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人工物とオキアミの話

本日のBGM The Crystals - Parade Of The Wooden Soldiers


イギリスの科学雑誌ネイチャーにおいて、2020年でついに人工物の総重量が生物量を上回ったみたい、ってことが発表されたそうで、

人工物ってのはスマートフォンとか机とか物置小屋とか京都タワーとか東名高速とかそういったもので、生物量はまあ生き物の体重をみんな足したやつ、オキアミからジャイアントセコイアまで、動物、海洋生物、植物などの全ての生き物の質量を足したものです。

ちなみにオキアミは1匹1〜2グラムくらいしかないんですけど、ナンキョクオキアミ1種の総重量は 海洋哺乳類を除いて、そのほか全ての海洋生物(魚とか貝とかエビとか)の総重量を上回っているほどで、地球でもっとも繁栄している種の一つです。シロナガスクジラがあのボデーを維持できるのも大量にいるオキアミのおかげなんですね。

それで そのオキアミは特殊な消化器官を持っていて、植物プランクトンを直接食べるんですけど、植物プランクトンが 光合成で二酸化炭素から作った炭素を糞に包んで深海へ落とすので、実は自然界の炭素量にめちゃくちゃ影響を与えていたりして、大変に重要な生き物なんですけど まあそれは置いといて、

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なんでも試算したところによると道路やらビルやらが年々作られまくっているため現在の人工物の総重量は1.1兆トンくらいで、一方で生物量は森林伐採とかで年々減ってるから1兆トンくらいなのだそうです。

1兆トンとかって もう全然ピンとこない数字ですけども、20世紀初頭では生物量に対する人工物の総量が3%くらいだったらしいので、この100年で急激に伸びたっちゅうことですな。


まあしかし人工物とはいっても、焼き物を作ってて思うのは、我々は何かを生み出しているんじゃなくて、元々あったものを作り替えているだけで、例えるならレゴブロックを組み直しているような感じでして、

人工物を重量で考えた場合 そのほとんどがコンクリートとかが占めていて、それってざっくり言うと掘った石を地面に並べてるみたいなもんで、量は確かにすごいけど、それよりもっと自然にダメージを与える軽い人工物はいくらもありますし、

でも一方で 質量という観点から見れば 地球の生物量に限りがあるってことも感じられるわけで、人間は既にあるものを組み替えることしかできないとしたら、自然は大切にしたいですよね。

しかし陶芸という性格上、あんまり自然には優しくないわけでね、あふふ、まあそういったような割り切れない事情がどこにもあって、それぞれの事情たちがもつれあうことによって理想的な状況というのはなかなか実現しないってことで、もつれあった状態がどこかでパンクするのか、それともどこか落ち着くべきところに落ち着くのか、そういったことが自然ということの本質ではないかと思いました。要するに自然というのは結果論ということですね。だなんて傍観主義者っぽくてちょっとつまんないわ。あふふ。



高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目

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