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微笑みの海岸

幾千幾万にも積み重なった貝殻は粉々になり
やがて白い砂へとかわる

干潮の海岸では風が穏やかに吹き
沖合ではボードが白波を巻きあげ駆けぬけてゆく

親子連れのわらべが貝殻を踏み鳴らし
何かないかと
興味津々に辺りを見ている

私はただ堤防に腰かけ
対岸の島原を仰ぎみていた

いかに長い歳月をこえ
この海も山もうまれたのか?

大地が産声をあげたその日も
日は変わりなく星の道行を照らしていたのだろうか?

浜辺では思案げに砂へふれる母の手を
わらべがじっと見つめる

その姿に自らの像を重ね
帰路へと歩を進めるわたしの耳に
パッヘルベルのカノンが優しく留まる

いっときの間だがそれは
天使の微笑みのような慈しみを
有明の海へ投げかけていた