「世界一即戦力な男」を公開してから10年が経った。

 「世界一即戦力な男」が公開10周年になったので、この10年を振り返る動画を撮った。このサイトを公開したのは2013年2月2日。あれから10年が経った。ほんとうにあっという間だ。
 あのサイトを作りはじめたのは2012年の夏ごろ。ぼくは大学3年生だった。そのころは就職の状況が厳しくて、50社受けてやっと内定というようなことが言われていた。おまけにぼくは大学に入るのが遅かったので、もっと苦労することが目に見えていた。
 そこで作ったのが「世界一即戦力な男」という逆就活サイトだった。これならほかの就活生との競争にさらされない。それに失敗したとしても、「ここまでやってダメだったの?」とそれが笑い話になる。だからサイトも凝ったし、動画もつけた。
 幸運なことに話題になり、内定が取れた。すぐに100万PVぐらいいって、テレビや新聞の取材依頼がきた。公開した翌日に企業からのメッセージが届きはじめ、三日目か四日目には一社目の面接を受けて、その場で内定がもらえた。そして、その一社目に入社した。それがLIG。ウェブ制作会社で、ブログマーケティングに力を入れようとしている時期だった。
 あれから10年。
 LIGからヤフーに転職して、本を書くために独立した。著書は6冊。2017年に出した『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』はありがたいことに今月増刷したばかり。最新作は『ニャタレー夫人の恋人』。
 最初は動画の撮影場所を、10年前と同じところにしようと思った。あれは渋谷にある撮影スタジオをレンタルして撮った。雑居ビルの五階か六階だったと思う。それぐらいしか覚えていない。名前も場所も忘れてしまったので、過去のメールを漁って調べた。しかし、どうやらもう営業していないみたいだった。
 うーん、じゃあどこがいいだろう。しばらく別の候補も考えた。雰囲気が似ているところや、ただ単に見た目が良さそうなところとか。でも、同じ場所で撮ることに意味があるんだよな、別の場所で撮ることに意味はない、と思い直して自宅で撮影することにした。
 動画に写っているのは、ぼくの仕事部屋。いまもそこでこの文章を打っている。パソコンに向かって作業をしていると、真後ろに本棚がある。その本棚を背景にして撮影した。10年前のことや、その後に起きたことも話した。
 つぎの10年はどう生きよう?
 この10年、最初は企業のブログを書いていたけど、転職してウェブメディアの編集者みたいなこともはじめて、本を書いて、作詞をしたり、漫画原作をつくったり……やっていることはどんどん変わったような気がする。
 でも、ちょっと待てよ。
 10年前、ぼくはパソコンで文章を打っていた。「世界一即戦力な男」の動画の台本だ。「どうやったら面白くなるんだろう」と思いながら頭をひねっていた。すこし置いて見返して、また書き直す。あいまにネットを回遊して、YouTubeで動画を見ちゃったりして。うしろには本棚があって、好きな本が並んでいた。
 あれから10年。
 いまも自宅でパソコンに向かって文章を打っている。「この企画、どうやったら面白くなるかな?」と頭をひねり、書き直す。あいまにネットを回遊して、関係ない動画を見ちゃったりする(さっきも見た)。うしろを振り返ると、本棚があって、好きな本が並んでいる。
 なんだ、同じじゃないか。
 10年前どころじゃない。15年前の引きこもっていたころも。ぼくはパソコンの前に座って、ブログを書き、ネットを見て、うしろには本棚があって……!
 なんてことだ。ずいぶん違う場所にきた気がしていたけど、やっていることはほとんど変わらない。なんでだろう? 答えはわかっている。「それが楽しいから」!。
 きっとこれからもこうやっていく生きていくのだろう。新しい章はもうはじまっている。
 つぎの10年へ。

 あなたは10年前、なにをしていましたか?

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