「データ主権(data sovereignty)」または「デジタル主権」

2020/05/31開始
2020/06/25更新

2020年2月20日のThe Economistのthe Special report "The data economy/ mirror worlds"の五つ目の記事。

Geopolitics – Governments are erecting borders for data https://www.economist.com/special-report/2020/02/20/governments-are-erecting-borders-for-data

■記事のタイトルについて

タイトルの邦訳は以下の通り。

・地政学 – 政府が、データのための境界線を構築している
・急速に大きな問題になってきているデータ主権

各国のデータ主権(data sovereignty)の話。この記事を読むまで、data sovereigntyという言葉を知らなかった。語源を調べたい。

■大局

・マイクロソフトのAzureが例として出ている。

・マイクロソフトは、the Cloud Collaboration Centre (CCC)で、the data economyの法改正に応じたクラウド再構築の方法を、議論している。

・デジタル保護主義(digital protectionism)から“AI nationalism”に移行する可能性がある。the American security expert Edward Snowdenの2013年のリークによって、各国政府は、this global infrastructureとthe data economyの重要性を理解し始めた。Citizens’ privacyだけではなく、a country’s defencesの観点で。

・記事の中で、EU、インド、ロシア、中国のデータローカライゼーションの法規制が簡単に紹介されている。

■The Economistが示唆するグローバルデータ領域(the global data sphere)における三つのシナリオ

▼1 デジタル分離独立(digital secession):すべてのデータが国外に流れ出るのを防ぐために、各国は基本的にインターネットへの接続を切断する必要がある:これは、データが実際に保存されることを保証する唯一の方法だ。
→ロシアは受け入れるかもしれない。

▼2 データに関するさまざまなタイプの連合(coalitions for different types of data)
→EU、アメリカ、日本など

▼3 国家が提供するクラウド
→ドイツのGAIA-Xなど

■大阪トラック(“Osaka Track”) 信頼性のある自由なデータ流通(DFFT:Data Free Flow with Trust)

記事には「大阪トラック」の記載もある。「大阪トラック」とは、2019年7月のG20大阪サミットの際に、「デジタル経済に関する首脳特別イベント」において立ち上げられた「デジタル経済、特にデータ流通や電子商取引に関する国際的なルール作りを進めていくプロセス」。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/it/page25_001989.html

The Economistは、「大阪トラック」を、Abe Shinzoが浮上させたアイデアだとし、some global rules for “data governance”を考案することを目的とするものだと記述している。“free flow of data with trust”については、the rather fuzzy conceptと形容している。

大阪トラックは、メンバー間のデータの自由な流れを促進し、data protectionismな国、特に中国によるアクセスを制限するために、アメリカとEUとの同盟を形成する日本政府の提案として始まった。

この構図を見るに、現在は、1870年から1930年に似ていると言えるかもしれない。

インドと他のいくつかの発展途上国は、大阪トラックへの登録を拒否している。大阪トラックではglobal rulesを考案することを目的としているが、別のデータ連合(another data coalition)が組成される可能性が有る。 

■ドイツの取組み GAIA-X

全く別の未来として、ドイツのGAIA-X(GAIA-Health、GAIA-Mobility)という試みを挙げている。GAIAはギリシャ神話の地球の女神。“federated data infrastructure”と呼ばれるa club of cloudsを構築するもの。

“lock-in”を最小限に抑えることで、ドイツの企業を、大きな外国クラウドの力から隔離。ドイツ主導のGAIA-Xの試みが進むと、企業におけるデータポータビリティが簡単になり、“lock-in”を避けやすくなるのだろう。

一方で、国家によるアーキテクチャ層の介入が進んでしまうことが危惧される。
ドイツ主導のGAIA-Xの試みに反対したのは、マイクロソフトだけ。

マイクロソフトは、「国境に沿って区画されたデータ空間を持つ世界」としてクラウドを構築してきた。

■気付き

大阪トラックの“free flow of data with trust”のコンセプトで重要なのは、flowの部分だと感じた。ストックではなく、flow。flowを生み出すためには、trustが必要だ。

逆に、trustがなければ、flowが生まれず、有用性に乏しいストックとしてのデータが残るだけ。

trustを培う要素とは何か? 

いずれにしても、一過性のtrustではダメで、永続的なtrustが重要。 

■疑問

・データ主権とデジタル主権は何が違うのか?

・この文脈では「主権」をどのような意味で使っているのだろうか?

・データとデジタルはどの点で異なるのか?

以上


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