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デジタルネイチャー解説

高校中退~専門学校卒業の学力しかない自分が、半年間全力で落合陽一と向き合った結果のデジタルネイチャーの解説。主に「まえがき」部分を解説する事で計算機自然の世界を読み解きます。

1.夜と霧 ~主観と客観:無意識を意識せず感じるのが悟り~

まえがきの裏テーマは夜と霧です。夜と霧はアウシュビッツの経験を心理学者が自分のことにも関わらず第三者目線で書いている文章。
これは後から出てくる荘周の胡蝶の夢ともリンクします。
自分が自分ではない状態で見えている状況。
いわゆる「悟り」の状態。

悟りとはEnd to Endの世界に自分の主観を入れずに客観性だけで受け入れる状態。
すなわち「無意識」を意識なく感じれる状態です。
ブルース・リーの言う「考えるな!感じろ!」も同じこと。

冒頭、落合さんは夜と霧の文体を引用しながら、客観性のみでデジタルネイチャーが実装されている自然を綴り始めます。

2.デジタルネイチャー ~生物と計算機の寂~

人類が作り出した叡智である計算機によって、情報が点と点のみでつながり始めた世界。
GPSは衛星から得た情報を使って人間の目には見えない道を、同じく計算機によってビジュアル化された情報をモニター画面に映し出すことによって自分の居場所を伝えています。
GPSもモニターも具現化の方法は違いますが、裏ではプログラムが信号のオンオフをする事で動いています。
さらに計算機の高速化によって3次元の情報すら高解像度で構築する力を得てきたコンピューター。
それを落合さんは「寂びたデジタル」と表現します。

生物が生み出した量子化の叡智である人類。こちらも方式は違えど「寂びたデジタル」
自然が長い間寂びた結果生み出されたのが我々「ホモ・サピエンス」です。

3.侘然 ~人類が持つ侘然=マタギドライヴ~

この本のテーマは副題にもある通り「侘然(侘寂)」です。

「寂」とは、まわりまわって得た形状です。長い間繰り返すことによりなり得た状態の事です。
「侘」とは、粗野で不揃いな退廃。人類の場合は違う個体が持つ内発的なアートな衝動。

ホモ・サピエンスは長い間地球と同化して暮らしてきましたが、寂び切った結果、侘びを作り出します。
それがアート的な衝動。進化的な衝動だとも思えますが、目の前の課題解決をしだすわけです。
落合さんはそれをマタギドライヴと呼びます。

計算機は寂はするけど侘びはしない。今のところ人類のみが寂から侘びを引き出せるわけです。
「デジタルネイチャー」その世界は、人類と計算機という寂びたデジタル同士が繋がり、侘びの能力がある人類が、その能力を拡張していく世界です。

4.脱近代 ~主観と客観、意識と無意識、西洋と東洋~

そして同時に定義されている近代的人間存在。
それを主観と客観の話と意識と無意識を使って説明していきます。

主観は自然を人類が自分の経験を使って解釈している状態です。
西洋的なアプローチでは主観と主観を結びつけるという事で、人間・社会・国家・自由を定義しています。あくまで「主観がすべて」という世界観です。
それは一神教の宗教観で道徳を教えている世界から続く人類の管理方式が生み出した世界です。

東洋思想はアプローチが逆です。寂から侘びを導き出す。
客観をただ受け入れられるまで鍛錬を続けることでたどり着く「悟り」プロセスを使い世界を広く理解しようという試みです。
それが「胡蝶之夢」
「起きている時に感じる現実」と「眠っている時に見る夢」が、
「主観で考えている状態」と「客観を受け入れている状態」です。

自分の話ですると、悩んでいる事は寝ている時に解決方法を思いつく事が多いです。
寝ている時は、起きている時に主観では気づかなかった身体が感じた情報を脳が無意識のうちに処理している状態です。その時に脳が感じていることに気付くことで、解決策が出る。

無意識が100%の情報量だとすると、意識出来ている事は5%にも満たないと言います。

無意識を言語を介さずに感じられる状況が「胡蝶之夢」です。

5.人工知能と実装 ~知能とは無意識を抽象化するプロセス~

東洋思想がたどり着いた、End to Endの方法が俳諧。俳句は17文字で情景すべてを表現する圧縮法。
俳諧のような抽象化を行わなくてもEnd to Endで繋がる世界を計算機が生み出し始めます。

知能のアウトプットという観点から見ると人間はイルカのように直接相手に高解像度情報を伝えられないので、言語で抽象化します。

しかし抽象化(圧縮された情報)である言語を使ってお互いにやりとりをする事で、違った意味で抽象化している人通しで伝わり方の齟齬が起きている。と、いう状況が現代では起こっています。

東大の松尾先生は、人類の知能と人工知能は同じ仕組みで動いているはずだといいます。
細かい物事を認識して抽象化する事で物事を覚え、覚えた事の組み合わせで物事の最適解を導く。

同じプロセスで動くならそこを人工知能に代替する事で、今まで人類単体では簡単に辿り着けなかった
「悟り」のプロセスに知らずにたどり着く世界が落合さんのいう事事無碍。

人工知能の教師有学習と教師無し学習の差は人間の意識と無意識と酷似しています。
今までは演算速度の問題で主観しか作れなかった計算機が客観を獲得したとも取れます。

人工知能は人間が長い鍛錬の結果「悟る」事でしか実装出来なかった、非言語コミュニケーションを実装していきます。

【まとめ】 ~デジタルネイチャーと未来~
人類と計算機の両方が寂びて融合されてきた自然。
それが「デジタルネイチャー」です。

デジタルネイチャーの世界では演算速度が上がればあらゆる自然が再構築できます。
さらに人類の侘びによって己を拡張できます。

東洋の深い思想に計算機がたどり着き、近代的人間を超克した我々が向かう先が日本の幸せな未来です。

共に素晴らしい世界を作りましょう。

サポートいただけたら嬉しい限りです。