「夏空と君と私と、感情の話。」設定資料(?)集

・先輩


文芸部唯一の二年生にして部長。黒髪ロング。執筆スタイルはアナログ強硬派。ネタ出しは大学ノートへ。プロットは作らない派。感受性は比較的豊かな方。夏君よりは柔らかい文章で静謐な雰囲気や季節描写と共に郷愁とか哀とか切なさを含んだ若干昏い感情を作中に書きがち。キャラは立てない派。純文学に寄っている。

「先輩」という立場のもと後輩を導いてやらねば、という意識のもとに動いている、と自分では思っているが、それは彼女自身に対する虚勢で、彼女のそれは実の所は献身的な恋愛感情に他ならない。後輩に対する見栄と若干のプライドが彼女にそう思わせている。後輩の為になると思ったら割と何でもする。

物書きという立場と彼女の作風上感情論に走ることがある。そもそも理屈はそんなに得意ではない。頭は悪くないのに成績が悪いのはその為だと思われるが単なる怠惰の可能性もあるので不明。或いはテスト期間も執筆をしていると思われる。

また、作中に頻繁に感情を描く為、自分の恋愛感情を美しいと感じているきらいは若干ある。片想いが苦しいことに変わりはないがその苦しみが美しいと。Mかな?

物書きの特性上、自分のホームベースである範囲では物事の運びを物語のように思い描いたり組み立てたりしがち。文芸部に居る限りは基本的に後輩の為になる運びしか考えないので安全。というか彼女の性格上誰かに害をなすような運びを考えることは無さそうだ。
ただ誰かの為に動こうとした時、全体のシナリオを自分一人で考える為、上手くいかなかった時にかなり自分を責めがち。

後輩にも共通していることだが人と接する時間と活字を見つめてきた時間のどちらが長いか怪しいような人生を送ってきているので、友人がいないわけではないがデフォルトは一人だしあまり他人に頼るということをしない。というか頼り方を知らない。頼っていいって言われても頼れない。

特に後輩の前では見栄を張りがち。余裕なふりをしていないとやってられないというのが正解か。仮面というよりは、あの部室という空間内の物語においての先輩というキャラという意識がある。上記同様、崩していいよと言われても崩せない。その分一人になるとひたすら思考。初対面にはどのキャラを使えば良いのか分からないので無難に誤魔化しがち。無難に誤魔化せる程度のコミュニュケーション能力はあるが大勢の中に居るのは好まない。人と話すより考え事をしたり執筆したり読書したりの方が好きだが、一部それらの時間を犠牲にしても話したいと感じる数少ない例外はいる。その一人が後輩である。

好きな相手にはとことん私情より相手の幸せを優先して動く、隠れ献身的タイプ。それが恋愛感情である以上当然相手とは結ばれたいが、それが相手の幸せにならないのなら結ばれることは寧ろ避ける。そして帰ってから泣く。翌朝には何事もなかったかのように接してくる。

表面的な部分は後輩よりも明るい彼女だが、本質的な部分では後輩よりも昏いものを持っている。後輩に感情を知って欲しいと思いつつも、昏い感情を知っている為彼にはこうはなって欲しくないとも思っている。感情を自覚すればどこか自分と似通った部分のある彼は自分と同じような感情を知るだろうと予測出来ているだけに複雑。

両親共に健在であり家庭にも何の問題もなく、経済的な不自由もない。ごく一般的な家庭で育ったにも関わらず若干歪んだ物の見方でありどこか厭世的になってしまった自分に若干の罪悪感と背徳感を抱いている。






・後輩


文芸部唯一の一年生にして平部員。黒髪短髪メガネ。スクールバッグの中に常に四〜五冊の文庫本を常備している。純文学からライトノベルまでジャンルを問わない乱読派。成績は中の上。

読書好きを自称しているが、どちらかというと活字中毒と言った方が正確。読書を楽しんでいるというよりは、他にすることがないので読書をしているうちに習慣化し、活字に触れていないと落ち着かない性分となってしまった。活字を見ていると外部の情報をシャットアウト出来るので安心するらしい。

変わり者のようでいて、実は常識に縛られている少年。感情が分からないと言ったり、完全に先輩をなめてかかっているにも関わらず敬語を使ったりするのはその表れである。
自分が変わり者であるという意識がある分常識人を演じようとするきらいがある。その為他人と会話をするのは疲れるし得意ではない。

元来感情を表に出すのが得意ではなく無表情な為、幼少期は周りから誤解を受けたりその読めなさが気味悪がられたりしていた。その為自分の発言に対する相手の反応に過剰に敏感だった時期が存在する。そんな過去もあり基本的に人間関係に臆病。相手の反応を窺いながらの会話は当然疲れるので読書に逃げていたら、ますます会話が苦手になったというのが現状。加えて、どうせ自分に会話や人付き合いは不向きだと卑屈に開き直った結果、今のあの態度に至る。

彼が自分には人の感情というものが分かっていない、と思うようになった原因は大きく二つ。一つ目は無表情である為、周りからお前は無感情なのか、と問われることが度々あったこと。二つ目は、自らが本で散々読んできた「感情」という知識と、自分の心の動きが一致しているように感じなかったことだ。本の中の感情はあくまでフィクションなのだから、一致しないのは当然である。

彼はとにかく生身の人間には滅法弱い。人間関係を築くことをひたすら怠ってきたので会話どころか人との接し方も怪しい。彼の超然とした態度は文庫本あってこそのものである。

ただ、ああ見えて彼なりに先輩には気を許している。どこか文語的で小説の登場人物めいた彼女の物言いに馴染んだものを感じているのだろう。彼からするとそれはかなり接しやすいようだ。また恋愛感情を察するには至らない(至れない)ものの、ちょっとやそっとの失言程度では彼女に嫌われることはないということも何となく感じ取っており、安心して関わっていられるようだ。

あの部室において、先輩はああ在ろうとあの態度をある程度演じているのに対し、後輩のそれは限りなく彼の素に近い。

一見先輩よりも暗いように見える彼だが、彼はとにかく人との関わりを避けてきたので他人に対する失望のようなものはあまりなく、あくまで厭世観が自己完結している。そういう意味では先輩より余程明るく、健全である。純粋とも言える。ただし他人ときちんと関わりを持った時、どう転ぶかは正直未知数である。

先輩同様他人に頼るということが出来ないが、こちらは純粋にその方法を知らないだけである。

感情を自覚出来ていないので、心が動くと自分が自分で分からなくなる(自分の心の動きを気味悪く感じる)為、変化を極端に嫌う。感情を知りたいという意欲がないわけではないが、少なからず諦めがある。他人にも興味がないわけではないが、基本的に他人の心中など想像出来ないから、と自ら知ろうとする努力はしない。但し数少ない例外はいる。その一人が先輩である。

実は感受性は相当豊か。若干度が過ぎる程だ。だからこそ実際の感情と彼の知っている感情の名前とが結びつかない。

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