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VSタクシー

若者の言葉で悲しい感情を表す時に用いる言葉「ぴえん」、ぴえんよりももっと悲しい時に用いる言葉「ぱおん」までは知っていましたが、どうやらさらにその上をいく言葉で「ぴえんが丘どすこいの助」(ねずみさんの娘さん情報)という言葉があるとのことです。もう言葉の意味はよく分かりませんがとにかくすごい自信です。#へのつっぱりはいらんですよ

こんにちは、コッシーです。


さて、うちの入居者の方々は外出される時にタクシーをよく利用されます。市からタクシーを格安で乗れる【タクシー助成利用券】を配布してもらっていたり、高齢者となるとやはり足腰に不安があるため割と近場でも「タクシーを呼んでください」と言われます。

最近では介護タクシーではなく一般のタクシーでも高齢者に対してすごく親切にしてくださいます。乗り降りの際にちゃんと手を添えてくださったり、荷物を施設内まで運んでくださる運転手さんたちには本当に感謝の気持ちを抱いています。

しかしそんな中でも全く優しくない運転手の方もおります。


先日の話です。

うちの入居者のHさんが近くに整形外科に受診に行かれました。普段のHさんは歩行器を使っていますが軽快に歩かれています。しかしその日はヒザに痛みがあるとのことで、ゆっくりとしか動作ができない様子でした。

いつもなら受診後は歩いて帰ってくることもありましたが、さすがにその日は危ないと思いましたので、「帰りもタクシーを使いなね」と伝えてありました。「分かりました。そうします」と言ってHさんはタクシーに乗って整形外科に行きました。

ほどなくして、Hさんから「診察が終わりましたので今からタクシーに乗って帰ります」と連絡がありました。

うちの施設の食堂は片面がガラス張りになっており、スロープがある正面入り口付近を含めてなかなかの範囲を見渡すことができます。

帰宅する入居者や来訪者は必ずこの正面入り口に来るため、入居者から帰宅すると連絡があるといつも食堂から眺めています。

この日も食堂から外を眺めていると奥の道路からタクシーが曲がってこちらに向かってくるのがみえました。タイミング的にもHさんが乗っているタクシーはきっとアレでしょう。

ゆっくりとこちらに向かってくるタクシーを見てスタッフの1人が奇妙なことを言いました。

「あれ?あのタクシー、後ろの扉開いてないですか?」

もう何を言ってるんだと。ジャッキーチェンの映画じゃあるまいし走行中のタクシーが扉を開けるわけないだろと鼻で笑いましたが、半分くらい扉が開いていました。

二度見三度見…もう五度見くらいしましたが、やっぱり開いていました。

確かにスピードは全然出ていなくてゆっくり走行していますが、それでもめちゃくちゃ危険です。普通ならあり得ません。うちの入居者はジャッキーじゃありません。#ジャッキー推し

タクシーがスロープの前に停まりました。運転手が出てきて歩行器を出しています。声は聞こえていませんが、身振り手振りを見ると、どうやら急いでいる様子でHさんに早く車から出るように促しているように見えました。

Hさんはペコペコ頭を下げながら慌てた様子で車から降りようとしていますが、いかんせん足が痛いのでしょう。なかなか思うように降りられない様子でした。

急いでタクシーに駆けつけて、Hさんの手を取りタクシーから降ろしました。

不親切な運転手に怒り心頭で怒鳴りつけてやろうかと思いましたが、怒ってはいけません。こういう時こそ冷静に対処しなければいけません。

「扉を開けて走行してましたよね。危ないですよ」

「いや、最初に降りるところ指定されたのですが違ってたみたいで、ゆっくり走りながら探していたんです(汗)」

「それでもやっぱり危険なので走行するなら扉を閉めてください」

「はあ…申し訳なかったです」

扉を開けて走行した事に関してはさすがに申し訳なさそうにしていました。

「あと、この方は足が不自由なので出来れば配慮していただけると助かります」

そう僕が言うと、その運転手は少し不貞腐れて、

「うちは介護タクシーじゃないんでね。そこまでは出来ませんわ」

と言われました。

僕のアドレナリンがドクドクと分泌されるのが分かりました。多分ジョジョなら『ゴゴゴゴゴ』と効果音が流れていた思います。ワンピースなら確実に覇王色の覇気に目覚めた瞬間だと思います。ドラゴンボールなら一瞬で運転手を消し去っていたと思いますが、残念ながら僕はnote力14万しかないので無理でした。

