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【第1回高専人会交流会】記念式典レポート

誤解されがちな「高専卒」。可能性を秘めた卒業生らが、初の“同窓会”を結成!一匹狼のネットワークが、日本の経済成長のエンジンに。

「自分、高専卒なんです」と聞いて、あなたはどんなイメージをもちますか?

「工業系の専門学校?」「20歳で就職した人?」もしそんなイメージをもったとしたら、それは大きな“誤解”です。

高専が誕生したのは今から約60年前。当時は、東京五輪へ向け日本が急激な経済成長を遂げていた時代。“技術者”を増やしたいとの思いから1962年、全国12箇所で開校した高専は「深い専門知識と、実践的なスキルを身につける」という理念を掲げました。普通科の高等学校や4年制大学とも異なる、5年間で「知識と技術」を身につける新たな学び舎として誕生したのが高専だったのです。

以来、高専卒業生は日本の産業を支えるハイテク産業などに多くの優秀な人材を輩出し、日本の経済成長を支えてきました。戦後、日本が復興を果たし、世界的な地位を確立することができた背景には、この高専の存在が欠かせなかったと言えます。

そんな“高専”の創設60周年の節目である昨年に発足した同窓会組織『高専人会』。その設立を記念した式典が10月1日東京六本木の泉ガーデンギャラリーで開かれ、現役高専生や卒業生、高専職員など約500人が参加しました。

会場の受付ブース
高専人会記念式典開会前の様子

「一匹狼の僕たちに横のつながりを」

式典は、会の発起人の一人であるさくらインターネット代表取締役・田中邦裕氏(舞鶴高専)の挨拶で開幕しました。
田中氏は「中学を卒業する段階で“高専”という進路を選択する人は珍しく、それゆえに“変わり者”と評されることもある」と高専卒ならではの思いを吐露。「一匹狼になりがちだが、だからこそ横のつながりを作ってチームで物事を解決できれば」と設立への思いを語りました。

さくらインターネット 代表取締役・田中邦裕氏(舞鶴高専)

その後、国立高等専門学校機構の谷口功理事長や、文部科学大臣政務官の山田太郎氏など、来賓の皆様にご祝辞を頂戴しました。

国立高等専門学校機構理事長・谷口功氏
文部科学政務官・山田太郎氏
一般社団法人全国高等専門学校連合会 会長・鶴見智氏
全国高専連合会同窓会 事務局長・朝永憲法氏(佐世保高専)
東京工業高等専門学校 校長・谷合俊一氏
参議院議員・梶原大介氏(高知高専)

最後に高専人会代表理事である渋谷修太(長岡高専)が高専人会設立の主旨や理事メンバーを紹介し「卒業生同士の交流を深め現役生への支援を活発に行うことで、高専の価値をもっと高めていきたい。将来『“高専人会”という組織があるから、高専に入学しました』と言ってくれる人が現れるようになってほしい」などと会の今後の抱負を語りました。

高専人会代表理事・渋谷修太(長岡高専)
渋谷代表理事による理事メンバーの紹介
ご来賓の皆様
ご来賓の皆様の集合写真

■高専人会設立記念式典 登壇者
開会挨拶:田中邦裕氏(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)
主賓挨拶:谷口功氏(独立行政法人国立高等専門学校機構 理事長)
来賓祝辞:山田太郎氏(参議院議員 文部科学大臣政務官)
     梶原大介氏(参議院議員)
     鶴見智氏(一般社団法人全国高等専門学校連合会 会長)
     朝永憲法氏(全国高専連合会同窓会 事務局長)
     谷合俊一氏(東京工業高等専門学校 校長)

在学中に起業した高専生が自社をPR

会場には現役高専生による「企業紹介ブース」も開設。全国の高専から計8企業が出店し、卒業生や関係者らに自社のアピールを行いました。いずれも現役高専生が在学中に起業したもの。OJTが行えないような人手不足の職場でも使える『かけるとマニュアルが投影されるメガネ』や、下水再生水を肥料として用い化学肥料を使わずに育てた『お米』など創業分野は多岐にわたります。

事業を自らPRする現役高専生

会場では学生たちの説明に真剣に耳を傾ける先輩OB・OGの姿や、他校の取り組みに「素晴らしい取り組みですね」などと声をかける学生の姿が見られました。

企業も「高専卒は非常に優秀」と評価

さらに『アルプス技研』、『セブン銀行』、『さくらインターネット』など計6社が「スポンサー企業」としてブース出店。参加した学生らが、担当者に業務内容を問うなどしていました。

