見出し画像

ミスマッチから考える!老人ホームの選び方

こんにちは!小菅(@kosugehideki)です。
今回は「老人ホームのミスマッチ」をテーマに、老人ホームの選び方について書きました。

僕が所属する株式会社LIFULL seniorでは、2023年7月に介護施設入居に関する実態調査をおこないました。

株式会社LIFULL senior『介護施設入居に関する実態調査 2023年度』

その結果、入居者家族の満足度として、「とても満足」「満足」「どちらかといえば満足」の合計が全体の9割を占める結果となりました。

介護施設入居に関する実態調査 2023年度

また、上記の調査とは別ですが、老人ホームに対する傾向として「イメージとちがった」「要望を聞いてくれない」「職員の対応に不満」などがあります。

前置きが長くなりましたが、僕はこれまでに「今の老人ホームに不満。別のホームへ住み替えたい」という、老人ホーム→老人ホームへの住み替え相談に乗ったことが何度かあります。

なぜそんな事が起こるのか、今回はミスマッチの例をいくつか紹介します。これから老人ホーム、介護施設を探す方の参考になれば幸いです。


ミスマッチ例①:想定より費用が高かった

「思っていたよりも毎月の費用が高くて」
こうした訴えをよく聞きました。老人ホームの費用といえば、基本的に「家賃、管理費、食費、介護サービスの自己負担額、医療費」が毎月かかります。これだけではありません。他にも、レクリエーション費、ヘアカットなどの理美容代、規定回数以上の入浴は追加の入浴料、ホームによっては寝具のレンタル代、オムツ廃棄料を設定しているホームもあります。

また、入居者がホームのスタッフに買い物代行で嗜好品をお願いする事もあれば、その買い物代行を有料で対応しているホームもあります。一つひとつは大した金額ではなくても、チリツモで大きな金額になる事もあるので、請求書を見て驚く人もいるのです。

また、契約時などホーム側の説明が不十分な場合もあれば、利用者・家族側もきちんと理解せず契約に至る場合もあるのだと思います。
特に時間がなく慌てて入居した人にこの傾向が見られるので、パンフレット記載額のほかにいくら位かかるのか。具体的には、自分の親の要介護度の入居者は、毎月いくらかかっているのか確認しておくとよいでしょう。

ミスマッチ例②:豪華な設備はいらなかった

「父に豪華な設備はいらなかったと思います」
大都市圏を中心に点在する「高級老人ホーム」は、高級ホテルのような洗練された空間や、豪華な館内設備が目を引きます。広々としたラウンジ、通年入れる屋内プール、フィットネス、ダンスホール、シアタールーム、ビリヤードや卓球台のある娯楽室。また、絵画や装飾、生花などの調度品に至るまで細かく設計されています。

そして、当然ならがすべての維持費が毎月の管理費に転嫁されているワケです。とある高級老人ホームは、“管理費のみ”で月額20万円します。

実際、こうした設備を気に入って入居する人もいますが、その設備を利用できるのはあくまで元気なうち。要介護状態になったら利用できるスペースも限られます。それでも、維持費は払い続けなければなりません。相談者のお父様は入居してわずか半年で脳卒中により要介護状態となり、設備のほとんどを利用する事はなかったといいます。

もちろん、設備を有効活用して充実した生活を送る入居者もいるので、一概に要・不要とは言えませんが、「納得できる金額か」「本当に必要なのか」は冷静に考えたいところですね。

ミスマッチ例③:他の入居者と会話がない

「社交的な母なのに話し相手がいなくて」
社交的でお話し好きなお母様。デイサービスでもお友達が多く積極的に通っていたそうです。しかし、転倒・骨折で車いすが必要となり、一人暮らしが困難に。入院中に子どもが選んだ老人ホームへ入居することになりました。

入居する前までは「老人ホームでもお友達をつくって楽しく過ごしたい」と話していたのに、その老人ホームは要介護度の高い人や認知症の進行した入居者が多く、お話し相手がほとんどできなかったそうです。家族が会いに行くと「またデイサービスに戻りたい」「うちに帰りたい」と繰り返し訴えるようになり、やむにやまれず家族も住み替えを決心したそうです。

入居契約前に、親と同じような状態の入居者がどの程度いるのか聞くこと。また、重要事項説明書に全入居者の「平均介護度」が記載されているので、親の介護度と乖離があるか確認するとよいでしょう。

