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人とエントロピー

高橋祥子先生のエントロピーの先に生命が見る夢という、ブログの考えを聞きたいとお話があったので、今回、noteにまとめてみる事にした。


”変わること”だけが”変わらない世界”でどう生きるか?
高橋祥子先生はエントロピーを用いて「変化しかしない世界の中でどう存在するか?」と、いう問いかけをくれる。

1.高度経済成長期の日本では「変わらないという幻想」を作る必要があった。

世界が変わらないというのは幻想のように感じる。
宇宙が生まれたときから、あるいはもう少し前から、世界は動き続けている。
むしろ動き続けていない物質などありえない。存在するという事は「存在する状態を維持」するわけで、実は維持は変化だ。

しかし、日本の生産システムは維持を”変化しない事が幸せ”という概念に置き換えた。
組織の中で歯車になることを一人に求め続けたとき、その人に「人生変わり続けなければならない!」と、言うのは酷かもしれない。

例えば、ホテルのベッドメイキングをし続ける際に、毎回最高のベッドメイキングを志して365日生活するのは難しい気がする。

しかし「変化しないことが幸せ」という概念は、
人口増加の中、世界に「完全なるコピーを作る」という技術が成立していなかった時の戦略としては正しい。

コピー機でコピーした書類も結局は劣化コピーな場合、人を均一に育てることが求められた。
そのため、昭和の日本では、ある一定の理想の家庭を作って満足する事が「幸せ」だと教えてきた。
のび太は一生成長しなくても良かったし、野原家は不満を言っていながら変わらぬ平凡を楽しそうに生きる。

磯野家の中でカツオに求められる役割は変化を起こすことだが、いつも彼は叱られて日本的道徳を教えてくれた。

2.インターネットとコンピュータの高速化は戦い方を変えた。

高度経済成長が終わった1995年頃からカツオが認められなければいけない世界が現実に出てきた。
インターネットとコンピューターの高速化により、物事が本質的にコピーできるようになったからだ。
数式をコンピューターにわかるように文法化した言語に対してコンピューターがより速く反応出来るようになり、インターネットを使って世界中の知恵を繋げられるようになり、3Dプリンタの普及はデータだけで物質すら再現できるようになってきた。

その結果、人類を平均化するという日本型システムが過去の戦い方になってしまった。
人工知能が最も得意なのは平均化だ。大量のデータの平均値を用いる演算が人間を遥かに凌駕しているからだ。

その領域で人間はコンピュータには絶対に勝てない。
その時に、世界にはカツオのような、平均化に疑問を抱く価値観が必要になってきた。

3.人間とは何か?

人間には何が必要か?
コンピュータが出来ないことが人間に出来るのか?
人はよく「いい結果にならないならやりたくない」とか、「結果的にだめだったじゃん」とか、結果のみを見て物事を判断する傾向がある。

ここで、高橋先生のブログに書いてある、エントロピー、熱力学第二の法則について考えてみたい。
この法則は「入口は出口にしか通じず、出口から入口には戻れない」という、一方通行の現象の話だ。
ダイナマイトは爆発したあとに元の形に戻せない。割れたお椀もそうだ。

割れたお椀を見て「割れてしまったら終わりだ!」と思う事もあるだろう。
だけど、割れた事実はあるにせよ、そのお椀は子供の頃から自分を支えてきた大切な物なのかもしれない。

お椀を作ろうと思ったのも人間の意思だし、きっとそのお椀は誰かが人の幸せを思って作って、誰かが自分の事を思って選んでくれた結果、自分に届いた物なのかもしれない。
その後、お椀は長い間自分の生活に関わってきたし、そこにはきっと幸せな記憶が詰まっていた。
「大切な記憶を作ってくれた」時点で尊いのじゃないだろうか?

人の人生に関わるお椀を作る意思。割れてしまった出口から入口には戻せないけど、それには紛れもなく幸せな入口があったはずだ。
この入口が、人間にしか出せない価値だ。
コンピュータは人が作った出口だけ見て平均化したお椀しか作れない。
出口だけ見て、入口の「人の想い」を蔑ろにしたら、悲しみだけが残ってしまう。

4.進むしかない世界でも最初の意思を作るのが人

結果的に上手くいかないことなんてたくさんあるし、結果は変えられない。
だけど、次に活かすことは出来る。
時間の中を生きている以上、入口から出口のサイクルは変えられないけど、前の出口と次の入口は繋げることは出来る。

入口と出口に毎回いい繋がりを作れれば、きっと個人も世の中も良くなっていく。

5.時代を変えるのは決意

多くの人が「結果」という事実を、そのタイミングで、「ただ目の前にあったこと」だと認識する。
だけど本当は最初の動機があって、それがつながったことで「結果」が出る。
だから、最初の入口の時点でみんなを同じ意志に向ける必要がある。「ビジョン」というのがこれだ。
ビジョンが共有できていれば、いい出口を頭に描いて入口を作る事が出来るし、失敗したってそう簡単に諦めない。

「ビジョンを作ってくれるリーダー」がテレビを見ていると日本にはいないように感じてしまう。
ただ、若い世代には日本をあきらめずに頑張っている若者が沢山いる。

彼らのビジョンを色眼鏡なく見た上で、一緒に命をかけて進むことが必要だ。
ビジョンに向かうというのは「夢に向かって意識を決める」という事。
それは「決意」とも呼ばれる。

未来を変えるのは、私達の決意だ。

【人とエントロピー】

放っておくとエントロピーは増大する。確かに決意なき意志が動き回れば混乱が待っている。
混乱は無理やりまとめようとすると、力づくで纏める事になる可能性が高い。
ダースベイダー的思想だ。

ビジョンなき世界ではエントロピーは増大する。
他者を否定することで、更にエントロピーは増大する。
その繰り返しがエントロピーの負の螺旋。

エントロピーを抑えながら進む方法。
それはより良い未来を肩で語りながら、「ついて行きたい!」という背中を他人に見せること。

「夢に向けた確固たる決意を見せ続ける事」
これが、人がエントロピーに対して唯一対抗できる手段なのかもしれない。

だから、今日も頑張るんだ。


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