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ハッピーハロウィンだったら良いな

バトン、忘れてません。(次回くらいに必ず)

こんにちは、コッシーです。


さて、うちの入居施設は開設して7年ほど経っておりますが、残念ながら施設内でお亡くなりになられた方が何名かおられます。日中急変された方も見えますが、朝方にお亡くなりになられる場合が多いです。

Sさんという女性の入居者も残念ながら朝方お亡くなりになられました。


以前の記事でも書きましたが、僕は出勤する日は朝食前に出勤し、入居者が来る前に食堂で待ち構えます。そして食堂に来られる入居者に「おはよう!」と挨拶をします。

その時の様子や声のトーン、表情などをみて体調が良いのか悪いのかを見たりしていますし、やっぱり挨拶は入居者とコミュニケーションを取るための大切な行動になります。まぁそこまで深く考えなくても、単純に挨拶をすることは人として当然の事だと思います。

僕の「おはよう!」に対して誰よりも大きな声で返事をしてくれたのがSさんでした。

「おはよう!今日も元気があってええねぇ!」

ニヒヒと笑うその顔はまるでジャックオーランタンのようでした。

Sさんは94歳で要介護4と介護度は重く、日常生活のほとんどに介助が必要でした。しかし頭はしっかりしており、言葉は悪いですが口は非常に達者な方でした。

僕やスタッフともよく談笑して、冗談を言っては僕らを笑わせてくれるようなとても明るく元気なおばあちゃんでした。

Sさんの子供さんは残念ながらお亡くなりになっていましたが、お孫さんが定期的に訪れてくれており、家族関係もとても良好でした。

「うちのお婆さんがうるさくてホントすいません!」といつも大きな声で言うお孫さんは間違いなくSさんの血を引き継いでるなと思っていました。


1年前の2019年10月30日のことです。

その日Sさんは朝からいつも以上にお元気で、ぼくが「おはよう!Sさん!」と声をかけると「おはよう!いつデートに連れってくれんだい?」と軽口を叩くほどでした。

「明日はハロウィンだから、仮装デートでもしようか」と僕が返すと、「え?火葬場に行けってか(笑)」とみんなを笑わせていました。

その日は日中お孫さんも見えて、「明日ハロウィンでしょ。お婆さんのお部屋に飾りつけしたので、明後日に適当に片付けてください」とSさんの居室のタンスの上にジャックオーランタンの人形の飾りつけをしてくれました。

それを見たSさんは、「わたしゃ、本物のかぼちゃを食べたいわ」と言っていましたがその表情はとても喜んでおられました。

こんなに元気なら明日のハロウィンは本当に一緒に仮装して外出しようかな、と思うほどその日のSさんはとてもお元気でした。


そして忘れもしない明くる日の2019年10月31日。Sさんは帰らぬ人となりました。


Sさんは1人でベッドから車イスへ移る事が出来ないため、毎朝介助に入ります。その日もスタッフがSさんのお部屋に訪室しました。

するとその直後Sさんの部屋からナースコールが鳴りました。普段Sさんからナースコールが鳴ることはありません。嫌な予感がしました。

受話器を取るとコール先はSさんの介助に入ったスタッフからでした。

「Sさんが息をしていません。」

すぐにSさんの居室へ駆けつけました。

ベッドの上で横になっているSさんはとても穏やかな顔で、まるで眠っているようでした。

なんとなく覚悟をしていたせいか、慌てることなくすぐにかかりつけ医に連絡を入れました。お孫さんにも連絡を入れましたが早朝だったためか電話に出られませんでした。

かかりつけ医の先生が診療前に来てくださり、Sさんの死亡が診断されました。先生からは「とても穏やかな顔をされてるね。おそらく全く苦しまずに眠ったまま亡くなったと思う」と言われました。

そのすぐ後お孫さんと連絡が取れ、着信記録が早朝だったためもしかして…と思っていたとのことでした。

すぐにこちらに来てくださりSさんと対面されました。

穏やかなSさんの顔をみて、「きっとお婆さんにとって昨日は本当に幸せだったんだね。いい顔してるわ」と涙を流して言われていました。

仕事では泣かないようにしていますが、その言葉にはさすがにこみ上げるモノがありました。

その後、Sさんの葬儀は親族のみでしめやかに執り行われ、Sさんは天国へ旅立ったのでした。


そして先日、Sさんのお孫さんがうちの施設を訪ねてくれました。

実はSさんの居室に飾られてたジャックオーランタンの人形は施設に寄贈してくださっており、今年は食堂に飾らせてもらっていました。

それを見つけたお孫さんは、「こんなところに飾ってもらえるんなら、もっと高いモノ買えば良かったわ!」ってニヒヒと笑うその顔はまるでジャックオーランタンのようでした。


Sさんが幸せだったかどうかはSさん本人に聞けない今、その真実は分かりません。でもきっとSさんなら「わたしの死に顔見れば分かるでしょ!」とニヒヒと笑っているような気がします。


現場からは以上です。それではまた。

コッシー

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