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「カズレーザーと学ぶ新知識」で取り上げられていた最先端医療

この1月10日のテレビ番組「カズレーザーと学ぶ新知識」で、大阪大学大学院の日比野先生が「エクソソーム」と「MSC療法」について紹介していました。
 
さすが先生、幅広く最近の再生医療動向をわかりやすく語っていたので、素晴らしいと思って観ていました。ただエクソソームは決して新しいものではなく、30年前に発見され、研究が進んできたものです。なかでも東京医科大学の落谷教授がエクソソームの権威として有名です。

エクソソームのように、まだあまり知られていない言葉がインパクトと共に視聴者の関心を集めるのであのような番組構成になったのでしょう。
内容はこんな流れでした。

  1. まずエクソソームの役割とその能力、そして自分の幹細胞を取り出して培養して体に戻す、いわゆる再移植を行う。そうするとエクソソームが伝達物質として再生を始める

  2. 自分から幹細胞を取り出さなくても他人のものであればもっとお安くできる、それがMSC療法。余談ですが、他人の細胞を移植しても拒絶反応が起こらないのは、MSCには免疫細胞が認識する特徴(マーカー)を持っていないから

  3. 誰の幹細胞でも良いという訳ではなく、歳と共にその力は衰えるので若い幹細胞の方がベター

  4. 臍帯(胎盤や臍の緒)には素晴らしい幹細胞があり、なかでも一番子ども側に近い、ウォートンジェリーと呼ばれる部位の幹細胞が生み出すエクソソームの量は圧倒的に多い。

  5. こんな病気や怪我なども治せると脊椎損傷やアルツハイマーが具体例とともに紹介されていました。

エクソソームについて

さてここからです。

エクソソームは私たちの血液や尿、唾液、精液、そして母乳にも含まれます。産まれ来る赤ちゃんに初乳を与えるとは外界での免疫を支えるものです。最近の身近な例、コロナのRNAワクチンもその研究成果の一つです。エクソソームの中にはRNAが搭載されているからです。

また、老化との関わりでは老化すると細胞から分泌されるエクソソームの性質や分泌量も変化します。歳をとって発症しやすくなるがんやアルツハイマー型認知症などでもエクソソームの関与が示唆されるなど、老化疾患の隠れた主役ではないかという可能性が見えてきました。

老化細胞は老化細胞独自のmiRNAを含んだエクソソームを分泌することも先生は触れておられました。これは成長因子を含むサイトカイン類でも同様です。若い細胞であってほしいですよね😓
 
私たちが「再生因子」と名付けたひとの「不死化乳歯歯髄幹細胞培養上清」には少なくとも100種類のエクソソームがどれくらいの量まで含まれているかも明かにしています。このデータは他では見たことがありませんし、多くの医師たちからも「さまざまな販売メーカーに聞いても答えられない」と聞きます。
 
それは仕方ないことでしょう。成分を検出するためには最新式とも言える抗体アレイを使わないと特定できないからです。それには一回、数百万円もかかります。さらに成分が常に同じでなければ検査しても意味をなさないからです。ですので答えらないのは当然です。
 
この再生因子に含まれるエクソソームの恩恵を受けるには再生因子の投与(=MSC療法=細胞フリー療法)で可能です。これまで同じように脊椎損傷や糖尿病患者、アルツハイマー認知症、そして私自身の脳出血で死んでしまった脳細胞にも使っており、その効果を示してきました。
 
一方、エクソソームは伝達物質ですが、伝達だけでは修復はできません。損傷部位は体を修復するためにSOSを発信します。エクソソームがSOSに気づくことで損傷部位に行き、周りの細胞を活性化させます。さらに、幹細胞が活性化し集まって来ることで、修復したい細胞に変化しながら、そして成長因子などのタンパク質群を生み出し、共同作業で修復を行うのです。
 
成長因子はすでに結構知られているので目新しさは少ないからでしょう、番組では引用されていませんでしたが、MSC療法では「成長因子とエクソソームが一体となって再生を行う」ことであると理解してほしいと思います。
 
最近、「エクソソーム治療」と目新しさでもてはやされているようですが、エクソソームだけで再生治療とは言えないのです。さらにエクソソームだけを分離することは今の技術ではできないと聞きますので、語弊があると言えるのではないでしょうか。

臍帯幹細胞の不死化に取り組む

臍帯は赤ちゃんが生まれる過程で備わるものですから、若さという点では一番でしょう。若さで言えば乳歯も負けてはいません。幹細胞の数も成長のスピードも乳歯が生え変わる頃の子供の成長には目を見張ります。負けず劣らず成長を支える幹細胞とその発する成分が再生因子です。これからいずれ生理などが始まりホルモンも変化し、大人へと生殖機能が発達し始めるのもこの頃からです。
 
実は私たちも臍帯幹細胞の能力を具体的に数値化できていません。
臍帯ドナーを探しており、不死化をする準備を進めています。幹細胞も命があり、体外で強制的に培養(=増殖)させると数週間で老化し、やがて死に絶えます。一人から得られる細胞量は限りがありますから、抽出できる培養上清の量も限られるわけです。この壁を打ち破るのが不死化細胞の特許技術なのです。

以前の投稿です、ご参考

不死化とは活性度の高い選ばれた幹細胞をiPS細胞と類似の方法で文字通り「ずっと生き続ける細胞」を生む技術です。誰にでも手の届く価格で使ってもらえるようにするには品質(含まれる成分の種類と量)が明らかで、常に同じである均質性がどうしても必要でした。
 
特に医薬品を目指している私たちがどうしても成功させなければならなかった大量生産(=培養)を可能にする技術です。これに成功したのは「乳歯歯髄幹細胞」だけでした、今から10年前のことです。大人の歯髄でも、脂肪幹細胞でも不死化には耐えませんでした。若さによる幹細胞の生命力の違いを見せつけた例と言えます。
 
そうすると臍帯の中でも仮にウォートンジェリーの幹細胞を不死化もできれば、番組で先生が語っていたように脂肪幹細胞の何百倍、何千倍のエクソソームや成長因子が得られる日が来るかもしれません。

それぞれの幹細胞の素晴らしいチカラを見定める研究

共に研究に取り組んでくださる大学教授たちは同じ仲間の間葉系幹細胞でも今ある歯髄だけではなく、脂肪、臍帯、歯髄、骨髄でも成長因子やエクソソームの違いを見出し、どんな疾患により高い効果性が発揮できるか検証したいとおっしゃっています。これをライブラリーと呼びますが、この研究も再生医療をより役立つものに進化させていくことでしょう。より多くの人々やお困りの患者さんに役立てる、楽しみですね。

面白い内容の番組でしたので、お時間があればこちらからご覧ください。TVerことはよく知りませんが、期限がありそうなのでお早めの方がいいかもしれませんね。



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