見出し画像

世界へ広がる「自分ごと化会議」 ―インドネシア第二の都市スラバヤで2年連続の実施

2024年6月28日、インドネシアのスラバヤ市が2年連続2回目の「自分ごと化会議(事業仕分けタイプ)=行政事業レビュー)」(以下、「自分ごと化会議」)を実施しました。
「高齢者の健康支援事業」について、スラバヤ市の職員と外部評価者である近隣自治体職員が議論し、無作為に選ばれたスラバヤ市民が事業の今後のあり方を評価しました。
市の公共施設のホールで、傍聴自由で実施し、インドネシア政府内務省の職員をはじめとする40人ほどの傍聴者が訪れました。

「高齢者健康支援事業」の主な議論

  • 高齢者の健康を増進するために体操教室を行っているが、その参加者を増やすために軽食を配っている。スラバヤ市は全人口約300万人のうち約35万人が高齢者。体操教室にはその中の6万人しか参加していないのが現状。6万人のための軽食のコストが年間約3000万円(30億 IDR)もかかっていて、事業費全体の9割を占めている。

  • 外部評価者からは、健康増進を目的とした事業で、お金の使い方の9割が軽食の配布であることに関して、目的にかなった使い方になっているのか、より良いお金の使い方があるのではないか、より多くの市民に健康増進の取り組みが広がるあり方を考えるべきではないか、といった意見が出された。

  • 議論を聞いた無作為に選ばれた市民の評価は、事業の要改善が26人、現状通りが4人という結果になった。

  • スラバヤ市役所は、この議論の内容や市民の評価結果を参考にして、今後事業の改善を行っていく。

構想日本は、2020年から「自分ごと化会議」をインドネシアで実施する取り組みを行っています。行政が行っていることを、いかに住民にさらけ出せるか。そして、行政や地域のことを、住民が「自分ごと化」できるようにしたい。そんなインドネシア側の問題意識に応えるために、無作為に選ばれた住民が評価を行う「自分ごと化会議」をODAの担い手となって、インドネシアに紹介、実践しているのです。
実施にいたる経緯は構想日本理事伊藤のコラムをご覧ください。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9c9ce47b59bcd43405e9c54881ea0646ea04a214

これまでに、小さな村レベルから、広域の県、スラバヤという都市まで様々な大きさの5つの自治体で10回の「自分ごと化会議」を実施してきました。
いずれの自治体においても市民の真剣な眼差しの前で、喧々諤々の質疑応答が行われ、税金の使われ方をより良くする議論の場となっています。
内務省は自治体での実践を見て、より多くの自治体の改善につながる可能性を感じているため、今後は内務省と連携し、より良い行政運営のためにインドネシアで「自分ごと化会議」が継続的に実践される仕組みづくりを検討していく予定です。

インドネシアでの議論を傍聴して、日本とインドネシアで以下の2点が共通していると感じました。
①行政は、予算(これから何をするか)は一生懸命だが、決算(実施してどんな成果があったか)は重要視していないこと、
②住民は、地域をより良くしていきたいというパブリックなことへの関心は高いが、行政がどのような課題認識を持ち、どのような事業を行っているかをあまり知らないこと

これらの課題は、日本、インドネシアだけでなく、多くの国でも同様の状況があるかもしれません。
構想日本が日本で実践してきた「自分ごと化会議」が、日本やインドネシアにとどまらず、多くの国の民主主義をより良くしていくためにお役に立てるのであれば、様々な国の政治・行政と連携していきたいと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
引き続きご注目、またご支援いただけたら幸いです。

文責:構想日本 田中俊



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?