芸人を目指して生活するその一挙手一投足、日常の世界だと思っています。日常系の議論はきっと飽きるほどあちこちで聞いてきたことだと思うので、つっこんだことは言いません。

『まえせつ!』の真価はいかに「とこなつ」と「R凸」がしっかり描かれているか、ということです。私は最終ゴールが吉本のファームクラスではなく「まふゆが生信玄餅を食べるシーン」であったとしても怒らないと思います。……いや、そこはツッコミできなきゃダメですね。もしものために考えておきます。

最後になりますが、たまたま見ていたアニメにタニベさんの1分にも満たない出番があったことを報告したせいで、わざわざこんなに長い文章を時間をかけてしたためることになり若干困惑しています。これも熱意あまってタニベユミ合同誌を3回も出すまでに至った界隈のせいです。うちの同人誌これから全部買って貰うぞ。

ただ、二次創作ではない形で「自分が作品をどう思い追いかけているか」を知る良い機会にもなりました。ありがとうございます。第3弾は書店で買います。 以上をもって、参加していませんが「タニベユミキャラ合同第三弾」の原稿にかえさせていただきます。いちのみや店員の話殆どしてないのと、今回小説掲載は見送りなのでたぶんボツです。


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