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【連載】わたしの湯 vol.5 / スタッフ紹介

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—松さんの趣味はなに?
歌うのは好きですね。昔は1人でも歌ってたけど、今はご無沙汰。

—十八番は?
ひばりかな。美空ひばり。「港町十三番地」とか。

美空ひばりは知ってるけど、「港町十三番地」…どんな曲だっけ?とインタビューのあと、すぐに聴いてみた。イントロが流れて思いがけずアップテンポなその曲に、なるほどな〜と笑ってしまった。なんとなく松さんがこの曲が好きなのがわかったし、ノリノリで歌っている松さんの姿がすぐに想像できたから。
仕事をしている時はびっくりするくらい身軽で、掃除機もすごい勢いだし、高いところにもひょい!と登ってしまう。「絶対昔から運動神経よかったでしょ?」っと聞くと、「走るのは好きだったね。リレーの選手にも選ばれたよ。」と松さん。やっぱりな、と納得してしまう。身のこなしが違うもん。「私は体を動かす方が好き」というその体は小柄で、いつも休みなく動いている。お風呂場で会うといつも気さくに話しかけてくれるのに、いざインタビューとなると小声になってしまう可愛い松さんを、みんなに知ってもらえると思うと、なんだか私も嬉しい気持ちだ。

企画:つっつー /インタビュアー:みほ/ 編集:ガースー /写真:Gota Shinohara /編集協⼒:江⼝彩乃

小杉湯と松さん だから続けられた

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—松さんは小杉湯で働き始めて何年になる?
もう十何年になるよね。

—誰かに紹介されて入ったの?
ううん、紹介じゃない。何の気なしにここにお風呂入りに来た時に、(募集の)張り紙を見て。小杉湯で働く前はカラオケ店に勤めてたのよ。歌が好きだからね。それまで小杉湯さんのことは知らなかったの。

—小杉湯で働く前からお掃除は好きだったの?
そうですね。でも(掃除を仕事として)やったことないの。本格的な掃除は小杉湯さんが初めて。それで今に至ってますね。

—実際にやってみてどうだった?向いてるなーって思った? 
うん、自分では。だから十年以上続けてるしね。今はコロナの影響で消毒もやってるからちょっと大変だけど。

—私も清掃の仕事に入って思うことがあるんだけど、朝の清掃は本当にみんなの鏡になるっていうか…いちばん最初の開店の顔になるから、すごく大事なところだなって思ってるの。で、松さんも田中さんもそうだけど、めちゃくちゃ綺麗にしてるのね。靴箱一つでも、コーナーのところとか、みんなが気づかないところに結構目を配ってやってくれているじゃない。夏だったら、扇風機。外側だけ拭いて終わりじゃなくて、中も拭くし、羽も外して羽の中も拭くでしょ。そういう姿を見てると尊敬するな。
ありがとうございます。

—お客さんに“綺麗だねー”って声かけられることもある?
そうですね。そういうことも言われることもありますね。嬉しいですよね。掃除してるかいがあります。“いつも小杉湯さんは綺麗だね”とかね。嬉しいですね。

—仕事をしていて、この部分が一番好きとか、やってて気持ち良いなとかある?
洗面所とかあの辺ですかね。

—脱衣所の洗面台のところ?
そうそう。大きな鏡があるでしょ、あそこが好き。

松さんの中に共存する二つのこと

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—松さんの持ってるものを見ると、お掃除道具以外でも、お風呂のカゴとか椅子とか、すぐに捨ててしまうんじゃなくて、長ーく丁寧に使ってるイメージがあるのね。そういうのは松さんは意識してるの?
すぐに“ぽい”ってのはしないね。勿体無いもんね。だから今もうスポンジなんかだいぶヨレヨレになってるけど頑張って使ってますもん。買ったら意外と長く使うもんですね。十年以上は使います。お風呂用の丸い椅子は相当年季入ってるよね。ゴムも外れてるし、黒っぽいのも落ちないところがあるんだけど、ちょうどいいのよ。

—倹約家だけど、小杉湯で色々なイベントをやってると、珍しいものをいつも買ってくれるじゃない。小杉湯となりのお惣菜も買ってくれてたり…結構新しいものも好き?
そうですね。新しいもの、珍しいものも好きですね。肉屋の前の駄菓子屋さんの地下に居酒屋があるんだけど、あそこでお弁当を出してて。カニコロッケが安かったのよ。他の人が買ってたから、私も買って。二個で200円くらいで安くて、美味しかった。となりのキッシュも美味しかった。

—キッシュまで!ハイカラだね。和食だけじゃなく結構いろんなものも好きなんだ?
うん。キッシュは別のお店にも買いに行ったことある。

大変なことは… 松さんからの一言に詰まった“人生において大切な事”

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—やっぱり朝清掃って朝も早いじゃない?田中さんと交代とはいえ定休日以外は毎日だし。
土日は午前3時半に家を出るようにしてる。朝風呂は時間との勝負。トイレに行く時間もないくらい。平日も、夏は(陽が登ると)暑くなるから早めに始めるようにしてるね。朝早く起きるのには慣れた。

—そっか。そんな中で大変なこともたくさんあると思うんだよね。
お掃除で大変なこと?今まではなかったね。…でもやっぱりコロナが流行ってからが一番大変ですよね。全部消毒しなきゃいけないしね。カゴも一個ずつ消毒してる。

—そうだよね。それまでは大変って思うことはなかった?
そうねえ。そんなに思ったことないかね。

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—松さんは今何歳だっけ?今ちょうど70

—わぁ、お祝いだ!70歳になって、これからの将来で思い描いてる事とかある?
主人が75歳で亡くなったから80歳までは厳しいかなぁ。

—旦那さんは75歳だったんだ。
そうそう。でも一応私カーブス(ジム)通ってますけどねえ。

—カーブス通ってるの?!
まだ一年経ったばっかりだけどね。

—すごいじゃん!いやー、元気でいてほしい。朝清掃は表には見えづらいけど、小杉湯の最初の雰囲気を作ってるって思ってるから、元気でこれからも働いてほしいなって思います。
ありがとうございます。

—まだ五年くらいは頑張って働けそうですか?
そうですねえ。頑張りたいですね。

—嬉しいです。五年経ったらまた私が「あと五年…」って言いますね。(笑)
ここに置いてもらえればね。

—松さんから、なんか他に言いたいことはある?
ふふ。みなさん優しいですから、色々助けてもらったりして。感謝感謝で。今までいろんな仕事をやってきて、ずっと働きづめでやってきましたけど、人間関係が尾を引いたりして、長続きしなかったことも多かったからね。小杉湯さんに来て、ほんとみなさんいい人ばっかりで…それだけで幸せだし。オーナーはじめ奥さん、みなさん優しくて助かってます。働けるだけで幸せだなあって思ってます。

—なんかいい話聞けたなあ。それを頑張って私たちもキープしないとなあ。

わたしの湯 私が小杉湯を好きな理由

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私は浴室を出てすぐの“木のタイル”が好きで、風呂上りにはあそこに立って体を拭いている。朝清掃の時間に、あの木のタイルを一枚一枚きれいに吹き上げている松さんの姿をみて、感動したのを今でも覚えている。長年使って劣化はしているが、あのタイルは裏までピカピカだ。「本当にありがとうございます」という気持ちと「だから私、小杉湯が好きなんだ」という気持ちが同時に湧き上がってきた。松さんがピカピカに磨きあげるこの小杉湯を、やっぱりもっと色んな人に好きになってほしいな。      つっつー

今回の登場人物 小杉湯のひとたち

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Photo gallery by Gota Shinohara

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