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謝らなくていい

料理が趣味の職場の男性介護士に「今ローストビーフ作りにハマってて」と話したら「すごい!僕ローストビーフ作れないかも!」と言ってたので「最近はどんな料理作ってます?」と逆に聞いてみたところ「タイを丸1匹買って、お造りにしたり煮つけにしたり焼いたりとタイのフルコースですね」って言ってました。絶対ローストビーフ作れるやろ。

こんにちは、コッシーです。


さて、訪問介護の支援の一つで【買物代行サービス】があります。文字通り利用者の代わりに買物をする支援になります。

ちなみに訪問介護の買物代行で購入して良い商品は日常生活に必要な物と限定されており、趣味趣向品は代行して買ってはいけないとされています。介護では利用者の尊厳を保持するのが大事って言ってるわりには趣味趣向品を買ってはいけないっていうのは尊厳の保持できるの?と思うわけですが、ルールなので仕方ありません。


話を戻します。

うちの入居者の方にもご自身で買い物に行くことが困難な方がいるため、この【買物代行】のサービスを利用される方が何名かいらっしゃいます。

サービスを利用されてる中の1人でKさんという男性の入居者がみえます。

Kさんは失礼ながら子泣きじじいのような風体で、笑うと顔がクシャっとなるとっても可愛らしい方です。

Kさんから依頼されている買物は、リハパンやティッシュやトイレットペーパーなどの消耗品、そして衣類を頼まれています。

先日、そろそろ寒くなってきたのでと、長袖のシャツや冬物のズボンなどの買い物を頼まれました。

普段からKさんと仲の良いヘルパーのSさんが買いにいきました。Sさんは長袖のシャツと厚手のズボンをそれぞれ数点購入し、その中に服の真ん中に大きく【K】と書かれたシャツがありました。

Sさんはそのシャツをみんなに見せると「これ良いでしょ!絶対Kさんに似合うと思って買っちゃいました(笑)」と言っていました。Kさんだから【K】って、大丈夫かそのセンスは。

そのセンスは疑いますが、でも確かにKさんが着たらとてもチャーミングで似合ってると思います。その辺は普段からKさんのことをよく見ているだけあります。


そして数日後にKさんが初めてそのシャツを着て食堂まで来ました。

その姿を見つけたSさんが、「みんな見て!Kさんが【K】のシャツ着てるよ!ウケる!」と言うとそれを見た他の入居者が笑っていました。Kさんも笑いながら「やめろよー(笑)」と言っています。

言葉は悪いですが、このように入居者をイジり、そして笑い合うという事はよくあり、もちろんそれをして喜んでくださる方をきちんと把握していますし、それが出来る信頼関係を築いた上で行っています。

今回のKさんもそれを見極めた上で行っていますし、Kさん自身も笑っていました。僕ら身内からすると微笑ましい光景です。

しかし人間関係や信頼関係を知らない外部から見るとそうは見えないケースがあります。

本当にたまたまですが、その日外部のケアマネが訪問しておりその一部始終をみていました。そしてこれもたまたまですが、そのケアマネはKさんのケアマネと同じ事業所の方でした。

後日、Kさんのケアマネから訪問介護の事業所にクレームが入りました。

「みんなでよってたかって利用者を笑い者にするのはおかしいと思います。下手すればこれは虐待にあたりますよ!」

電話を受けた訪問介護の責任者は、決して笑い者にしているわけではなくKさんも笑って受け入れてくれてました、と説明をしましたが、ケアマネは「でも『やめろ』と言っていたそうじゃないですか」と全く理解をしてくれません。

結局ケアマネから、事業所からKさんにきちんと謝罪をするように言われたとのことでした。

訪問介護の責任者は納得はしていませんでしたが、仕方ないと諦めていました。Sさんは目に涙を浮かべながら、「私はそんなに悪い事をしたのでしょうか…」と言っていました。


それを聞いた僕はSさんに謝らなくていいと言いました。


なぜならうちは全く悪い事はしていない、むしろKさんの心を癒していると思います。Kさんもそれをちゃんと分かってくれているはずです!それを謝るなんておかしい!と強く訪問の責任者やSさんに言いました。

「ケアマネには僕から言う」と二人に言うと不安そうに「大丈夫でしょうか?」と言っていました。こういう時にスタッフを守るのがリーダーの務めだと思うのです。ここでSさんが納得いかないまま謝ってしまったら今後Sさんは気持ちよく仕事なんて出来ないと思うわけです。

こちらが間違っていたら全力で謝罪しますが、こちらは少しも悪いことはしていません。絶対に謝る必要はありません!


二人には「大丈夫、全部任せて」と伝えケアマネに連絡をしました。


申し訳ないですが、うちは謝罪は出来ません。確かに傍から見たらKさんを笑い者にしたように見えたかもしれません。しかしその時にKさんがどれだけ嬉しそうな顔をしたか知っていますか?あの笑顔をご覧になっていたなら虐待だなんて絶対に思わないと思います。

Kさんが少しでも不安や不満を持っていたのなら、その時はご意見を真摯に受け止め謝罪いたしますので、一度Kさんに確認してもらえませんか?きっとKさんは「楽しかった」と言ってくれると思うんです!お願いします!

そんな事をケアマネに伝えました。二人から僕に向けられる熱い視線が伝わってきます。うん、大丈夫だ。任せとけ。

真剣に想いを込めてお話させていただいたので、きっとケアマネにも伝わったと思っていました。しかしケアマネからは思いも寄らないことを言われました。


「Kさんからは嫌だったと伺っています」


……うそーん。

そりゃないぜKさん!あんなに笑ってたじゃん!

「最初は楽しかったけど、だんだんと嫌になったそうですよ」

肝心のKさんが嫌がっていたのなら、もうこちらに弁解の余地はなく完全に悪ふざけが過ぎました。Kさんにきちんと不快な想いをさせて申し訳ありませんと謝罪をして、ケアマネにも失礼なことを言って申し訳ありませんと謝罪をしました。


Kさんもケアマネも許してくれ大事にはなりませんでしたが、いくら信頼関係があってもやり過ぎはダメだなってことを痛感する出来事でした。

本当にカッコつけて失敗しました…

でもKさんが嫌な想いをしたのは事実ですので、そこはしっかりと反省をして、さらに今後はスタッフの前で良いカッコをしないことを心に誓いました。

ああ、カッコ悪い…


現場からは以上です。それではまた。

コッシー

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