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リアルタイムなエッセイVol.25「くすりゆび」

 昨日は2年目の女の子に顕微赤外の使い方を教えてた。説明の中で「この指で押さえて、、、あれ、この指なんて名前だっけ?」「くすりゆびですよ」女の子はすぐに答えた。そっか、くすりゆびか。ふだんあまり口にしない言葉が、なんか新鮮だった。ひとさしゆび、はよく使うからなんとなく覚えているけど、単独で意識していない、くすりゆび、は忘れていた。なんでくすりゆび、っていうのかな。調べればわかるのだろうけど、ボクはあえてそのままにしておいた。無粋な解説よりもこの新鮮さを大切にしたかった。そういえば、結婚指輪も左手の薬指っていうしなぁ。ボクは結婚しているけど半年くらいで指輪を外した。仕事の上で傷つきやすいし、ちょっと邪魔だったし、指輪に特別な意味は感じなかった。それからずっとそのままだ。指輪もそうだけど、案外ボクはくすりゆび、を軽くみてるな、そう思った。

因果はめぐる。

夜、つめを切っているときに、右手薬指のつめが変なふうに割れてしまい、面倒だから指で引っ張って割れかけたつめを取ろうとした。つめはうまくとれずに、よくあることだけど周囲の皮膚も一緒に傷つけてしまった。これが痛い。絆創膏をしたけど触ると本当に痛い。

まるで、昼間くすりゆびを軽くみてしまった報いを受けたかのようだ。

結局、そんなふうに世界は回ってるのかもしれない。

ボクは痛むくすりゆびによって、くすりゆびをしばらくは意識しなければならいようだ。しばらくはこの報いを受け入れよう。

ごめんよ、くすりゆび

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