運転手の胸倉をつかんで「どの口が言ってんだ!奥歯ガタガタ言わせたろかいっ!」とグワングワンさせても良かったんですが、多分そんな事してもHさんは喜びませんし、きっとこいつには何を言っても無駄だと思いました。

フゥーっと深呼吸をして怒り鎮め「分かりました。では結構です」と運転手に言い、その場から去ってもらいました。

その際にタクシー会社名、車のナンバー、そして運転手が【Y崎】という名前だということをしっかりと脳に刻みました。


そこのタクシー会社はうちの施設がよく使う会社でした。

会社に個人の事を伝えるのは陰口を叩くようで気が進みませんが、今後もうちの入居者がタクシーを使用した場合にこの運転手が担当するかもしれません。

その時にまた悲しい思いはさせたくありません。別にケンカをするわけではありません。あくまで注意を促し今後注意してもらうだけです。Y崎には腸が煮えくり返って熱々のホルモンスープを召し上がってもらえるくらいグツグツしていますが、タクシー会社に対して怒っているわけではありません。こういう時は冷静沈着に伝えるべきことを淡々と伝えた方が相手も理解をしてくれます。


「はい。○○交通です」

「こんにちは、○○のコッシーと申します」

「いつもお世話になっております!」

「こちらこそ。あのーこんな事を言いたくはなかったんですけど、よろしいですか、よろしいですね。コホンッ。

お宅のY崎さんという運転手はどうなってるんですかね!!!今日うちの入居者がご利用させていただきましたが、後ろの扉を開けたまま走ってましたし、降りる際も早く降りろと言わんばかりに急かしており、うちの入居者も嫌な想いをしたと言ってましたよ!!!僕がそれを注意すると『うちは介護タクシーじゃないですから』って言われましたが、お宅はそういう方針なんですか!?方針なんですね!?だとしたらこちらも考えさせてもらいますわ!!!」


ハァハァハァ……

ごめんなさい。全然冷静に言えませんでした。だって入居者が悲しんでるだもん、しょうがないじゃない。

「え?いや、その、あの…」と僕のあまりの剣幕にタクシー会社の方は事態を飲み込めていないようでした。

その様子を見ていたうちの介護主任が「替わります」と言って電話を替わりました。「ふうふう」と頭から湯気を出している僕の横で、冷静沈着に今回起こった事を話してもらいました。扉を開けて走るのは問題外ですし、高齢者に対しての配慮をもう少ししてもらえると利用しやすいですとしっかりと僕の代わりに話してくれました。うん、こうやって冷静に相手に話しないとダメだね。

タクシー会社は「大変申し訳ありませんでした。今後このような事がないようにしっかりと指導教育いたします」と言ってくれましたので、それ以上はこちらも咎めませんでした。

次の日にタクシー会社の偉いさんと憎き宿敵Y崎さんの二人がうちの施設を訪問してくださり、今回の件の謝罪をしてくれました。Hさんは逆に「こちらこそお手間をかけてごめんなさいね」と言っていました。#優しい人#Hさん大好きだ


お客様は神様で全てを完璧にサービスしろとは言いませんが、やはりお客様を不快にさせた時点でサービス業としては失格だと思います。

そういう仕事をしているとあとあと損をするのは結局自分です。媚びへつらう必要はないけれど、せめて自分がされて嬉しいサービスを心掛けてほしいものです。

特に高齢者は控えめで我慢をして自分を責めてしまう傾向にあります。そんな高齢者を傷つける人にはコッシーの怒りが爆発すると思いますので気を付けてください。


現場からは以上です。それではまた。

コッシー

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