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真壁と鵜瀞 ~Hotel Ushiyama サイゴンの夜~

140文字では足りない。

ということで、Hotel Ushiyama~サイゴンの夜~の登場人物の二人の男、鵜瀞と真壁についてをダラダラ書いていく。
独り言みたいなものなので、これは読まなくていいやつです。


まずは鵜瀞から。「うのとろ」…読めん。
検索して調べると長野県軽井沢、神奈川、東京のごく一部少数居るらしい名字で、戦国時代?山形だかに地名があるらしい。そんな珍しい名字をサイゴンの夜に出しますか岸田先生。


  それはさておき。鵜瀞がどんなだったかというと、デカイ、だらしない、なんかキタナイオッサンである。
頭は悪くないが知能指数は平均より少し良いくらい。真壁の下について無理難題ふっかけられては苦労してきたっぽい。シャツ破れてるし、髪はボサボサ。酒に酔うとそこいらで大の字に寝てしまう。


対する真壁はきちんとした身なりで、発言から察するに頭良さそう。頭でっかちなとこはかなりありそう。
人狼ゲームでたまに見かける、初手の読み違いでミスリード筆頭になってバッドエンドで生き残るタイプ。
読みが当たればスゴイんだろうけど、どうやら今回は外してしまい、商売に20万の損失を出したらしいのでえらいこっちゃ。それで首を切られてまた別の都市に流れて行こうとしている。

この二人を高村賢さんと小西優司さんが演じてらっしゃるのだが、まあ二人とも見事に上手くて。好き!が久しぶりに決壊したのでこうして書いている次第。

 
大体において私は「ダメな男」が好きである。
ダメな男には色気がある。その色気が好きなんだろうと思う。二人ともなんとも言えず目を引く。全く別のタイプであるのに男としては二人ともダメで、そうであるが故にモテるだろう男たちである。

鵜瀞は真壁の下でありとあらゆる事をやってきたらしい。人足を集めたり、物を集めたり、金の工面などの裏側なりもやってきたのだろう。おそらく真壁が仕事で損失を出すまではお互いに不満はあれども背中を預ける戦友のようにタッグを組んでいたのではないかと想像した。それも鵜瀞の方からの感情の方が大きかっただろう。オタクの言うところのクソデカ感情って奴です。美味しい。

仕事で躓くまではおそらく鵜瀞は自信ありげに堂々とふるまっていたのだろう。それが見る影もなく不貞腐れているのを見るのは何故か妙にそそられるものがある。粗野な振舞いをしながらも、やすさんを口説く時の男前なことったら腹立たしい。甘えさせて肩を貸してあげてる間の甘い表情もカッコいいったらない。まったくもって腹立たしい。好き。真壁に殴りかかろうとして止められるところも、手負いの獣のようで痛々しくもその様子から目が離せず。彼が一年後にどうなっているのか、気になってしまうのは私だけかもしれない。真壁が去った後で彼がどのような未来を選択するのだろう。現地のやさしい女性と幸せになってほしい、と願ってしまいます。


真壁は良い家柄で良い教育を受け、かといって周囲に望まれる道から外れたくて役人になったりする事を避けて海外で山師のような商売人をしていると想像した。胡散臭くて信用するには危なそうな男ではある。しかし妙に面倒見はよくて見所のある女おさとを教育してみたりするのは好きらしい。
賢いおさとさんは賢くないふりをして、それでいながら真壁の未来の行動を完全に予測しきっている。出方によっては結婚も出来そう。でもそれをしたら不幸になる。今の奥さんは海外の人だけど、同じ日本人だからこそもっと手酷く捨てられる。それくらいなら日本に、不幸になりそうでも飲んだくれの父のいる郷里に帰る。ムッシュウがやめろと言っても、残れと言っても、絶対聞かない。
今、さよならするのがきっと一番いいはず。絶対。

そうやってきっぱり拒絶されて初めて真壁はおさとさんに未練を感じる。更に惚れてしまったとも言える。これで思わせ振りに駆け引きされたりしたら冷めていただろう。素直に好きだとも言えないし、なびく女には興味はないくせに、手の中から逃げられそうになれば追いたくなる。学も金も能力もある、自分で恋をしていると気づいていないクズ男ほど色っぽいものはない。

三谷夫人もおさとさんと同じ鋭さで真壁の本質を見抜く。自分に甘くて女を大切にしない男への怒りを視線に感じた。真壁もその圧を感じている。

「貴方はわたくし共に奥様のあとを頼んで救ったような心持ちになりたいだけなんですわ。自分自身であの方を救おうとはなさらない。妻にして一生守ると誓う誠実さも力もない、臆病な卑怯ものです」

無言のまま夫人はこの言葉を飲み込んだ。
でも無言の全身からこの言葉を発するかのように真っ直ぐに真壁を見ていた。
「女は怖い」というけれど、情の深さでも裏切りをゆるさないところでもない。まるごと全部理解して受け止めているくせに、本当は言葉にする事があるくせに無言のままで男を見ている。
だから、男は女を怖いと思うのだろう。


短い髪ですっきりと立つおさとさんの姿はとても綺麗だった。やすさんにせよ、自分の場所でしなやかに生きていくだろう。
でも鵜瀞と真壁はもしかしたらどこかで殺されたり野垂れ死にするのかもしれない。堕ちる直前の色気、みたいなもの。
失意の底で女と別れる一時の、迷いに迷った男二人が最高でした。ああ、美味しかった。

また、別の舞台で小西さんと高村さんの別の役の素敵な人にお会いできますように。

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