③種苗法改正のはなし        (食べもの通信・本誌記者 佐々木悦子)さんの記事より抜粋

種の品種登録には費用もてまもかかり、農家の申請は困難なため、仮に大企業から訴えられると 、農家は圧倒的に不利です。そこで山田正彦・元農林水産大臣は各地でのジーンバンク設立と、その活動の支援を提案しています。

ジーンバンクとは急速に失われている植物などの遺伝子(ジーン)の形態的特徴などを調査し長期保存する、いわば遺伝子の銀行です。

山田さんは「ジーンバンクで特性データを作っておけば、企業に訴えられてもデータを示して『こちらが先だ』と証明できる」と言います。

日本では1988年に広島県でジーンバンクを設立しました。背景には50年代以降、種子のF1(雑種一代)化が進んだことで、在来種や農家の自家採取技術が失われることへの危機感がありました。

県は県内に現存する作物の種を発掘調査し、冷凍保存するとともにそれぞれの特性をデータ管理して、種子を農家に無償で貸し出しています。

栃木県ではNPO法人民間稲作研究所がシード(種)バンクを設立して、有機の種子を提供する事業を開始。一般の参加を募っています。

山田さんは自治体が持つ優良な種は農家が自家増殖できるとする条例や、農業競争力強化支援法により都道府県が所有する優良な育種知見(知的財産)を民間に提供する場合、議会承認が必要とする条例を、各自治体で独自に作ることも呼びかけています。
「種子法廃止後の2年間で、18の自治体が種子条例をつくり、7自治体が作ることを表明しています。皆さんが働きかけて各自治体が本気で取り組めば、できます」。

国会でも新たな動きが生まれています。野党議員でつくる「食の安全・安心を創る議員連盟」は5月20日、種苗法改正案に対する声明文を発表。その一週間前には、川田龍平参議院議員と食問題で活動する印鑰智哉さんがインターネットを使った記者会見を開きを「在来種保全活用法案(仮称)」の作成・成立をめざす考えを表明しました。

法案は在来種のデータ化や、保全に自治体が責任を持ち、農家の生産活動を保証する内容が検討されます。

川田議員は立法への意気込みを次のように語ります。

「全国にあるすばらしい在来種は国の財産であり、みんなの財産です。農家の意見をしっかり取り入れ、政党の枠を超えて賛同を働きかけたい」

私たちの食卓に直結するタネ問題。地域の育種・育苗農家や種苗会社を守ることは必要ですが、画一的に農家のタネ取りや株分けを禁止する「改正」案は、問題が多すぎます。

検察庁法「改正」案の先送りでも示されたように、国民の声で政治は動かせます。「国のありかたは国民が決める」。

この民主主義の原点に立脚し、「食料と農業を守れ」の声を大きくしたいと思います。


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