ミスマッチ例④:レクリエーションへの不満

「童謡を唄う、折り紙、塗り絵なんてしたくない」
これはデイサービス(通所介護)でも同様の不満をよく聞きますよね。僕らもそうですが、みんなで歌を唄ったり、折り紙や塗り絵などは「子ども向けの活動」と捉える人が多いもの。それらをすることで「子ども扱いされている」と感じ、尊厳を傷つけられていると思ってしまうのも無理はありません(楽しんでいる人がいるのも事実です)老人ホームでは、一か月ごとのレクリエーション表があります。日々何らかの活動を行っていると思いますが、入居する際に内容を確認する事をおすすめします。

今や老人ホームのレクリエーションも多種多様。高齢者のニーズや時代の変化に合わせて進化・多様化しています。多いものとして、囲碁・将棋。音大生などの演奏による音楽鑑賞。茶道、華道の師範を招いての本格的な教室。スポーツインストラクターが行う本格的な運動。さらに、タブレットやスマートフォンの操作講習、VR(仮想現実)を使用した旅行体験、オンラインゲームなどのデジタル活動が増えています。

あえてレクの時間に老人ホームを見学させてもらい、入居者が楽しんで参加しているのか、そこに自分の親の姿を想像できるか確認してみると良いでしょう。

ミスマッチ例⑤:スタッフとの相性

僕は「老人ホームに良いも悪いもない。合うか合わないか。相性の問題」という持論があります。この「相性」には当然スタッフとの相性も含まれます。入居した親に会いに行ったとき、スタッフについてどう思っているのか聞いてみましょう。言いたいことはあるけれど直接言えず、家族にだけホンネを打ち明ける人が多いものです。

スタッフに対する不満でよく耳にするのが、「接遇や言葉遣い」「子ども扱いされる」「対応が冷たい・事務的と感じる」「尊重されていない感じがする」「オムツ交換のタイミングが決まった時間のみ」「スタッフの入れ替わりが激しく、名前を覚えた頃には辞めている」などがあります。中には、家族が要望を伝えてもたらい回しにされたり、「合意した事が履行されず不信感がある」という声もありました。

入居後にこうした事があれば、生活相談員やケアマネジャーに相談を。その後も変化が見られなかったり、問題の本質が組織的なものであると感じたりしたらホーム長などの管理者へ相談しましょう。

通常、この順序で解決に向けた対応を取るはずですが、進展しない場合は重要事項説明書に記載されている「苦情相談窓口」へ連絡し、運営法人の本社(本部)や第三者機関に相談することとなります。

そもそも、施設選びの見学では、スタッフの接遇、言葉遣い、身だしなみ、入居者への対応はよく見ておきましょう。昼食時やお茶の時間、レクリエーションなど、入居者とスタッフが接する時間が多いときこそ確認することをおすすめします。

入居契約前によく確認を!

今回お伝えしたミスマッチ例はほんの一部です。他にも「食事が口に合わない」「コールを押しても誰も来ない」「入居者同士のトラブルが多い」「同性介助してくれない」「温泉付きに惹かれて遠方のホームに移住したら誰も面会に来ない」などなど色々あります。

すべてにおいて完璧なホームは存在しないため、ミスマッチが許容できる範囲であれば妥協して生活をつづけるのもアリですが、生活に支障が出るレベルであれば解決に向けて進める必要があります。もちろん、どんなに相談をしても対応しきれない事柄もあると思うので、そのときは住み替えも選択肢としてもっておくのもいいでしょう。

今回あげたミスマッチ例は、事前の確認である程度回避できる事もあるので、施設選びの段階で「過去にあったトラブル事例やその解決法」について聞いてみるのも一案です。施設を試すワケではありませんが、そういう質問をしたとき誠実に回答してくれたら、そのホームの信頼度も高まるはずです。

(TOP photo By Tumisu from Pixabay


【お知らせ】
小菅をモデルに老人ホーム選びのマンガ連載が始まりました!
選び方のポイントも分かりやすく掲載しています。
あわせてご覧いただけたら嬉しいです。

第一話:「”いい老人ホーム”はありません」!? 伝説の老人ホーム入居相談員あらわる

第二話:同居だけが親孝行ですか?老人ホームと家族のカタチ

第三話:安い老人ホームを選ぶには? 老人ホームの費用のしくみ





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?