株式会社アルプス技研のブース
株式会社セブン銀行のブースと代表取締役社長・松橋正明氏(釧路高専)
田中邦裕氏(舞鶴高専)が代表を務めるさくらインターネット株式会社のプレゼンテーション

出展した企業の担当者は「高専の卒業生は専門性が高く、すぐに現場の仕事内容を理解できる」などと高専OB・OGの優秀さを高く評価し、「交流会の場で自社の取り組みを知ってもらい、優秀な高専生に就職先の一つとして興味を持ってもらえたら」と話していました。

高専人会内の小規模組織も誕生

高専人会は全国の高専を繋ぐだけではありません。「高専関係者が3人以上」集うことを条件に、高専人会公認の小規模組織を立ち上げることも可能。この日も集まった参加者らが互いに声をかけるなどして26組のグループを立ち上げ、なかには高専OGや現役の女性高専生の集いである「女子部高専人会」も誕生しました。

女子部高専人会のメンバー

この度の高専人会交流会で総合司会を務めた豊田麻衣さんも、富山高専出身の高専人です。

フリーアナウンサー・豊田麻衣氏(富山高専)

全国にいる“約50万人の先輩”

式典後半では「高専同窓会の未来」をテーマにパネルディスカッションが行われました。
日頃から同窓会の活性化に寄与されているヒューマンネットワーク高専顧問の島田一雄氏(航空高専)や、上海など海外駐在の高専OB・OGをまとめる入江英也氏(熊本高専)ら6人が登壇。ファシリテーターは渋谷代表理事が務めました。

パネルディスカッション

「高専卒はなぜか同じ匂いを感じる」「高専卒は勉強好きが多い」などと時に笑いを交えながら、高専OB・OGの結束を強める必要性を訴えました。

新設した『神山まるごと高専』について語る校長の大蔵峰樹氏(福井高専)

ディスカッションには、今年新設されたばかりで“卒業生のいない”『神山まるごと高専』校長の大蔵峰樹氏(福井高専)も登壇。高専人会代表理事の渋谷氏から「まだ卒業生がいないが、同窓会についてどう考えるか」と問われた大蔵氏が「神山まるごと高専の在校生には、全国の高専でこれまでに卒業した約50万人が先輩だと伝えています」と答えると、会場は「そうだ」と大いに沸きました。

樽前会関東支部 顧問/株式会社アクセスネット 代表取締役社長・高石和生氏(苫小牧高専)
NTT月曜会 参与・阿部智之氏(大分高専)
中国高専校友会/タイ高専校友会 発起人・入江英也氏(熊本高専)
ヒューマンネットワーク高専 顧問/一般財団法人高専人会 顧問・島田一雄氏(航空高専)
一般財団法人高専人会 理事/株式会社FUMIKODA 代表取締役・幸田フミ(神戸高専)
パネルディスカッション 登壇者集合写真

■パネルディスカッション登壇者
高石和生氏(樽前会関東支部 顧問/株式会社アクセスネット 代表取締役社長)
阿部智之氏(NTT月曜会 参与)
大蔵峰樹氏(神山まるごと高専 学校長)
入江英也氏(中国高専校友会/タイ高専校友会 発起人)
島田一雄氏(ヒューマンネットワーク高専 顧問/一般財団法人高専人会 顧問)
幸田フミ(一般財団法人高専人会 理事/株式会社FUMIKODA 代表取締役)
渋谷修太(一般財団法人高専人会 代表理事/フラー株式会社 代表取締役会長)

国内最大規模の同窓会組織、いよいよ船出

『高専』は中学卒業後に進学し、5年間の教育を通じて大学と同程度の専門的な知識と技術を習得できる日本独自の教育システム。毎年全国で約1万人が卒業するとされ、これまでに50万人あまりが巣立っています。高専人会はこの約50万人を束ねる同窓会組織を目指しており、実現すれば日本最大規模の同窓会組織となります。

日本のみならず海外でも活躍している高専卒業生。近年はモンゴルやタイ、ベトナムでも『高専』の教育システムが導入されるなど、その専門性と能力は世界から高く評価されています。
高専人会では、現役生への支援や卒業生の交流を通してイノベーションを生み出し、高専の価値をより高めるため活動していきます。

閉会前に撮影した集合写真

 


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